7 分 2023年1月26日
急流に差し掛かるカヤック

2023年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10

執筆者
Ken Englund

EY Americas Industry Markets Leader, TMT

Focused on helping technology, consumer electronics, internet, social commerce and software companies solve critical business issues.

Olivier Wolf

EY-Parthenon EMEA TMT Leader

Strategy consulting partner at EY-Parthenon for technology, media and telecommunication sectors. Trusted advisor to clients, colleagues, other advisors and friends.

Stephan van Rhee

EY Global Technology Sector Analyst

Sector analyst with a keen interest in technology and innovation. News addict. Sports enthusiast.

Tracy Watt

EY Global Technology, Media & Entertainment and Telecommunications (TMT) Sector Strategy, Operations and Solutions Leader

Motivated by the endless possibilities of technology. Problem solver. Passionate advocate for diversity, equity and inclusiveness. Wife, mother of two strong girls. Avid skier and photographer.

EY Japanの窓口

EY Japan テクノロジー・メディア & エンターテインメント・テレコムリーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 セクターリーダー コンサルティング・マーケッツリーダー パートナー

「顧客価値」を引き出すべくチームをリード。愛する妻と娘がいる。

7 分 2023年1月26日

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  • 2023年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10(PDF)

不安定なビジネス環境の中で、大胆さは報われるのでしょうか。今こそ新しいビジネスモデルの模索に資金を投じるべき時です。

要点

  • 2023年も不安定なビジネス環境が続くとみられる。
  • 経済的逆風がセクターの変革を加速させる見込みである。
  • イノベーションが順風となって、テクノロジー企業は将来の成長機会の創出・確保が進むと思われる。
Local Perspective IconEY Japanの視点

日本企業において今すべきことは、事業戦略とデジタル人材採用戦略との連携、統合です。

エマージングテクノロジーによる新しいビジネスの創造、そしてオペーレションモデルの強化においてデジタル人材が必要とされるなど、今や全ての企業活動にデジタル人材は不可欠であり、デジタル人材の獲得に対して企業は人事部のみにその責任を負わせるのでなく、全社的な活動とするべきです。加えて企業はデジタル人材の採用、活用を事業戦略とも統合することでその効果を増大させることができます。ただし、そこには『組織の壁』が存在しており、この『壁』を壊すことができるか否かが、競争力を勝ち得る鍵と考えます。

 

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尾山 哲夫
EY Japan テクノロジー・メディア & エンターテインメント・テレコムリーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 セクターリーダー コンサルティング・マーケッツリーダー パートナー

テクノロジー企業にとって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック後の回復と成長は一筋縄ではありません。高いインフレ率、エネルギー危機、金融市場の変動性、消費マインドの落ち込みなどの問題に直面し、それらがセクターの業績、展望、評価に重くのしかかっています。

ここ数年間、テクノロジー企業はリモートワーク、オンラインでのビジネス、経済活動の維持に必要なツールとテクノロジーを世界に提供するために、サプライチェーンの制約という重要課題にうまく対処してきました。しかし、サプライチェーンの改善直後に続いたのは、政治、経済、金融情勢の悪化でした。テクノロジーベンダーはビジネスを守るために、可能な範囲での業務合理化と価格の引き上げを検討しています。

多くの局面で非常に不安定な状態が続くことが予想されるものの、テクノロジーセクターは根本的に堅強であるため、悪条件を乗り越えて再び経済的成長をけん引する存在となると私たちは考えています。テクノロジー企業が2023年に実行すべき10のアクションは次の通りです。

1. M&A戦略を加速してより良い成長図を描く

積極的なM&A戦略はテクノロジー企業に大きな利益をもたらす可能性があります。マクロ経済の逆風と金融市場の変動はディール市場を減速させ、強力なバランスシートを持つ買い手に好機をもたらしています。変革を伴う大規模な買収は、テクノロジー企業が新しい市場やヘルステック、フィンテックなどの周辺市場に参入する誘因となる可能性があり、アクリーティヴ買収(株当たり純利益のアップを狙った買収)では、人工知能、ブロックチェーン、エッジコンピューティングなどの最先端テクノロジーによって、企業のポートフォリオを強化できる可能性があります。その一方で、株価評価が下がるとディールへの意欲が戻り、数千億米ドルものプライベートエクイティが市場に投入され、ターゲット企業を巡る競争が再燃するでしょう。

 

2. プラットフォームのエコシステムの試行を通して市場に抜本的な変革をもたらす

企業はグローバルにつながったクラウドプラットフォーム上で出会い、競争し、サービスを提供しており、クラウドは新しいソリューション開発に必要なあらゆる材料がそろった、1つの巨大な市場となっています。クラウドプラットフォームでのイノベーションは、直線的なプロセスに代わり、複数のパートナーが同時に協働できるプロセスを提供します。より大きな視野で捉えると、第三者とのコラボレーション、共通の目的に向けた体系的な取り組み、ブロックチェーンやWeb3、メタバースなどのテクノロジーの活用によって、イノベーションパートナーはイノベーション成果のスピードと範囲を何倍にも拡大できるのです。テクノロジー企業はこうした機会を模索し、たとえ自社の従来のビジネスと競合することになっても、協力関係の企業や研究機関、競合他社などと接触を図り、連携して既存のビジネスモデルを打破するべきです。

3. コスト増を覚悟の上でローカリゼーションに労力を投じる

地政学的対立や自然災害に起因したサプライチェーンにおける構造的リスクへの対処として、昨年はサプライチェーンを冗長化する取り組みが進められましたが、今後このままでは不十分となるでしょう。多数の地域に事業を展開する必要があるテクノロジーセクターの企業にとって、リスク対応策の大幅な刷新が重要課題です。EYの最近の調査によると、テクノロジー企業の経営幹部の78%が、ニアショア、リショアを含むサプライチェーンの再構築を検討しています。これには今後数年にわたる大規模な投資が必要であり、大幅なコスト増加も避けられません。しかし、企業はコストを理由に踏みとどまるべきではありません。法令による企業支援や、政府の資金援助、税制優遇措置などの支援体制が確立されています。また、地政学的に不安定な地域への依存を減らすために割増料金を支払っても構わないと考える顧客にも企業は助けられるでしょう。

4. 環境面での持続可能性を優先する

企業が環境・社会・ガバナンス(ESG)のあらゆる局⾯を検討する必要があるのは当然であるとしても、来年のテクノロジーセクターにとって最も重⼤な影響要因は、環境⾯での持続可能性であるとEYは考えています。テクノロジー企業、⾮テクノロジー企業共に、二酸化炭素排出と気候変動リスクに関する情報開⽰を定めた新たな規制に準拠し、排出関連の追徴税を回避しなければなりません。報告には、全サプライヤーからのスコープ3の排出量を含めることが求められ、サプライチェーン全体が関連することになります。テクノロジーベンダーにとっては、データセンターの運営に再⽣可能エネルギーを利⽤する、あるいはハードウエアの環境負荷を減らすことは、サプライチェーン全体の二酸化炭素排出を低減し、競争的優位性につながることを意味しています。さらに、現在のエネルギー価格、およびレアメタルや希少鉱物を巡る競争を踏まえると、エネルギー効率、炭素削減、リサイクル活動への投資からは⾼いリターンが期待できます。

5. 補完的収益源を得るために従量課金を導入する

テクノロジー企業は消費ベースのビジネスモデルを検討するべきです。EYの最近の調査によると、TMT(テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム)企業の90%が既にサブスクリプション形式を中⼼に、XaaS(Anything-as-a-Service)モデルから部分的な収益を⽣み出しています。これらの企業は、市場動向、競合他社、追加収益の獲得を移⾏の理由に挙げています。顧客は⽀払い⽅法に柔軟性を求めており、⽀払い額が予測できる固定価格のサブスクリプションを好む顧客もいれば、使⽤量に応じて⾦額が上下するといった、柔軟性の⾼い⽀払いを好む顧客もいます。市場には、使⽤量ベースの価格を武器に動きの遅い既存企業に挑む企業があります。新しい収益源を確保し、アグレッシブな挑戦者から市場シェアを守るために、サブスクリプションを採⽤しているテクノロジー企業は、従量制ビジネスモデルへの適応準備を整える必要があります。

6. 分析ツールを駆使して収益の最適化を図る

テクノロジー企業は分析ツールに投資してサプライチェーンを可視化し、早期に兆候を捉えてリスクの軽減と⽀出の優先順位付けを⾏ってきました。データ分析は、単にサプライチェーンのプロセスだけでなく収益の最適化にも活⽤できるため、テクノロジー企業にとって⾮常に魅⼒的な提案です。多くのテクノロジー企業はデータが豊富な製品を提供しているものの、ソフトウエア製品は限界費⽤が低いため、価格が結果を改善する重要な要素となっています。分析ツールを活⽤すれば、インフレや地政学的不確実性などの多様なリスクシナリオによる、さまざまな戦略の結果を計算できます。また、無数にあるビジネスモデルの価格検討にも役⽴つでしょう。

7. エッジエコシステムへの投資でオペレーションとエクスペリエンスを向上させる

テクノロジー企業は来年、分散型コンピューティングの必要性を重要視して投資するべきです。モノのインターネット(IoT)が拡張しているため、企業は⾮接触型決済、ロボットによる製造、スマートホームセンサー、⾃動⾛⾏⾞などからますます多くのデータを処理しなければなりません。こうしたデータを企業の⼤規模なクラウドプラットフォームとの間で送受信して処理しようとすると、特に、迅速なリアルタイム処理が求められる場合に膨⼤なコストと時間がかかります。企業に必要となるのは、⾃社ネットワーク上のデータが収集されるレベル、つまりネットワーク周縁部(エッジ)でのローカルな情報処理です。処理をクラウドからローカルに切り替え、応答時間を短縮するエッジコンピューティングには、運⽤のセキュリティーとレジリエンスを確保するための新しいITアーキテクチャが必要です。エッジエコシステムへの投資は、プロセスの合理化とカスタマーエクスペリエンスの向上をもたらします。

8. サイバーセキュリティーの最重要視がデータ保護を確実にする

例年と同様に、2023年もサイバーセキュリティーへの投資が最優先事項となるでしょう。データ量は増加の一途をたどり、エッジコンピューティングとハイブリッドワークの普及によって企業ネットワークの規模は拡大し続けています。地政学的緊張からサイバー犯罪者の数が増え、規制当局の監視強化に伴い、データ漏えいの罰金も増加しています。量子コンピューターやブロックチェーンなどの最新テクノロジーが、脅威とセキュリティーのパラメーターを変化させています。このように、データ侵害リスクが高まる一方で、テクノロジー企業は顧客データを収集、転送、分析するビジネスモデルの構築を続けています。セキュリティー、プライバシー、透明性を含むデータ保護は、あらゆる顧客提案において重要な要素であるべきです。テクノロジー企業はパートナーやベンダーと連携し、インフラ、製品、データのセキュリティーを保護するために、最新のツールやテクノロジーを試行していく必要があります。

9. アジャイルな人材戦略を推進し、企業ニーズに見合った人材を確保する

パンデミックはテクノロジー人材市場を大きく揺るがしました。EYが数カ月前に実施した調査では、テクノロジーセクターの従業員の56%が報酬、福利厚生制度、キャリア機会の改善を求めて転職を検討していることが分かりました。同セクターは現在、長期的成長の原動力である人材の不足だけでなく、経済的逆風を受けた雇用凍結と一連のリストラに見舞われています。雇用と解雇の間に微妙な境界線が引かれたこの状況が、さまざまな企業活動の間で労働力のバランスを取る、敏しょうな人事部の重要性を高めています。優れた人材をつなぎとめるために、テクノロジー企業はハイブリッドワーク体制を見直し、従業員の懸念を解消する必要があります。これには、報酬と福利厚生を重視した、魅力的な制度の採用や、職務間の柔軟な異動を可能にするキャリア枠組みの再構築などが含まれます。

10. グローバルミニマム課税に備える

世界各国のテクノロジー企業の税務および財務チームは、グローバルミニマム課税制度の影響を把握できるよう準備する必要があります。経済協力開発機構(OECD)は、テクノロジー企業と経済のデジタル化を念頭に、BEPS(税源浸食と利益移転)における第2の柱とも呼ばれる新税制の確立計画を進めています。この規則は2024年に実施が予定されており、相当量の財務報告分析、作業、コンプライアンス努力が求められるでしょう。企業は次のような要素を評価する必要が出てくるものと見られます。

  • 企業が必要とする税務テクノロジーツール
  • サプライチェーンの選択および業務モデルの変更が適用税率に与える影響
  • 金融および政治の不確実性に起因するリスクレベル上昇を想定した、最善の包括的税務戦略

 

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サマリー

2023年の経済的逆風と変動の激化を乗り越えるために、テクノロジーセクターに必要なのは変革とイノベーションです。それには大規模な投資が必要ですが、セクターの堅強な基盤を生かし、新しい成長市場を切り開くことができるでしょう。

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執筆者
Ken Englund

EY Americas Industry Markets Leader, TMT

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