多くの在英日系企業が採用するFRS102については今後改正の予定
上場企業は連結財務諸表についてIFRSが強制適用されますが、単体/個別財務諸表については、IFRSは任意適用とされ、英国会計基準(FRS)に準拠した作成が可能です。
FRSはIFRSに基づき作成された会計基準ですが、多くの在英日系企業で採用されている会計基準はFRS101とFRS102です。FRS102は、FRS101をより簡素化・簡略化された会計基準であり、IFRSとはいくつかの相違点があります。FRS102については定期的な見直しとして、2022年12月にFRC(Financial Reporting Council)からの提案が公表されており、今後改正が予定されています。
MTUTとDTUTに関するガイダンスは2023年中に更新も
一方、Pillar2に関する法制化、今後の動向については、2023年3月23日に公表され、7月11日の国王裁可をもって施行された英国の2023年財政(No.2)法には、GloBE計算および所得合算ルール(IIR)を含む多国籍トップアップ税(MTUT)と、MTUT計算ルールに組み入れ、適格国内ミニマムトップアップ税を意図した国内トップアップ税(DTUT)を施行するための法律が含まれています。
MTUTとDTUTはどちらも、2023年12月31日以降に開始する会計期間から英国に事業を有する全世界収入が7億5000万ユーロを超える大規模な多国籍企業に適用されます。なお、英国の政策担当者は、MTUTとGloBEの結果に大きな相違が生じることは意図していないとしており、今後そのような差異が生じる可能性がある場合は、OECDが将来公表するガイダンスに含まれるであろうさらなる変更を想定しています。
英国歳入関税庁(HMRC)は2023年6月15日にMTUTとDTUTに関するガイダンス案を公表しています。企業はOECDのモデルルールとMTUTの制度に関する比較表や実務的な申告対応などについて詳細な情報を得ることができますが、そのガイダンスも2023年中に更新される予定です。
優遇税制を適用している企業はDTUTの適用に留意が必要
英国の主なインセンティブ(優遇税制)制度については、次のようなものがあります。1つはパテントボックスです。こちらは企業が英国内で知的財産を保持し、商業化することを奨励するために導入されたもので、特許発明から得られる所得に対しては、10%の軽減税率が適用されます。もう1つは、一定の要件を満たす研究開発費用については、20%の税額控除を受けることができるというものです。対象となる費用には、人件費、ソフトウェア、クラウドコンピューティングやデータ保存/処理に係る費用、消耗品ほか、外部労働者や臨床試験被験者に対する支払いが含まれます。
このように英国では、2023年12月31日以降に開始する会計期間からMTUTおよびDTUTを導入することが決まっているため、日系企業は当該制度の影響を確認することが必要です。まず優遇税制などを適用して実効税率が低下している企業では、DTUTの適用に留意が必要です。また、日本の親会社の連結会計期間が2023年12月31日から24年3月31日までの間に開始する場合は、特に留意が必要となります。現在の英国の制度がそのまま適用されれば、例えば日本の親会社の連結会計期間と英国子会社の会計期間がともに12月決算である場合は、2024年1月1日に開始する会計期間からMTUTとDTUTが適用されます。そのため、英国でのMTUTとDTUTの適用が日本のIIRに先行する形となり、今後の両国での動向に注意が必要となります。