5 分 2021年10月8日
How COVID-19 can be the impetus for growth in renewable energy

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、再生可能エネルギーを拡大させるには

執筆者 Gilles Pascual

EY Asean Power & Utilities Leader

Knowledge of electricity value chain across investment, financing and strategy. Plays tennis and runs triathlons.

EY Japanの窓口

EY Japan 電力・ユーティリティセクターリーダー 兼 SDGsカーボンニュートラル支援オフィスリーダー EY新日本有限責任監査法人 パートナー

フライフィッシングとボディビルディングに魅せられ、フライタイイング と栄養摂取とトレーニングに励む。

5 分 2021年10月8日

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クリーンエネルギーへの移行は相変わらず魅⼒的です。⺠間セクターと政府が連携して、そのポテンシャルを⽣かし、成功させるにはどうすればよいのでしょうか。

要点
  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界的な混乱をもたらしたにもかかわらず、クリーンエネルギーへの移行が中断することはなかった。
  • 800件を超えるプロジェクト案件は、投資価値が3,160億米ドルに上り、民間セクターによる投資が、クリーンエネルギーへの移行で目標達成以上の成果を上げるチャンスをもたらしている。
  • 各国政府は民間セクターの関心の高まりを最大限に生かし、再生可能エネルギーの導入を加速させなければならない。
Local Perspective IconEY Japanの視点

新型コロナウイルス感染症は⽇本でも猛威を振るいましたが、パンデミック前から続く案件の増加傾向に影響を及ぼすことはないといえるでしょう。⼤⼿通信事業者による再⽣可能エネルギー発電設備への巨額の投資計画の公表が報じられるなど、再⽣可能エネルギーの導⼊拡⼤に代表されるカーボンニュートラルに向けた投資案件に対する関⼼が依然として⾼いためです。

政府が公表した第6次エネルギー基本計画(案)の概要でも、2050年のカーボンニュートラル実現が掲げられ、その中で2030年に向けた政策対応として再生可能エネルギーの主力電源化と最大限の導入を促すとされています。

民間エネルギー部門では、水素やアンモニアの活用といった脱炭素化・低炭素化に向けたさまざまな取り組みが行われており、技術的な課題を乗り越えるための新規投資などが拡大していく流れはわが国でも同様だと考えます。

 

EY Japanの窓口

齋藤 克宏
EY Japan 電力・ユーティリティセクターリーダー 兼 SDGsカーボンニュートラル支援オフィスリーダー EY新日本有限責任監査法人 パートナー

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが社会の弱点を突き、世界的な景気後退を招いたことで、各国では国内総⽣産(GDP)、所得⽔準や雇⽤⽔準が急激に落ち込みました。各国政府は国⺠を守り、経済的混乱を抑えるため懸命に取り組み、⽀援策や経済対策を相次いで打ち出しています。

パンデミックにより世界的な混乱が⽣じたにもかかわらず、クリーンエネルギーへの移行が完全に中断することはありませんでした。EYがアジアの8カ国・地域(インドネシア、⽇本、マレーシア、フィリピン、韓国、台湾、タイ、ベトナム)を対象に⾏ったクリーンエネルギープロジェクトに関する調査によると、プロジェクト案件は800件にも上り、投資価値も3,160億⽶ドルを超えています。

特にマレーシアやミャンマーなどの諸国は、このさなかにありながら⼊札により太陽光発電デベロッパーから⼤型案件を受注しました。アジアでの他の取り組みとしては、新型コロナウイルス感染症に関連する⽀援策の多くをクリーンエネルギーへの移行に充当している国もあります。マレーシアは29億⽶ドルをエネルギーの効率化に充て、韓国は650億⽶ドル規模のグリーンニューディール政策に着⼿しました。

その他のアジア諸国・地域では、サステナビリティ⽬標をそれぞれ発表しています。2020年第4四半期には、中国本⼟が2060年までに⼆酸化炭素の排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)にするという⽬標を発表しました。その後、⽇本と韓国も2050年までにネットゼロの実現を⽬指す意向を明らかにしています。

コロナ禍で大打撃を受けた⺠間セクターは多く、企業は資本の回復と事業活動の活性化に取り組んでいるところです。こうした状況の中、グリーンへの移行に対して投資を継続する意欲が企業にあるのか、すぐに投じることができる資⾦は⼗分にあるのかといった疑問が当然湧いてきます。

今回のEYの調査からは、クリーンエネルギーへの移行が企業にとっては相変わらず魅⼒的な取り組みであることが分かりました。また、⺠間セクターが多額の資⾦をすぐに投じることができることも確認されています。この調査の対象となった多くの国・地域では、現在多数のプロジェクトが開発段階にあることから、そうしたプロジェクトがすべて実施された場合、各当局は既存のクリーンエネルギー⽬標を上回ることができると⾒込まれています。

持続可能な方法で経済を回復させるまたとないチャンス

欧州気候基金(ECF)の委託を受けて実施した今回の調査の結果から、アジアの8カ国・地域では再生可能エネルギー、エネルギー効率、電気自動車、送配電の各セクターの「すぐに着手できる」プロジェクトは800件以上あり、投資価値は合計で3,160億米ドルを超えることが分かりました。一部デベロッパーがプロジェクトに関する情報を公表していない可能性もあり、これは全体のごく一部にすぎないと思われます。

また今回の調査結果により、⺠間セクターがクリーンエネルギー開発とエネルギー管理に強い関⼼を持っていることも裏付けられました。すなわち、アジアでは政府がクリーンエネルギー開発の短期・中期・⻑期的⽬標を設定し直し、この絶好のタイミングを捉えてクリーンエネルギーへの移行を経済回復の中⼼に据えるチャンスであると認識するよい機会なのです。各国は、このような意欲の⾼まりを最⼤限に⽣かすことにより、より野⼼的なグリーン⽬標を視野に⼊れることができるようになります。

クリーンエネルギーへの移行は、責任ある投資やイノベーションの後押しと雇⽤創出への貢献につながり、国・地域の「より良い復興」の⼀助となり得ます。クリーンエネルギーへの移行を⽀えることで、⼆酸化炭素の排出量を削減でき、経済回復と気候レジリエンスという2つの⽬標達成に寄与するでしょう。

⼀⽅、クリーンエネルギー開発を阻む障害もあります。規制の分かりにくさや変更、送配電網の容量不⾜、時間のかかる⼟地取得⼿続きなどの課題はまだ解決されていません。また、どのようなメリットが期待できるかが⼗分に把握されているエネルギー効率化プロジェクトであっても、商業的に採算が取れそうにないケースもあります。

しかし今回のパンデミックにより、政治家にとってはクリーンエネルギーセクターの構造改⾰を⾏うことで、低炭素化の経済・社会的メリットを実現する機会が⽣まれました。具体的な介⼊はその国・地域の実情に合わせたものにする必要がありますが、適切な促進策と規制により、移行を実現させる⼿段としての市場の枠組みを提供することで、再⽣可能エネルギーの迅速な導⼊を阻む障害を取り除くことができます。

採算が取れる魅⼒的な投資機会を⽣み出し、エネルギー効率セクターへの⺠間セクターの参画を促すためには、より包括的な枠組みが必要です。例えば、電気⾃動⾞はまだ採⽤曲線の初期段階にありますが、公共交通機関のeバス化プログラムなど、クイックウィン(初期段階での成功実績)の事例がいくつかあれば、業界を活気づけることができます。

ポストコロナ時代の経済回復には、さまざまなステークホルダーが協調して⾏動することが必要です。公共セクターと⺠間セクターの連携を強めることで、クリーンエネルギープロジェクトがもたらす⼤きな可能性を⽣かし、経済、環境、社会へのより良い成果を促進できるでしょう。今⽇の選択が、その国・地域の未来を形作ることになるのです。

パンデミックは、アジアの各国・地域の政府がクリーンエネルギーへの移行を政策決定の中⼼に据え、経済回復と将来の成⻑を推し進めるまたとない機会を⽣んでいます。
Gilles Pascual
EY Asean Power & Utilities Leader

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サマリー

政府が⺠間セクターと連携してクリーンエネルギーへの移行を実現させる⼤きなチャンスです。しかし、これを確実に成功させるには、障害を取り除く必要があります。

この記事について

執筆者 Gilles Pascual

EY Asean Power & Utilities Leader

Knowledge of electricity value chain across investment, financing and strategy. Plays tennis and runs triathlons.

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