5. デジタルイノベーションと実験を奨励する
民間企業は、成長を追求する中で、組織全体にわたり、デジタルイノベーションと実験の奨励に優先的に取り組んでいます。民間企業には、すでにアントレプレナーシップという特質が備わっていますが、デジタルイノベーションというテーマを追求するには、アジャイルでデータドリブンな、実験に基づいた文化を醸成する必要があります。その中で、実験を分析的アプローチにより実行する従業員を報奨する企業もあります。例えば、米国を拠点とするソフトウェア会社のAdobe社は、「Kickbox」という名称の独特なイノベーションプログラムを立ち上げ、若手社員に型破りな新しいアイデアを提案するよう奨励しました。イノベーションを起こすために資格は不要で、全ての新しいアイデアに対して、プロトタイプ作成用の予算1,000米ドルが事前承認されます。従業員は適切だと考える使途に資金を自由に使うことができ、進捗報告に関して厳格な規則や要件はありません。同社の年間イノベーション予算の一部は、このプログラムに割り当てられています。このプログラムから、同社のCreative Cloud ライブラリの立ち上げ、買収、既存製品の複数の新しいツールと拡張機能の開発などの成果が生まれています。
Humans@center、Technology@speed、Innovation@scale
上記で説明したテクノロジー関連の5つの優先事項全ては、民間企業にとって重要ですが、多大な価値を創造する企業は、これらの優先事項に対し個別にアプローチするのではなく、大局的なテクノロジートランスフォーメーションプログラムの一環として取り組んでいます。
また、優れた企業は、新しいテクノロジーの導入が1回限りのものではないことも理解しています。それには、事業の中心にイノベーションを前に進めるための「筋肉」、つまり主要な動力が必要です。このような企業は、自らが片手間に実験を行っているのではないことを理解しており、事業の再構築にとって有意義なイノベーションに深くコミットしています。その結果、事業全体が速く動き、適応することができます。これらの企業にとってイノベーションは事業運営に不可欠であり、持続的な技術変革の源泉なのです。
人を中心に据え、テクノロジーを迅速に展開し、大規模にイノベーションを実行する民間企業は、テクノロジー・トランスフォーメーション・プログラムを通じて多大な価値を創造することができるでしょう。また、永続的な市場での優位性の保持と、最も困難な局面をも乗り切ることができるデジタル・テクノロジー能力も開発できると思われます。
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サマリー
民間企業として真に持続可能な成長を推進することは、複数の重要領域において努力を必要とする、大規模で複雑な取り組みであり、テクノロジーだけでなく、従業員、事業運営、顧客、財務、トランザクション、アライアンス、リスクにも重点を置くことが必要となります。EYの調査と世界有数の民間企業との協働を通じて、真に持続可能な成長を推進するには、これらの7つの重要なドライバーについて自社の成熟度のバランスを取る必要があることが分かりました。