新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが社会の弱点を突き、世界的な景気後退を招いたことで、各国では国内総⽣産(GDP)、所得⽔準や雇⽤⽔準が急激に落ち込みました。各国政府は国⺠を守り、経済的混乱を抑えるため懸命に取り組み、⽀援策や経済対策を相次いで打ち出しています。
パンデミックにより世界的な混乱が⽣じたにもかかわらず、クリーンエネルギーへの移行が完全に中断することはありませんでした。EYがアジアの8カ国・地域(インドネシア、⽇本、マレーシア、フィリピン、韓国、台湾、タイ、ベトナム)を対象に⾏ったクリーンエネルギープロジェクトに関する調査によると、プロジェクト案件は800件にも上り、投資価値も3,160億⽶ドルを超えています。
特にマレーシアやミャンマーなどの諸国は、このさなかにありながら⼊札により太陽光発電デベロッパーから⼤型案件を受注しました。アジアでの他の取り組みとしては、新型コロナウイルス感染症に関連する⽀援策の多くをクリーンエネルギーへの移行に充当している国もあります。マレーシアは29億⽶ドルをエネルギーの効率化に充て、韓国は650億⽶ドル規模のグリーンニューディール政策に着⼿しました。
その他のアジア諸国・地域では、サステナビリティ⽬標をそれぞれ発表しています。2020年第4四半期には、中国本⼟が2060年までに⼆酸化炭素の排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)にするという⽬標を発表しました。その後、⽇本と韓国も2050年までにネットゼロの実現を⽬指す意向を明らかにしています。
コロナ禍で大打撃を受けた⺠間セクターは多く、企業は資本の回復と事業活動の活性化に取り組んでいるところです。こうした状況の中、グリーンへの移行に対して投資を継続する意欲が企業にあるのか、すぐに投じることができる資⾦は⼗分にあるのかといった疑問が当然湧いてきます。
今回のEYの調査からは、クリーンエネルギーへの移行が企業にとっては相変わらず魅⼒的な取り組みであることが分かりました。また、⺠間セクターが多額の資⾦をすぐに投じることができることも確認されています。この調査の対象となった多くの国・地域では、現在多数のプロジェクトが開発段階にあることから、そうしたプロジェクトがすべて実施された場合、各当局は既存のクリーンエネルギー⽬標を上回ることができると⾒込まれています。
持続可能な方法で経済を回復させるまたとないチャンス
欧州気候基金(ECF)の委託を受けて実施した今回の調査の結果から、アジアの8カ国・地域では再生可能エネルギー、エネルギー効率、電気自動車、送配電の各セクターの「すぐに着手できる」プロジェクトは800件以上あり、投資価値は合計で3,160億米ドルを超えることが分かりました。一部デベロッパーがプロジェクトに関する情報を公表していない可能性もあり、これは全体のごく一部にすぎないと思われます。