EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証に関連したグローバル動向の最新情報を毎月お届けしています。
アメリカ国内のみならず、世界的に大きな影響を与えうる動きとして、カリフォルニア州は、気候関連開示を義務付ける米国初の州となりました。ギャビン・ニューサム州知事は、カリフォルニア州で事業を行う企業に対し、排出量の開示、気候関連リスクの開示、カーボン・オフセット取引の透明性を含む気候関連開示を義務付ける法案一式に署名しました。
このカリフォルニア州の法案は、米国証券取引委員会(SEC)が提案する気候関連開示規則よりも、開示要求事項が広範囲にわたっています。SECの提案とは異なり、上場企業だけでなく非上場企業にも適用され(SECの提案は特定の登録企業にのみ適用)、スコープ3排出量の開示を義務付け(SECの提案は企業がスコープ3排出量を重要であるとみなすか、温室効果ガス排出目標を設定している場合にのみ開示)、ボランタリーカーボン市場参加者に関連情報の開示を要求しています(SECの提案には同等の要求事項は含まれていません)。
この法案一式のうち2つは2026年からの適用開始を目指していますが、ニューサム州知事はその時期や企業への影響について懸念を示し、次回の立法議会で修正案を提出することを提案しています。ただし、立法議会が州知事の懸念に対処する義務はありません。
ニューヨークで開催されたClimate Weekで、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、自然関連の情報開示フレームワークの最終提言を公表し、自然関連のリスクとそれらの事業への影響を開示するための道筋を提供しました。
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、来月開催される国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)を前に、ISSB基準に基づく気候関連開示基準を各国が採用するよう働きかけています。一方、アジア太平洋地域では、韓国政府とマレーシア政府が最近、ISSB基準の採用を促進するための取組みを発表しました。
サステナビリティ情報開示・保証に関するグローバルな最新動向の詳細については以下をご覧ください。
9月19日、TNFDは2年間の策定期間を経て、自然関連の依存、影響、リスク、機会などの開示に関する自然関連の情報開示フレームワークの最終提言を公表しました。TNFDは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と同じ4つの柱、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」に基づく開示を要求しています。
TNFDは2024年からの任意適用を働きかけると同時に、適用状況を毎年追跡するとしています。TNFDの枠組みは、すでにいくつかの国・地域で支持されており(オーストラリア、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スイス、英国の各政府は、いずれもTNFDの資金調達や開発に貢献している)、英国の2023年グリーンファイナンス戦略に示されているように、近い将来、TNFD提言に基づく情報開示が義務化される可能性があります。
9月20日、エマニュエル・ファベールISSB議長は、2023年第4四半期に向けたISSBの3つの優先事項を発表しました。第一に、ISSBスタッフはキャパシティビルディングと導入支援に注力し、これにはISSBナレッジハブと最近設立された移行導入グループ(TIG)の運用が含まれます。
第二に、ISSBは、各国がISSBの基準を採用するよう提唱し、そのための企業の努力を支援するというグローバル戦略を引き続き推進します。ISSB基準を自国のフレームワークに組み込む計画を策定中の国・地域は、オーストラリア、カナダ、コロンビア、香港、日本、マレーシア、ニュージーランド、ナイジェリア、フィリピン、シンガポール、英国などです。
第三に、ISSBとそのスタッフは、最近意見募集期間が終了した3つの公開協議、ISSBデジタルタクソノミー、SASBの産業別基準の適用可能性、ISSBの今後2年間の作業計画について、寄せられた意見を検討します。なおISSBの今後2年間の作業計画は2024年前半に最終決定する見通しです。
ISSBの姉妹組織である国際会計基準審議会(IASB)は、財務諸表における気候関連の開示を検討する現行プロジェクトのフォローアップに焦点を当てたアクションを発表しました。
CDPとはロンドンで設立された非営利団体で、2万社近い企業がCDPを通して環境情報を開示しています。CDPは、XBRL(Xtensible Business Reporting Language)と提携し、企業のデジタル開示を合理化・標準化することを目的に、世界的にデジタル・サステナビリティ開示を加速させていきます。
米国では、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏が気候関連開示を義務付ける法案に署名しました。この法案は3つの法案(SB-253、SB-261、AB-1305)から成り、3つを合わせると、カリフォルニア州で事業を行う企業、パートナーシップ、その他の事業体に対し、気候関連の開示と気候関連情報の透明性の向上を義務付けることになります。
SB-253は、2027年にスコープ3を含むGHG排出量の報告を義務付け、SB-261は、TCFDのフレームワークに準拠した報告を義務付けます。(カリフォルニア州の新たな報告義務に関する追加情報、SEC規則案やEU ESRSとの比較については、EYのテクニカルラインを参照)。
なお、カリフォルニア州大気資源委員会(CARB)が施行規則を発行する際には、通常、ビジネス界やその他の利害関係者からの意見やコメントが求められるため、追加的な変更が加えられる可能性もあります。
第3の法案であるAB-1305は2024年1月に施行され、カリフォルニア州内で炭素や温室効果ガスの排出削減を主張する事業体に対し、その主張を達成するためのボランタリーカーボンオフセットの購入や使用に関する情報を含め、広範な情報開示義務を課すものです。また、カリフォルニア州内でボランタリーカーボンオフセットを販売する事業体に対しても、関連情報を開示するよう求めています。
SB-253とSB-261の署名文の中で、ニューサム知事は、法案の実施スケジュールや企業の潜在的なコストなど、法案の影響について懸念を表明し、次の立法議会で一定の変更を提案する意向を示しました。しかし、議会はニューサム知事の署名声明に基づいて法案を変更する義務はありません。
また、SECは、気候関連開示規則案に寄せられた意見を検討中であり、最終的な決定時期はまだ不透明です。9月下旬、民主党の上院議員25名は、SECに対し、気候関連開示規則を10月に公表し、スコープ3排出量開示の要件を維持するよう圧力をかけました。一方、共和党議員の多くは、SECが気候関連開示規則を最終決定することに反対しています。ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長の最近の発言によると、気候関連規則の最終版が公表される場合には、スコープ3排出量の開示を含め、寄せられた意見に基づいた規則案への変更が含まれる可能性があります。
英国では、リシ・スナク首相が同国のグリーン政策について「より実用的で、つり合いが取れた、現実的なアプローチ」を発表しました。この修正アプローチは、以前約束したネット・ゼロのコミットメントに対する免除と遅延を意味します。なお、この修正アプローチが他のサステナビリティ・イニシアティブに影響を与えるかどうかは分かっていません。また、ISSB基準の評価プロセスは継続中で、2024年7月までにISSB基準を正式に承認するかどうかを決定し、英国サステナビリティ開示基準(SDS)に反映させる予定です。
さらに、英国移行計画タスクフォース(TPT)は、企業がネット・ゼロへの移行計画をどこまで詳細に開示すべきかについてのガイドラインを発表しました。英国政府は、大規模企業に対して、移行計画の開示を義務付けることについて年内に協議を行う予定です。
欧州連合(EU)では、欧州議会と欧州理事会が欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の見直しを続けています。見直しの期限は、延長が要求されない限り、2023年10月下旬です。いずれからも異論が出なければ、ESRSは企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づき拘束力のある枠組みとなり、適用日は2024年1月1日です。
これとは別に、欧州委員会は、2023年11月初旬までに欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)が、ESRSにおけるマテリアリティの評価及びバリューチェーンの解釈のためのガイダンスに関する公開協議、及びCSRDにおける上場中小企業向けのサステナビリティ報告基準に関する公開協議を開始することを発表しました。
スイスでは、スイス連邦評議会が、CSRDと自国の基準を整合させるため、スイスのサステナビリティ報告義務を改正するための主要な指針を発表しました。(政府の公式プレスリリースはドイツ語)。提案されている改正の詳細な草案は、2024年前半までに作成される予定です。
アジア太平洋地域では、ISSB基準の採用が急速に進んでいます。国際会計士連盟(IFAC)は、アジア全域でのISSB基準の更なる採用に焦点を当てたサステナビリティ・サミットを9月に開催しました。
マレーシアでは、同国の証券委員会が、ISSBが公表したグローバル・スタンダードを採用する意向を表明しました。同委員会は、グローバル・スタンダードを自国の要件に合わせて調整することを検討する予定です。
韓国では、韓国金融委員会(FSC)が、気候関連開示基準の策定時期や公表時期に ついて、業界からの反発に直面しています。延期を求める声にもかかわらず、同委員会は、開示義務化の延期は検討しないとし、今年末までに情報開示のロードマップを策定する予定です。これとは別に、韓国サステナビリティ基準委員会(KSSB)は、IFRS S1とIFRS S2基準の翻訳版を公表しました。今後、公開協議を開始し、グローバル・スタンダードに関する国内利害関係者からの意見を求め、自国のサステナビリティ開示基準を策定する際の参考にします。
ニュージーランドでは、金融市場庁(FMA) が、気候関連報告書が同国の開示基準に準拠していることを確認するための適切な記録の保存・管理についての最終ガイダンスを発表しました。
現在予定されている、注目すべき今後の主な日程は以下です。
フィナンシャル・タイムズの記事(ESG ratings: whose interests do they serve? (ft.com))では、サステナビリティ・スコアの様々な解釈を説明しています。主な論点の一つは、ESG格付けは、企業の利益に係るESGリスクに関する情報であり、企業が地球に与える影響に関する情報ではないということです。この考え方は、EYの以前のレポート「ESGで信頼を築くための5つの優先事項」でも取り上げられています。
Five priorities to build trust in ESG
EYのテクニカルラインでは、カリフォルニア州の気候関連開示に関する新法の規定、範囲、時期、SECやESRSとの比較について詳述しています。
Technical Line - A closer look at California’s recently enacted climate disclosure laws
EYのバロメーターでは、TNFDの枠組みに沿った自然関連情報開示の現状を説明しています。S&P500銘柄のうち、米国を拠点とする100社以上を対象とした評価に基づく分析を提供しています。
When will transparency drive action to protect and restore nature?
2021年10月22日に欧州監督当局がサステナブルファイナンス開示規則のドラフト版細則を公表
2021年10月22日、欧州監督当局より、欧州の資産運用会社等に対する開示を義務付けた「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」における詳細な内容を定めた「ドラフト版細則(Draft Regulatory Technical Standards; Draft RTS)」が公表されました。
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