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米大統領選挙の結果は、関税および世界貿易に多大な影響を与えるとの見方が大勢となっています。米国向け取引を行っている企業は、トランプ政権の掲げる新たな貿易政策によって生じる幅広い課題に対して対策を講じていく必要があります。
米大統領選挙の結果、共和党候補のドナルド・トランプ(以下、「トランプ氏」)が、2025年1月20日に第47代大統領に就任することになり、トランプ政権による世界貿易および関税への影響が注目されています。米国は国際貿易において重要な影響力を持っており、貿易政策、グローバルパートナーシップ、関税、そして米国内外の世界経済に大きな変化をもたらすことが予想されます。日本企業の税務・関税・サプライチェーン担当が検討すべき施策については、2024年12月2日開催の「EY緊急ウェブキャスト:米国大統領選挙の結果に伴う通商関税および税務への影響」でも解説しますので、ぜひご参加ください。
米国の行政府は、国家安全保障または経済的損害を根拠として、関税率の引き上げを含む貿易救済措置を導入する広範な権限を有しています(1962年通商拡大法232条、1974年通商法201条および301条、国際緊急経済権限法〈International Emergency Economic Powers Act: IEEPA〉等)。以前に、貿易政策に対して立法府の権限を再強化するための法案が提出されたこともありましたが、今後、議会が関税および貿易に関する大統領の権限を大きく制限する可能性は低いとされています。そのため、大統領就任後は、トランプ氏は貿易および関税に関する大きな裁量を有し、選挙で掲げていた貿易および関税政策について実行していくことが予想されます。
前回のトランプ政権(2017年1月20日から2021年1月20日まで)において実施された貿易および関税政策は、米国の国際貿易に対するアプローチに大きな変革をもたらしました。2024年の大統領選挙戦でも、トランプ氏は関税を重要項目として挙げ続けました。具体的には、米国に輸入される全ての製品に少なくとも10%の関税を課す意向を表明し、中国やメキシコ等の国々に追加関税を課すことを掲げていました。さらには、多国間貿易システムを批判し、世界貿易機関(WTO)からの脱退の可能性についても言及しています。
加えて、トランプ氏の米大統領再就任に当たり、米国-メキシコ-カナダ協定(以下、「USMCA」)の大幅な見直しの可能性が高まっています。USMCAはトランプ第一次政権下の2020年に発効し、2026年の見直しプロセスで延長されなければ、2036年に失効します。USMCAのサンセット条項には「終末時計(Doomsday Clock)メカニズム」と呼ばれる、6年ごとに協定の延長を決定するプロセスが含まれています。仮に協定の延長が決定されなかった場合には、失効期限まで毎年の見直しが行われます。トランプ氏は協定の見直し条項について積極的に発動する意向を表明しています。この見直しにおいては、自動車に係る原産地規則、メキシコのエネルギー政策、遺伝子組み換え農産物の取り扱いなど、さまざまな課題が議題に挙がると予想されます。また、中国産品がメキシコを経由し、USMCA上の特恵待遇を受けて米国に輸入されていることにも懸念を呈し、是正を求めていくとみられています。
米国への輸入取引がある企業は、以下の対応を検討すべきと考えられます。
EY税理士法人
大平 洋一 パートナー
福井 剛次郎 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
EY緊急ウェブキャスト:米国大統領選挙の結果に伴う通商関税および税務への影響
本ウェブキャストでは、この大統領選直後というタイミングで、次期大統領の通商関税および税務政策をご紹介し、変わりゆく通商環境下において、日本企業の税務・関税・サプライチェーン担当が検討すべき施策について解説いたします。
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