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2023年6月30日付で、財務省より関税法基本通達を含む、関連通達の一部改正が発表されました(財関592号)。この通達改正においては、関税法における輸入者の定義について明確化¹を目的とした変更が含まれています。なお、輸入者の定義の明確化に関する通達の変更は2023年10月1日より施行されました。
日本税関においては、昨今の越境ECプラットフォームでの購入商品による輸入申告件数の急増の一方で、これらの輸入貨物について誤った申告・納税が数多く見受けられるという問題がありました。2022年6月、財務省の諮問機関である関税・外国為替等審議会(以下、「委員会」)はECにおける輸入者による不適切な輸入に関する問題への対策の検討を諮問し、令和5年度の関税関連税制改正におけるe-Commerce(EC)の急速な増加に対応する税関の取締強化の一環²で行われるもので、財務省は審議会の答申において、その改正の可能性を示唆していました。その結果、「輸入者の定義」に関する基本通達が改正されました。
なお、今回の通達改正は、EC業者における不適切な輸入実態を是正する目的で行われるものですが、一般の輸入者に対しても幅広く適用されることに留意が必要です。
これまで、関税法基本通達6-1においては、輸入者を「貨物を輸入しようとする者」と定義し、通常の輸入取引により輸入される貨物については、原則として仕入書・船荷証券における荷受人を指すとしていました。
一方で、上記の定義においては、輸入者は船積書類における荷受人としている一方で、具体的な輸入取引等の関係者に限定する記載がなく、また、輸入取引に拠らない貨物の輸入の場合の取り扱いについても特に定義がありませんでした。
委員会においては、特にECプラットフォームを介して輸入される貨物において、取引に関係のない法人・個人を輸入者として輸入申告を行うケースがあり、税関当局の照会に対してこれらの輸入者が十分に輸入申告の内容を説明できないことが多く発生していることを指摘しており、このようなケースを防止するため、「輸入者の定義」について明確化する通達の改正の必要性に触れていました³。
今回の通達改正においては、新たに関税法基本通達67-3-3の2が設けられ、上記の輸入者の定義を明確化する、以下の文言が加えられました。
今回の変更では、輸入取引により輸入される貨物については、関税定率法における輸入取引であることが明確化されました。また、改正前の通達においては、これらの輸入取引に拠らない場合の取り扱いについての記載はありませんでしたが、今回の改正では、輸入貨物の処分権を有する者、または、輸入の目的たる行為を行う者と定義されました。
この通達の改正によって、EC取引等において販売前に貨物を本邦に輸入するケースには非居住者が、輸送時通関手配を委託された事業者等は輸入者になることができない、等の影響があると考えられます。
今回の通達改正については、急増する輸入貨物に対する申告適正化の一環として実施されたものであり、特にEC貨物における不適切な輸入申告の事例に対して焦点を当てたものです。一方で、通達の改正案の記載内容はEC貨物のみならず、一般の輸入申告に対しても影響を与えるものであることに注意が必要です。
特に、これまでは輸入者の定義が明確化されていなかったため、貨物の輸入取引と無関係な第三者であっても輸入者として輸入申告を行うことが明確に否定されることはありませんでした。一方で、今回の通達の改正以降は、関税定率法に定める輸入取引に拠らない輸入(例えば、非居住者が自らの所有する貨物を日本に輸入し、国内でそのまま所有し続ける場合、など)が行われる場合には、輸入者は貨物の所有者または輸入後に処分権限を有する者、もしくは、一連の貨物の取引において輸入の目的たる行為を行うものに限定されます。このような場合に、貨物の所有者以外の者が輸入者となる場合は、税関に対して輸入の目的たる行為を行うものに該当することを事前に照会することが推奨されます。
巻末注
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