EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
M&Aにより被買収会社の株式を取得した場合には、さまざまな費用が発生します(本稿では、このような費用のことを「M&A関連費用」と表記します)。M&A関連費用のうち、被買収会社株式の取得のために要したと認められるものは、被買収会社株式の取得価額に算入されるものとされており(法令119①一)、具体的には、以下のように取り扱われていました。
イ.仲介会社に支払う仲介手数料及び弁護士に支払う株式譲渡契約書の作成費用
その全額が被買収会社株式の取得価額に算入される。
ロ.デューデリジェンス費用
取得しようとする有価証券の候補が複数ある場合において、どの有価証券を取得すべきか決定するための費用は取得価額に算入されず、特定の有価証券を取得する前提で行うデューデリジェンスのための費用は取得価額に算入される。
M&A関連費用のうち、どのようなものを被買収会社株式の取得価額に算入するのかについては、実務においても悩ましい論点でした。とりわけ、2000年前後には、被買収会社株式の取得価額に算入すべき付随費用を狭く捉えるべきであり、特にデューデリジェンス費用のようなものについては、デューデリジェンスにより重大な問題が発見されたらM&Aが不成立になることから、付随費用に含める必要はないのではないかという意見もありました。このような議論は2003年頃に沈静化され、デューデリジェンス費用についても、上記の整理に従って被買収会社株式の取得価額に算入すべきであるという見解が有力になったと記憶しています。
東京地判令和8年2月18日では、客観的にみて株式購入の蓋然性が相当程度高まったと認められる程度に当該株式の購入の不確実性が解消した場合に、M&A関連費用を被買収会社株式の取得価額に算入すべきであるとしました。
このような蓋然性による判断は、そもそもどのように判断するのかという問題もありますが、法解釈として妥当であるのかどうかという問題もあります。この点については、法人税法施行令119条1項1号において、「購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額」と規定されていることから、被買収会社株式の取得のために直接に要したかどうかのみを問題とすべきであり、蓋然性の程度を問題とすべきではないと考えるべきかもしれません。
この点については、本裁判例が第一審判決であることから、控訴審において明らかになることが期待されます。
さらに、M&A関連費用については、立法論としての問題も指摘せざるを得ません。なぜなら、事業譲渡や非適格分割による買収であれば、M&A関連費用は損金の額に算入され、資産の取得価額に算入する必要はないからです1。M&Aの手法により、M&A関連費用の取扱いを変えるべきではないとするのであれば、被買収会社株式の取得価額に算入されるべきM&A関連費用の範囲を狭く捉えることで、原則として損金の額に算入できるような税制改正が行われることが期待されます。
※本稿の記述は、2026年4月15日現在の法令等に依ります。
巻末注
EY税理士法人
佐藤 信祐 アソシエートパートナー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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