5 分 2021年9月30日

            夕日を背景にした風力発電機

クリーンエネルギーによるパンデミックからの復興こそグローバルなチャンス

執筆者 Serge Colle

EY Global Power & Utilities Advisory Leader

Global energy advisor. Connecting clients with EY services, assets and experience.

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EY Japan 公共・不動産・ストラテジー・アンド・トランザクションリーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション リード アドバイザリー パートナー

金銭債権、不動産、インフラ資産までカバーするスペシャリスト。WindSステアリング・コミッティ委員でもある。

5 分 2021年9月30日

最近の調査によると、二酸化炭素(CO2)排出量を削減しながら経済回復を後押しできる再生可能エネルギープロジェクトは、世界で1万3,000件もが現時点で着手可能であることが明らかになりました。

要点
  • 現時点ですぐに着手できる再生可能エネルギー関連プロジェクトにより、CO2排出量の削減、雇用の創出、ならびに経済成長が期待できる
  • これらのプロジェクトは投資対象となるもので、投資総額の90%は市場から調達できる
  • 適切な復興支援策が伴えば、雇用と成長を最も必要としている地域がグリーンリカバリーでの勝者になり得る

再生可能エネルギーは、各国政府に経済回復への「後悔なき」道筋を示し、CO2排出量の削減、雇用の創出、ならびに経済成長をもたらします1。さらに、各国が要所要所で適切な手段をとることで、投資総額の90%以上、つまり2兆米ドルの投資を市場から引き出すことができます。

EYのエネルギーチームは、欧州気候基金(ECF)の委託を受けた調査にて、グリーンリカバリープランを展開可能な主要経済47カ国におけるエネルギー・資源の投資案件を分析しました。EY独自の再生可能エネルギー国別魅力指数(RECAI)データベースを含む幅広い情報源を利用し、また、投資家、ディベロッパー、シンクタンク、業界専門家などに広く意見を求めた結果、再生可能エネルギーの4つのサブセクターである洋上風力発電、陸上風力発電、太陽光発電、および水力発電におけるプロジェクトを特定できました。今回の調査では、すぐに着手できるプロジェクト、あるいは近い将来に着手できるプロジェクトに焦点を当てています。

主要経済47カ国の国内総生産(GDP)合計は世界のGDPの約88%を占めますが、これらの国で特定できるプロジェクトの潜在効果をマッピングすることは、直ちに再生可能エネルギーの導入を予測することにはなり得ません。しかし、各国で協調的な行動が速やかにとられた場合に何が達成できるかは見えてきます。国際的な協力と官民の連携によってこそ、世界的なグリーンリカバリーを実現することが可能です。また、先進国ではレガシー産業の影響で経済が落ち込んだ地域を再生すること、ならびに途上国では将来のために必要なインフラとクリーンエネルギーの構築を支援することができます。

グリーンリカバリーが気候変動に与える影響

再生可能エネルギー関連プロジェクトの案件を3年間にわたり展開することによって、世界の再生可能エネルギーの普及率が現在の2倍以上になり、再生可能エネルギー発電容量が1テラワット(TW)確保できることになります。国によっては再生可能エネルギー関連プロジェクトの案件だけで、パリ協定に基づく現行の国別の温暖化ガス排出削減目標(NDC=国が決定する貢献)を十分達成可能です。今回の調査対象である47カ国では、プロジェクトの実施によって、国連気候変動枠組条約(パリ協定)で定められた2030年のCO2排出量削減目標の22%が達成されることになります。

電力の供給を通じ、再生可能エネルギー導入による電力部門の脱炭素化は直接的なCO2排出量削減の範囲を超え、他業界のCO2排出量を削減するための素地となります。着手できるプロジェクトを速やかに展開するならば、温室効果ガス排出量をCO2 換算(GtCO2e)で年間2.5ギガトンを削減できます。これにより、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が設定した地球温暖化による気温上昇を1.5°C未満に抑制するための目標である、2030年の世界的なCO2排出量削減目標の9%が達成されることになります。このことから、再生可能エネルギー関連プロジェクトの実施が好機であることと、IPCCの世界目標達成に必要とされる追加的なアクションの規模とが明確になっています。

グリーンリカバリーが雇用に与える影響

再生可能エネルギー関連プロジェクト案件は、現地およびサプライチェーン内での雇用と合わせて最大1,000万件を創出できる可能性があります。各国内においては、特に地域でのサプライチェーンの強化が計画的に行われている場合、再生可能エネルギーは都市部以外での雇用機会を創出する手段として特に有効です。一例として、英国のハンバー地域が挙げられます。同地域は洋上風力発電の集積地となっており、長らく低迷していた経済を立て直す機会となりました。現在、世界最大のホーンシーワン(Hornsea One)を含む洋上風力発電所6拠点が稼働しています。2030年までに40GWの洋上エネルギー容量を確保するという英国政府の公約を支える中心的な拠点です。このプロジェクトの実施によって、当地の失業申請者数は60%減少しました。

グリーンエネルギー関連の職を占めるのは高度な専門性を有する分野の修了生がほとんどだと聞かれますが、分析結果ではそのような裏付けは取れませんでした。現実には、建設、設置、製造などで、高度なスキルを必要としない雇用が創出される一方、エンジニアリングやプロジェクトマネジメントなど、一定のスキルを必要とする雇用機会が新たに生まれています。

さらに、電力会社の送電網を利用しないオフグリッドや、電力需要家側にエネルギー貯蔵設備を設置するビハインド・ザ・メーターといったプロジェクトの実施は、既存の再生可能エネルギー関連プロジェクト案件の成果を大きく上回る可能性があります。ベトナムでは、2019年から2020年にかけて設置された屋上太陽光発電の容量が、2018年に公表された4年間の太陽光発電の案件をほぼ100%上回りました。ベトナムの屋上太陽光発電の設置は、固定価格買取制度の影響を大きく受け、2019年の年初以降、2,435%増加しています。2020年12月には固定価格買取制度が実施され、同月だけで屋上太陽光発電の容量が6.7GW増加しました。

再生可能エネルギーへの投資は、単純な雇用創出にとどまらず、世界で最も雇用創出が求められ、かつ他に手段のない地域での雇用創出を実現します。


            人口100万人あたりの雇用創出力のグラフ1

グリーンリカバリーが経済成長に与える影響

調査で明らかなように1、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済的影響により、2020年の世界のGDPは減少しました。今回の調査対象国が被ったパンデミックによる経済損失額は2兆2,000億米ドルを上回りますが、再生エネルギー関連の投資機会全体には、このうちかなりの部分を軽減あるいは回復させる効果があり、豊富で低コストの再生可能エネルギーよる持続的な経済成長の基盤を築くことにつながります。すぐに着手できるプロジェクトの案件の実行により、2020年に失われたGDPの約85%に相当する1兆9,000億米ドル以上が今後3年にわたり世界経済に投入されることになります2。さらに、私たちは試算では、案件の実施後の資産運用によるGDPへ貢献は、毎年600億ポンドに上ると考えます。

機会の規模は国によって異なりますが、投資案件の規模の中央値は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる2020年のGDP損失の28%に相当します3

投資対象となるプロジェクトの既存案件を実施することで、グリーンリカバリーに直ちに着手することができ、ここでの税金の投入は最小限に抑えられます。最近の再生可能エネルギー政策の成功例では、適切な政策の枠組みがなされれば、再生可能エネルギーの導入を加速するために必要な投資のうち、90%から99%は市場から調達できることが分かっています4。再生可能エネルギー案件には、さらなる投資を呼び込んで加速させていく上での、国や地域全体に効果が及ぶような変革的なインフラプロジェクトが複数含まれています。

経済再生の機会は、先進国5ではレガシー産業の衰退に見舞われている「ラストベルト」と呼ばれる地域を不況から脱却させるきっかけにもなり、途上国ではクリーンエネルギーの開発と成長を加速させ、重要インフラの構築を促し、持続可能な開発の礎を築きます。

グリーンエネルギー案件を実現させるための6つのアクション

 
  • 投資家や市場の信頼を得られるような、政府による、明確な説明責任とコミットメントを伴った達成しがいのある国家目標を設定する
  • 支援的な市場の枠組みの提供につながるような、再生可能エネルギー推進に向けた政府や規制当局による明確な規制環境を整備する
  • 各国内の金融機関による、中小企業を含む幅広いディベロッパーへ資金提供する
  • 国際的な金融機関による、中小企業を含むディベロッパーを対象とした、直接的または魅力的な金利での融資という形での資金調達の機会を提供する
  • 再生可能エネルギープロジェクトに適した土地の手配を可能にする。土地の割り当てと認可の自由化による簡素化、迅速化、低コスト化
  • 需給バランスを支える国内外の広範な相互接続を提供する送電インフラを整備する。民間事業者の送電網への接続を可能にするための規制の自由化とネットワークの拡大を促進する
 
  • 参考記事を表示する#参考記事を非表示にする

    1. EYパルテノンの調査(2021年6月)
    2. 出典:オックスフォード・エコノミクス(2021年6月)
    3. 出典:オックスフォード・エコノミクス、EYパルテノンの分析(2021年6月)
    4. EYパルテノンの分析(2021年6月)
    5. EYパルテノンの分析(2021年6月)
    6. 欧州、北米、アジアの先進地域に位置する国のグループ

サマリー

EYのエネルギーチームは、欧州気候基金(ECF)の委託を受けた調査にて、グリーンリカバリープランを展開可能な主要経済47カ国におけるエネルギー・資源の投資案件を分析しました。今回の調査で見えてきたのは、再生可能エネルギーが、CO2排出量の削減、1,000万人の雇用創出、約1兆9,000億米ドルの経済成長をもたらす「後悔なき」経済回復の道筋を各国政府に示しているということです。さらに、要所要所で適切な政策手段をとることにより、各国は投資機会全体の90%以上の投資を市場から引き出し、公的資源の投入を最小限に抑えながら成長を促すことができます。

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執筆者 Serge Colle

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