アジア太平洋地域のCEOは、海外を視野に入れながらも地域内のディールにとどまっている
パンデミックを経て社会は再び始動し、アジア太平洋地域の企業はM&Aを利⽤した⾃社の変⾰を⽬指していますが、その中で、クロスボーダーディールが著しく増加しています。EY 2022 CEO Outlook Surveyでは、アジアを本拠地とするCEOの5⼈に4⼈(83%)以上が、今後12カ⽉間にクロスボーダーM&Aを推進するつもりだと回答しました。ちなみにこの投資先の割合は、北⽶が37%、欧州が71%です。
その⼀⽅で、アジア太平洋地域のCEOの多くが相⼿先国としてトップ5のうち中国、インド、シンガポールの3カ国を挙げており(後の2カ国は⽶国と英国)、クロスボーダーディールは地域内で進められることが予想されます。
デジタルディスラプションとビジネスモデルの再構築により、企業はクロスセクターに着目している
アジア太平洋地域のCEOは、デジタル、製品とサービスにおけるケイパビリティの拡充、およびマーケットリーチの拡⼤を図るため、クロスボーダーディールに加え、クロスセクターディールにも着⽬しています。EY 2022 CEO Outlook Surveyによると、テクノロジー企業の買収の60%がテクノロジーセクターの外で実施されました。
アジア太平洋地域の企業はセクターを問わず、高まるコンシューマーの要求と、地域全体のデジタルケイパビリティの向上に資するため、テクノロジー企業へと深化しようとしています。
ベトナムとインドネシアでは、モバイル端末ユーザーの⼈⼝全体に占める割合が急速に拡⼤しています。例えばインドネシアでは、モバイル端末を利用したインターネットユーザーは2020年では約1億7600万⼈でしたが、2026年までに2億3300万⼈を超えることが⾒込まれています1。
さらに、2021年では東南アジアの新規のインターネットユーザー数は推計で4000万⼈に上り、インターネット普及率は75%に達しました。東南アジアのデジタル経済2は、eコマースを筆頭に⾶躍的な成⻑を遂げています。アジア太平洋地域の企業はこの急成⻑する市場でのシェア獲得を目指したいところですが、そのためにはデジタルケイパビリティの獲得が不可欠です。
あらゆるセクターがテクノロジー資産を巡っての競争のさなかにあって、テクノロジー企業は、チップや電⼦製品の製造に必要な希少資源の確保にも進出するようになっています。同時にテクノロジー企業が進めているのが、AMMを含めた他のセクターの成⻑を可能にする戦略的投資です。
AMMセクター、中でもモビリティ関連企業は、⾃動運転分野のイノベーションを加速させるのに役⽴つテクノロジーケイパビリティの獲得に⼒を⼊れてきました。2021年には、モビリティサブセクターの企業の取引額は、前年同期と比べると29%増加して550億⽶ドルに上っています。
他方で、消費財セクターで企業が求めるのは、企業価値を⾼め、サプライチェーンを強化し、カスタマーエクスペリエンスを充実させることのできるテクノロジー資産です。