直近の数四半期とは違い、アナリストは明らかに企業の信⽤格付けに注⽬しており、その維持が重要となっていることは間違いありません。
今四半期は、バランスシートの強固さに⾃信があるかについて単⼑直⼊な質問も複数挙がっています。具体的には現在のギアリング⽐率(⾃⼰資本に対する有利⼦負債の割合)と、設備投資や配当に回すために借り⼊れを増やすつもりがあるかどうかが問われました。直近の数四半期とは違い、アナリストは明らかに企業の信⽤格付けに注⽬しており、その維持が重要となっていることは間違いありません。
構造的損害と長期戦略の評価
事業運営に関して最も多かった質問は、営業⾃粛要請に基づく⾃粛や⾃主的な営業⾃粛に関する内容と、⾃粛により資産に構造的損害が発⽣し、価格回復後に危機前の⽣産⽔準に戻す場合に⽀障が⽣じるかどうかです。また、どのように減産予測を導き出したのか、⽣産調整を⾏う資産をどうやって選別したのかという点にも関⼼が寄せられました。
ほかにも、上流での設備投資削減が2020年以降の⽣産能⼒にどう影響するか、ポートフォリオのどの部分が影響を受けると予想されるかという⽅⾯にもアナリストの⽬が向けられました。現状を詳細に把握すべく、主要な資本投資計画の進捗に関する具体的な質問が⾏われ、設備投資の削減によって増産スケジュールに影響が出ることはないかについても問われました。
戦略⾯では、今回の危機が企業の⻑期戦略や競合他社との位置関係に与える影響に注⽬が集まり、企業が⻑期的なポートフォリオをどのように展開しようとしているのか、それによって⽯油とガスの⽐率がどう変わるのかについて企業は問われています。
低炭素社会を⾒据え、アナリストの関⼼は、エネルギー転換を⽬指す動きに関する企業の⽴ち位置や原油価格の下落や価格ボラティリティの急上昇を受け、エネルギー転換の取り組みを加速させる計画があるかどうかに向けられました。特に注⽬されたのは、化⽯燃料への投資と再⽣可能エネルギーへの投資におけるリスク・リターンプロファイルの変化と、この2つの事業の資本配分計画をどのように変更するかです。
またアナリストの間では、2020年第2四半期は第1四半期からさらに業績が悪化するとの⾒⽅が強まっています。アジアでの需要回復の⾜取りを踏まえた第2四半期の業績について企業の⾒解を求める質問が⽬⽴ちまし た。そこには第2四半期の決算が受ける段階的な影響と収益に影響を及ぼす可能性のある⼤きな要因に関して企業の考えを知りたいというアナリストの思惑があります。原油価格回復の時期を巡るアナリストの⾒⽅が懐疑的であったことは明らかです。
今後の展望
需要の回復と在庫の減少がどの程度の早さでもたらされるかについてはさまざまな憶測が⾶び交っており、投資家の間では緊張状態が続くでしょう。減産によって在庫状況についての懸念は弱まってきたように⾒受けられます。今後は経済再開のスピードと、経済に対する信頼感や投資意欲が⻑期的ダメージをどの程度受けているかがますます注⽬を集めていくでしょう。業界の統合は避けられず、その規模やどの企業が経営統合を実⾏するのがベストなのか、市場の判断が下されようとしています。
サマリー
2020年第1四半期決算説明会では、⽯油・ガス業界で減産が続く中、需要の回復にどの程度時間がかかるのか、経済に対する信頼感が⻑期的ダメージをどの程度受けているのかに焦点が移っていく⾒通しであることが明らかになっています。