EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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企業、投資家、政策立案者、基準設定主体が直面している主要な課題は、サステナビリティ報告基準間の「協調性」(harmonization)です。
今週、世界が2022年のCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)のためにシャルム・エル・シェイク(エジプト)に集まる中、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は主要な発表により、基準の最終化に向けた次のいくつかのステップを明らかにしました。
第1に、ISSBが組織能力を強化するためのパートナーシップ・フレームワークを立ち上げたことです。このフレームワークは、EYを含む20以上のパートナー企業の支援を受け、作成者、投資家、その他のステークホルダーがIFRSサステナビリティ開示基準を使用するための能力向上を支援することを目的としています。
第2に、ISSBは欧州委員会(EC)及び欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)と緊密に協力しており、相互運用性の枠組みの構築と気候変動開示に関する調整を進めています。EFRAGは11月22日に第一弾の欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を欧州委員会に提出する予定です。ESRSとISSB草案基準との間がどの程度の整合性を担保されるかは、世界的なコンバージェンス(収斂)にとって重要な道しるべとなります。
第3に、CDPとISSBは共同発表を行い、CDPがエクスポージャードラフトIFRS S2 Climate-related Disclosure (S2)をグローバル環境開示プラットフォームに組み入れると表明したことです。これは、CDPの17,000人以上の自発的利用者が、2024年の開示サイクルにおいてS2構造に基づく気候変動データを開示することを意味します。
COP27やISSBの動向に限らず、11月は欧州において企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の承認、日本においては有価証券報告書における情報開示の義務化に係る開示府令の公表など重要なマイルストーンが数多く見られています。
サステナビリティ・レポートに関するグローバルな政策動向の詳細を以下に示します。
ISSBは、10月18日から21日にかけて、モントリオールで第2回理事会を開催しました。また、11月1日~3日には、バーチャルで追加ミーティングを開催しました。
これらの会議の主な焦点は、サステナビリティ関連の開示基準の第一弾の2つの提案である公開草案IFRS S1サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項(S1)とS2に対するフィードバックのレビューと審議でした。
注目点としては、緩和規定を条件としてスコープ3の温室効果ガス排出量(GHG)を開示要求とすることを確認したこと、企業の状況に見合った気候関連シナリオ分析を使用すること(理事会によるこれらの決定は、新しい要求事項ではなく、コメント期間に寄せられたフィードバックを踏まえて要求を再確認したものです)などがあげられます。
また理事会は重要な概念や定義を明確にすることに合意しました。これには「企業価値」や「重大な(significant)」という用語の削除が含まれます。企業価値の意味については、今後の会合で引き続き審議される予定です。さらに、EUを含む管轄区域の要求事項との相互運用性についても引き続き議論しました。
上記で述べた以外の、ISSBに関するアップデートは以下のとおりです。
最近のG7財務大臣・中央銀行総裁の「ISSBが開発中のグローバル・ベースラインを歓迎する」、G20財務大臣・中央銀行総裁の「ISSBによる基準の最終化を期待する」というコメントが示すように、ISSBは主要各国政府高官等からの高い支持を受け続けています。
次回の理事会は、(その他のトピックを一緒に)11月15-16日にフランクフルトで開催され、サステナビリティ開示タクソノミーに関する議論、S1およびS2に関する継続審議が予定されています。
なお、EUや米国を含む主要な管轄区域は、ISSBのプロセスに対する賛同にもかかわらず、ISSBの最終基準発表前に独自の気候変動開示規則を最終確定する可能性があることに留意が必要です。
一方、国際会計士倫理基準審議会(IESBA)は、「サステナビリティ報告における倫理上の考慮事項(グリーンウォッシングに関する懸念に対処するためのガイダンスを含む。 )」(Ethics Considerations in Sustainability Reporting, Including Guidance to Address Concerns about Greenwashing )というタイトルの文書を公表しました。この文書は、グリーンウォッシングを含むサステナビリティ報告および保証に係る課題への対応について、IESBAの倫理基準は関連性と適用可能性があることを強調しています。
欧州連合(EU)では、11月10日に欧州議会が企業サステナビリティ報告指令(CSRD)を正式に採択しました。CSRDは、EU官報に掲載されてから20日後に発効します(2022年後半から2023年初頭の予定)。加盟国は、18カ月以内に国内法への反映を進めることになります。
一方、EFRAGは第1弾のESRSを11月22日に欧州委員会に提出します(第1弾の基準はセクター横断的なもので、欧州委員会による採択は2023年6月の予定です)。EFRAGは、ESRSの第2弾の作業を開始し、関連する公開草案を2023年第1四半期末に公表する予定です。
日本では、金融庁(FSA)が気候、人権、人的資本を含むサステナビリティ情報開示の義務化案(「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案)を発表しました。この案は、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」に極めて近いものとなっています。協議期間は12月7日までで、施行日は2023年3月期(つまり今年度)からと提案されています。
シンガポールでは、シンガポ-ル勅許会計士協会(ISCA)が、「財務諸表およびその監査における気候関連リスクへの対応」(Addressing Climate-Related Risks in Financial Statements and Audits of such Financial Statements) と題する新たなガイダンスを公表しました。このガイダンスは、シンガポール企業の財務諸表の作成及び監査において、気候関連リスクを取り入れることを促進することを目的としています。
今後90日以上にわたって注目すべき主な日程は以下です。
EYグローバル・バイス・チェア-サステナビリティのスティーブ・バーリーが、COP27で注目すべき主な動きとして、(i)「グリーンエネルギーの需給ギャップ」を解消するメカニズム、(ii)グローバル協調、(iii)資金目標と気候変動ファイナンス調達のためのロードマップについて解説しています。
持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)のこの報告書は、過去10年間にサステナビリティ報告がどのように進化してきたかを説明し、今後どのように進化していくべきかのポイントを示しています。
2021年10月22日に欧州監督当局がサステナブルファイナンス開示規則のドラフト版細則を公表
2021年10月22日、欧州監督当局より、欧州の資産運用会社等に対する開示を義務付けた「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」における詳細な内容を定めた「ドラフト版細則(Draft Regulatory Technical Standards; Draft RTS)」が公表されました。
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