デジタルへの依存が進むとウェルビーイングは悪化するのか? デジタルへの依存が進むとウェルビーイングは悪化するのか?

執筆者
Tom Loozen

EY Global Telecommunications Sector Leader

Fascinated by the positive impact of telecoms. Passionate musician. Enjoys educating himself on psychology, wine, sports, technology, arts and much more. Husband and father of three daughters.

Adrian Baschnonga

EY Global Telecommunications Lead Analyst

Lead Analyst with deep sector knowledge in technology, media and telecom, gained in professional services and business intelligence environments.

Martyn Whistler

EY Global Technology Sector Lead Analyst

Keen observer of all things technology. Storyteller. Avid reader. Bluff traditionalist who is impatient for the future. Fan of sports, occasionally sporty. Fan of the arts, rarely arty.

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EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコムセクターコンサルティングリーダー パートナー

「顧客価値」を引き出すべくチームをリード。愛する妻と娘がいる。

8 分 2021年12月22日

デジタルホームに関する最新の調査によれば、家庭内のデジタル活動の増加により、接続の安定性へのニーズが高まっています。

要点

  • 41%の世帯が、パンデミック前に比べてインターネットがウェルビーイングに与える影響を懸念している。
  • 47%がインターネット接続機器から離れて心身ともにリフレッシュする時間を模索している。
  • 価格追求の意識の高まり:42%がコンテンツにお金を使いすぎていると考えている。
Local Perspective IconEY Japanの視点


デジタルホームは新たな市場となるか、それともバズワードで終わるか?

⽇本ではコロナ禍によりリモートワークなど⾃宅で過ごす時間が増え、消費者のデジタルホームへの期待は⼤きくなっています。⼀⽅で、諸外国に⽐べると⽇本のデジタルホームの浸透度は決して⾼くはありません。それはデジタル環境におけるデジタルウェルビーイングとデータ保護への懸念が欧⽶より強いことが⼀因であると考えられます。⽇本の消費者はデジタルホームに対して、期待だけでなく不安も抱えており、現在の⽇本におけるサービス、エコシステムは、この期待に応えることも不安を解消することもできていません。企業は顧客提供価値を確⽴し、さらに不安を解消することで、消費者が⼼地よくデジタルホームを楽しめる環境を創造することができるでしょうか。それが、デジタルホームが新たな市場となるか、単なるバズワードで終わってしまうのかの分かれ道であると考えます。コロナ禍で強制的に進んだ消費者の意識改⾰を追い⾵にしてデジタルホームへの⼼理的バリアを取り除き、顧客提供価値を創造する包括的なサービスを提供する企業が勝者になっていくでしょう。

 

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尾山 哲夫
EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコムセクターコンサルティングリーダー パートナー

新コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、家庭で消費される製品やサービスのあり方がこの12カ月間で大きく変わりました。こうした困難な時代にも、テクノロジーに対する消費者の意識を毎年調査しているEYのDecoding the digital home(デジタルホームを解き明かす)」(PDF)によれば、良い兆しがあります。これは、全国的なロックダウンの期間に、社会経済活動を維持する重要なプラットフォームとしての役割を、インターネットサービスプロバイダーやコンテンツプロバイダーが担ったことによるものです。しかし家庭では、自宅で長時間過ごすうちにオンライン世界への依存に疑問を抱くようになり、供給過多や不信感も目立ち始めています。プロバイダーが、新たに認められた自身の重要性を最大限に生かすには、前向きな導入・利用傾向の裏側まで見通す必要があります。

  • 調査方法

    「Decoding the digital home(デジタルホームを解き明かす)」(PDF)は、EYのために行われたオンライン調査により作成され、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国の1万8,000以上の世帯が調査対象となっています。本年度の調査は2020年12月と2021年1月に行われました。本調査は、家庭で体験するテクノロジー、コネクティビティ、コンテンツに対して、また、これらの製品やサービスを提供する企業に対して、消費者がどのように態度を変化させているかを理解することを目的としています。本稿および関連記事では、新型コロナウイルス感染症の影響、ネットワークの安定性、テレビ番組や動画の消費の変化、カスタマーサポートに関する好みなどのテーマを取り上げています。詳細な洞察や分析の結果は世界各地のEYのTMTチームが提供しています。

新型コロナウイルス感染症によりデジタル活動が急増

全国的なロックダウンが実施されて以来、家庭内で初めて利用されたサービスは数多くあります。ビデオ通話はその筆頭で、食料品の購入、医療や教育サービスの利用などでもデジタル化が加速しています。初めて利用するサービスは、まず若年層から取り入れる傾向がありますが、友人や家族とのビデオ通話など一部のサービスは、高年層も同じくらい利用するようになっています。

図:コロナ禍期間のデジタルサービスの利用

インターネット接続とコンテンツへのニーズが増加

製品やサービスの急速なオンライン化に伴い、世帯はインターネット接続とコンテンツへのニーズが増加していると感じていますが、需要の増加には地域差があります。

  • ドイツとフランスでは、インターネット接続とストリーミングに対するニーズがそれぞれ増加していないと考えられている傾向にあります。
  • デジタルホームへの依存度の高まりが、インターネット接続の利用とコンテンツの購入に大きく反映されています。ただし、フランスとドイツは例外です。
  • 需要と契約数の増加は英国と米国で連動しており、他の調査対象国と比べて顧客の反応が早いことが表れています。
図:パンデミック中のインターネット接続とコンテンツへの需要

最終的に、国を問わずほとんどの世帯が、プロバイダーはコロナ禍にうまく対応したと回答しています。インターネットサービスプロバイダーのスコアが最も高く、データ使用量の追加提供や支払いの猶予を行った新型コロナウイルス感染症救済パッケージが好感を持たれています。一方で、ソーシャルメディアプラットフォームは、フェイクニュース関連の問題が収まらないことから後れを取っています。

図:パンデミック中のプロバイダーの行動に対する消費者の評価

デジタルウェルビーイングとデータ保護への懸念が増加

サービスの利用が増え、サービスプロバイダーがおおむね好意的に受け止められている一方で、パンデミックによって、個人情報の扱いやインターネットがウェルビーイングに与える影響に関して不安が高まっています。

全調査対象国の世帯の69%が、オンラインでの個人情報の公開に神経を尖らせています。本調査の結果によると、パンデミックがこうした不安に拍車をかけています。4割の世帯が、デジタルウェルビーイングに懸念を抱いたり、コロナ禍以前と比べて個人情報のプライバシー保護に不安を感じており、この傾向は高年層より若年層で高くなっています。

図:デジタルの信頼性とウェルビーイングへの新型コロナウイルス感染症の影響

コンテンツとインターネット接続への不信感が多くの人の懸念事項

インターネットサービスプロバイダーとコンテンツプロバイダーが取り組むべきユーザー課題もあります。回答者の3分の1以上が、オンライン上で有害コンテンツと遭遇する可能性を危惧しています。また、政府や通信事業者が安全性を保証しているにもかかわらず、5Gモバイルの使用には慎重な態度を取っています。半数の世帯がインターネットに厳しい規制を望んでおり、プロバイダーはさらなるコンプライアンス遵守のための負担に対応しなくてはならないかもしれません。

デジタルの信頼性とウェルビーイングへの新型コロナウイルス感染症の影響

需要の増加と不安の高まりは子どものいる世帯で最も顕著に

デジタル化への行動や考え方の変化は調査対象国によってさまざまですが、それよりも目立つのは、特定のグループの反応が国を問わず一致していることです。

子どものいる世帯が良い例です。このグループでは、需要の増加と高まる不安との正の相関関係が最も顕著に表れています。総合的に見て、デジタルホームの利用が非常に多いユーザーは、その欠陥やマイナス面に最も影響を受けることになります。

図:子どものいる世帯でのデジタルの需要と不安の指標

消費意欲は旺盛

毎月の消費見通しはおおむね好調です。支出を抑えるより、増やそうとするユーザーが増加しています。ただし、若い世代では支出の増加と削減の両方の意欲があり、拮抗しています。

図:インターネット接続サービスとコンテンツサービスへの消費意欲

前向きな消費意欲はハイエンドのパッケージ製品への関心にも反映され、顧客の20%が超高解像度コンテンツなどのプレミアム料金を支払うことに抵抗がないと答えています。多くの場合、パンデミックがきっかけとなっています。25%がコロナ禍を機に5Gに魅力を感じ始め、26%がギガビットブロードバンドへのアップグレードの必要性が明らかになったと考えています。同時に、調査世帯30%が、インターネット接続とコンテンツをすべて同じサプライヤーから調達することにメリットを見いだしており、若い世代ほど「ワンストップショップ」が好まれています。

図:インターネット接続とコンテンツをすべて同じサプライヤーから購入することへの考え方

節約と料金に見合った価値を重視する世帯が増加

しかし、アップグレードや消費拡大の意欲よりも、支出過多の心配や、家計をやりくりする必要性が勝っており、4割の世帯はコンテンツにお金を使いすぎたと考えています。

これはプロバイダーにとって重要な問題です。つまり顧客はさらなるサポートを求めています。調査対象国全体の42%の世帯は、ブロードバンドプロバイダーが最適なプランを保証するための取り組みを十分に行っていないと感じています。家計消費の予測が好調であっても、その裏側には別の考え方があります。

図:過払いと節約についての世帯の考え方

家庭内はデジタル飽和状態?供給過多な上に分かりにくいという印象

今回の調査では、デジタルホームには需要と同時に懸念もあり、ユーザーの葛藤があることが分かりました。また、プレミアムサービスへの前向きな消費意欲や関心があるものの、製品やサービスを問わず、価格追求の意識の方が勝っています。

また、多くの世帯がデジタル飽和状態に陥っていることが調査結果から見て取れます。47%の回答者がスマートフォンなどのインターネット接続機器から離れて心身ともにリフレッシュする時間を模索しています。消費者は、機器から「離れる時間」の必要性を口にするだけでなく実行に移し始めており、よく使うものだけを利用したり、オンライン世界との関わりを減らそうとしています。

図:オンライン利用に対する世帯の考え方

大切なのは、利用しすぎによるこうした疲労感が、製品やサービスだけでなく、サービスプロバイダー自体との関係にまで広がっていることです。回答世帯の4割以上が、サービスパッケージの選択肢が多すぎると感じており、初回特別価格などによって価値を評価しにくくなっているとの回答も同様の割合(全調査対象国の平均で47%)となっています。

図:インターネット接続とコンテンツのパッケージの選択に対する消費者の考え方

信頼性と価値に対する懸念がスマートホームの魅力を限定的なものに

データ保護、価値追求、デジタル疲れに関するこうした警鐘をサービスプロバイダーが無視すれば、新しい製品やサービスは顧客の支持を得られないでしょう。調査した世帯の半数近くが、デバイスやモバイルアプリによる白物家電の操作を一時的なブームととらえており、さらに多くの世帯がセキュリティ上の欠陥を懸念しています。スマートホームデバイスの価格が妥当だと感じている世帯は4分の1にすぎません。こうした消費者意識に対処しなくては、スマートホームの導入は伸び悩むことになります。

図:スマートホームに対する世帯の考え方

テクノロジー、インターネットサービスプロバイダー、コンテンツプロバイダーにとって本調査結果が意味することとは

     
  1. 新たに築いた消費者との良好な関係を足場とする

    プロバイダーには、パンデミック中に得た好感を大いに活用するまたとないチャンスがあります。プロバイダーはコロナ禍においてうまく対応したと消費者は考えていますが、うまく対応することと、より良いサービスを提供することは異なります。需要が高まっているとはいえ、サービスプロバイダーとの前向きな関わりが保証されているわけではありません。今こそ、自信と信頼に基づく新たな関係を築く時です。
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  3. シンプルさを貫く――顧客のデジタル過多を緩和しウェルビーイングを改善する

    デジタル世界との関わりは増えましたが、デジタルへの依存によって懸念も高まっています。多くの世帯で、提供されるコンテンツが多すぎると感じているのです。デジタル世界を管理しやすくすることが重要であり、プロバイダーは顧客を安心させ、共感を示してコミュニケーションをとる必要があります。シンプルで直感的なサービスによって顧客の疲労を和らげ、差別化を図ることができるからです。また、プロバイダーが協力し合うことで、業界全体でウェルビーイングに関する課題を解決できるでしょう。

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  5. 顧客についての従来の思い込みをなくす――「デジタルネイティブ」と決めつけない

    デジタル化が余儀なくされたことで、一部に偏って表れた問題もあります。若い世代は必ずしも「デジタルネイティブ」ではありません。実際、パンデミックがもたらすデータ保護への不安は、若年層が高年層よりも高い数値を示しています。子どものいる家庭はデジタルホームに不安を抱いており、需要が高まるにつれウェルビーイングの課題も大きくなっています。こうしたグループは、適切な製品とサービスには支出を増やす心づもりがあるため、これらの問題の解決を見過ごすことはできません。

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  7. 高まる需要を持続的な成長とロイヤルティにつなげられるような、新たな形の価値を提供する

    将来的に消費見通しが持ち直してサービスのアップグレードに関心が集まる兆しはありますが、いずれにしても価値が求められます。この志向は深く根付いており、顧客の支出度合いの今後に影響を及ぼす可能性があります。顧客は最終的に、消費を増やすに足る根拠を必要としています。具体的な顧客への約束に基づく新たな価値提案ができれば、顧客を引き付け、満足させ、長期にわたる関係を築くことができるでしょう。
 

サマリー

新型コロナウイルス感染症を機に、デジタルホームへの依存度が高まりました。サービスの利用が増え、家庭ではサービスプロバイダーがうまく対応していると受け止められており、前向きな消費意欲がうかがえることは良い兆しです。一方で、何が懸念されるのでしょうか。不安が高まりデジタル過多が進む中で、各家庭はあらゆる面で価値を求めています。プロバイダーは新たな需要に対応し、浮かび上がってきた課題を解決して、新しく築いた消費者との良好な関係を最大限に活用する必要があります。

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Tom Loozen

EY Global Telecommunications Sector Leader

Fascinated by the positive impact of telecoms. Passionate musician. Enjoys educating himself on psychology, wine, sports, technology, arts and much more. Husband and father of three daughters.

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Lead Analyst with deep sector knowledge in technology, media and telecom, gained in professional services and business intelligence environments.

Martyn Whistler

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Keen observer of all things technology. Storyteller. Avid reader. Bluff traditionalist who is impatient for the future. Fan of sports, occasionally sporty. Fan of the arts, rarely arty.

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