5 分 2019年2月20日
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税務・財務部門を再構築するための三つのアプローチ

執筆者 Dave Helmer

EY Global Tax and Finance Operate Leader

Helping companies reimagine the tax and finance function.Speaker. Passionate runner. Husband and father of seven.

5 分 2019年2月20日

デジタル化や世界各国の税制改正に直面している企業は、次々と生じる課題に対応しなければなりません。 

世界各国の大企業1,722社の上級幹部を対象に行ったEYの最近の調査「税務・財務部門の再構築」によると、84%の企業が現在目指している業務モデルに改善すべき点があり、その対策を講じていると述べています。

このことは、税務・財務部門が、デジタル化や透明性の向上、世界各国における税制改正に対応するため、奮闘していることを示しています。

本調査は、Euromoney Institutional Investor Thought Leadership(ユーロマネー・インスティテューショナル・インベスター・ソートリーダーシップ)が実施しました。Forbes Global 500(フォーブス世界企業ランキング500)に選ばれた大手上場企業のうち63%から回答が寄せられました。今回の調査では、デジタル化などの環境変化に対するプレッシャーにうまく対応し、コスト削減時代においても価値を生み出せるよう、税務・財務部門の大胆な改革の必要性が認識されていることを示しています。一方で、多くの企業が適切な解決策をなかなか見いだせていないことも示しています。

主要スキル(コア・コンピテンシー)の変化

98%

の企業が、税務・財務の専門家に求められる主要スキル(コア・コンピテンシー)は従来の税務業務スキルから、より深い理解を伴うプロセスとテクノロジーのスキルへ変わっていくと考えています。

アプローチの決定

大手企業が行動に移すと決めたとき、通常は三つのアプローチのうち一つを選びます。どの選択肢にも一長一短があります。このリポートでは、企業が総じて何を行っているかを調査結果から解明するとともに、それぞれの選択肢について詳細に考察し、適切なアプローチを決定する際の一助となる知見を示します。

第1のアプローチは、既存の税務・財務部門の再構築または変革です。このアプローチには、通常、新しいデジタルプラットフォームの構築、新しいツールの知識もある税務専門家の雇用や研修、シェアード・サービス・センターの創設・拡大の検討が含まれます。

リソース

87%

が、新しい税制上の論点を把握・評価し、対応するための十分なリソースがないと回答しています。

第2のアプローチは、税務・財務業務を第三者に外部委託することです。このアプローチでは、すでに情報技術プラットフォームと経験値の高い専門家のグローバルネットワークに多額の投資を行っているベンダーへ委託することで、ITコストとリスクを転嫁することができます。ただし、新しい経営モデルやガバナンスモデルへの移行等、企業にとって大きな変化が求められます。

テクノロジー

51%

の企業が、テクノロジーへの投資不足が税務・財務部門に最も重大な影響を与えていると回答しています。

進むべき道を探して

先駆企業の税務・財務部門の責任者には、税務・財務部門を再構築して今日の増大するプレッシャーや責務を適切に管理していくことが求められています。成功への道すじは、税務・財務部門の全体像を明らかにし、組織全体における役割を明確にすることから始まります。

必要な変革を決定し、実行するためのステップは以下の通りです。

目標とする業務モデルの精査:コスト削減、価値創造、リスク管理といった優先事項、そして税務・財務部門が事業戦略全般にどのようにかかわるかを、まず精査しなければなりません。 優先事項を十分理解することにより、現在目標としている業務モデルとのギャップと、今後それを解消できるかどうかを見極めることができるでしょう。

改善すべき点

84%

の企業が、現在目指している業務モデルに改善すべき点があり、その対策を講じていると述べています。

何を内製するかを決める:税務・財務業務を今後も社内で行うとしても、既存の人材、プロセス、データ、テクノロジーの最適化といった社内業務改革がある程度必要です。 価値が高い、またはベスト・イン・クラスとされる業務を維持・構築したいと考える企業は多く、そうした業務は、有効性や統制を最適化したうえで行われるべきだからです。

ベスト・イン・クラス業務とは、タックスプランニングや係争管理などを指します。

何を委託・購入すべきかを決める:価値が低い、またはベスト・イン・コストとされる業務は、集約化や低コスト地域からの調達、外部委託によって、コストを最小限に抑えて行うことが求められます。そうすることで、低コストで効率よく業務を進めることができます。コスト低減や高効率化が必要なのは、主に税務申告書の作成やデータ収集などです。

適切な組み合わせを見つける:業務をベスト・イン・クラスとベスト・イン・コストに分類し、各業務を内製するか外部調達または外部委託するかを決定します。多くの企業は、税務部門の成果と効率を最大化できるハイブリッドアプローチを選択します。

社内で行うか、外部委託するか

外部委託について

84%

の企業が税務・財務部門の業務をすでに外部委託している、もしくは外部委託を検討中です。

業務を社内に残すか、外部委託するかについては、一長一短があります。業務を社内に残し社内で業務改革を行うのは、変更も混乱も最小限に抑えられるため、以前から行われており、おそらく最も一般的な解決策です。しかし、経営層の多大な尽力と投資が必要となります。しかも、急速に変化する環境にあって盤石な税務・財務部門を維持するということが、何より難しい課題となりかねません。

第三者への外部委託では、税務コスト総額の削減と予測できなかったIT投資の管理ができるようになり、最終的には社内リソースをより戦略的な業務へ移すことができます。外部ベンダーが、必要な人材や情報技術への投資をかなり負担するため、より効果的で大幅な変革を実施することができるのです。しかし、外部委託では、新しい業務モデルについて、管理や統制だけでなく移行作業でも大きな負担が求められます。

税務・財務部門の構築に向けた取り組みでは、行動することが不可欠です。企業は最善のアプローチを検討し、税務・財務に関する目標を達成できるようなステップを踏む必要があります。それによって初めて、自社として必要な税務・財務部門のイメージが再構築でき、成功へのスタートラインに立つことができます。

サマリー

税務・財務部門は、デジタル化や透明性の向上、世界各国における税制改正に対応するため奮闘しています。ここでは、税務・財務部門がとるべきアプローチを解説しています。 

この記事について

執筆者 Dave Helmer

EY Global Tax and Finance Operate Leader

Helping companies reimagine the tax and finance function.Speaker. Passionate runner. Husband and father of seven.