5Gプロバイダーは業界のレジリエンス向上をどのように支援できるのか 5Gプロバイダーは業界のレジリエンス向上をどのように支援できるのか

執筆者
Tom Loozen

EY Global Telecommunications Sector Leader

Fascinated by the positive impact of telecoms. Passionate musician. Enjoys educating himself on psychology, wine, sports, technology, arts and much more. Husband and father of three daughters.

Adrian Baschnonga

EY Global Telecommunications Lead Analyst

Lead Analyst with deep sector knowledge in technology, media and telecom, gained in professional services and business intelligence environments.

8 分 2020年7月30日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、業界の変革に新たな緊急性をもたらしています。5Gはレジリエンスとイノベーションの推進に大きな役割を果たすことができます。

Local Perspective IconEY Japanの視点


日本企業への示唆

5Gは日本においても特にこのパンデミックの環境下においてさまざまなネットワークコラボレーションを加速させるための梃(てこ)の役割を果たすと想定されます。例えば、日本では、今までは遠隔医療は認められていませんでしたが、この新型コロナウイルス感染症の環境において、まだ制限はあるものの一気に実現しました。また日本では教育関係でも、遠隔教育への取り組みは遅れていましたが、政府のデジタル化促進への前向きな取り組みもあり、急速に進むことが想定されます。動画やテキスト、グループディスカッションなどのアクティブラーニングなど、5Gで加速できる領域は多いと見込まれます。また、人が密になる状況や人との接触を避けて工場を自動で制御するということでは、ローカル5Gも検討に入れつつ、多くの企業で適応領域に関して検討されています。人を極力介さずにカメラやセンサー、ロボットなど多くのデバイスを同時接続し、大容量のデータを遅延なく制御するというような多くのユースケースが今後出てくると想定されます。日本の企業はこれらの事業機会を捉えて事業を拡大できる大きなチャンスがあるのです。

 

EY Japan の窓口

斎藤 武彦
EY Japan Telecommunications Sector Leader
岩本 昌悟
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション テクノロジー、メディア、テレコム セクター リーダー


EYが実施した5G(第5世代移動通信システム)の機会に関する調査の分析結果などをまとめた報告書「Maximizing the 5G opportunity for enterprise」によると、5Gの導入に対する考え方は業界によって異なります。5Gへの投資を積極的に進めている業界もあれば、導入サイクルの初期段階にある業界もあります。各業界では、5Gベースでのモノのインターネット(IoT)のユースケースをそれぞれ独自に想定しているため、5Gサプライヤーや関連エコシステムへの考え方も大きく異なります。こうした差があるとはいえ、新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックがもたらした危機により、現在および将来の業界のレジリエンスやイノベーションが新たに重視されるようになっています。5Gはこれを実現する上で大きな役割を果たし得るものですが、そのためには、5Gプロバイダーが企業との関係において、これまで以上に産業分野に特化した対応を取る必要があります。

調査対象のセクター別割合

5Gプロバイダーが成功するための重要な要因

5Gへの投資見通しは基本的に良好ですが、業界によっては具体的な5Gのメリットを見定めることが難しく、5Gへの投資が遅れています。多くのセクターではすでに業界特有のさまざまな5Gユースケースを想定していますが、IoTを導入する根拠としては、成長性よりも効率性の向上を重視する傾向にあります。同時に、企業とサービスプロバイダーの連携は始まったばかりであり、協力が効果的に実を結ばなければ長期的な進展を阻害することになるでしょう。今後を見据え、各業界が5Gという機会を最大限に活用できるよう、5Gプロバイダーが取るべき大事な行動が4つあります。

1. 産業分野に特化した5G活用の適切なビジョンを提示する

5Gプロバイダーは5Gが各業界に何を提供できるのかについて、既存のニーズに基づいた、セクターレベルでの知識のギャップに対処できるような方法で、魅力的なビジョンを示す必要があります。これには、成長に欠かせない要素が現状のIoT計画ではあまり取り上げられていない業界や、IoT戦略を強化できるという5Gの力が持つ戦略的な重要性がまだ広く理解されていない業界に力を入れることも含まれます。

こうした傾向は、現在5Gへの投資が遅れているセクターに多く見られます。例えば、現在5Gに投資しているのは、回答者全体では15%であるのに対して、ヘルスケアでは10%だけです。また同時に、ヘルスケアの回答者は新しいユースケースをIoT計画の推進要因とは考えていないことが多く、5Gを利用するためにIoT戦略を変えることをあまり重視していません。5Gサプライヤーは、5GがこれまでのIoT戦略という土台の上に新しい体験を作り出すことで業界をどのように再構成できるかについて、より説得力のある見通しをはっきりと示す必要があります。

ヘルスケアセクターの回答に見られる5GとIoTに対する考え方

その他のセクターはすでに、先端テクノロジーと5Gを関連させて検討を始めています。エネルギーセクターの回答者の40%がこれを優先事項して挙げており、23%がすでに5Gに投資しているなど、エネルギーは5Gへの投資が最も進んでいるセクターです。5Gプロバイダーは、5Gを成熟した視点で捉えているこうした業界では、人工知能(AI)からエッジクラウドにいたるまでの、他のさまざまなテクノロジーに5Gをどのように活用できるかをすでに検討していることを踏まえた上で、顧客に合わせたアプローチをとる必要があります。

2. ポストコロナの世界を敏感に反映させた5G製品・サービスを提供する
 

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、業界の変革に新たな緊急性をもたらしました。パブリックとヘルスケアは、レジリエンスとイノベーションがこれまで以上に重要になっているセクターです。5Gはその実現に独自の役割を果たすことが可能ですが、現在のところ、この2つの業界において5Gへの投資は遅れており、通信事業者に対する信頼度や5Gエコシステムへの信用の水準は不確かです。

 

5Gプロバイダーは提供する製品やサービスの信頼性と実用性を向上するために、新型コロナウイルス感染症が引き起こした、顧客が優先するユースケースの変化に対応する必要があります。パンデミックの発生以前、パブリックセクターの回答者はすでに、公共の安全と緊急時の対応を改善する上で5Gが果たす役割に注目しており、半数以上がこうしたユースケースを挙げていました。一方、ヘルスケアセクターにおける最新の5Gユースケース(ネットワークに接続されたコネクテッドホスピタルやコネクテッド救急車など)は、5Gベースの重要なユースケースの中では下位に位置し、当該セクターの回答者のうち4分の1未満が挙げているに過ぎませんでした。現在の状況下では、これらに対するニーズはより差し迫ったものとなっている可能性があります。

パブリックおよびヘルスケアセクターにおける5GベースのIoTのユースケース

今後は、業界が危機的状況に対応できるような5Gのユースケースが最も重視されるようになるでしょう。5Gサービスプロバイダーは、セクターごとのこうしたユースケースをより一層強化し、サービスポートフォリオを調整して価値の提案方法をそれぞれに応じて変えていく必要があります。

業界が危機的状況に対応できるような5Gのユースケースが最も重視されるようになるでしょう。

セクター特有の事情がどうあれ、新型コロナウイルス感染症は、リモートワークと従業員の安全についての考え方を急速に変革しています。この点については、遠隔監視や仮想現実(VR)など、新しい方法で顧客や従業員とやりとりできるようになる5Gの力が、全ての業界で広く活用されるようになる可能性があります。また同時に、企業がサステナビリティへの取り組みを推進していくことで、これまでのIoT計画にも影響が出るでしょう。5Gプロバイダーは、このような組織的な必須条件の変化を、サービスの提供や顧客との対話に反映させるよう心がける必要があります。

3. 5Gプロバイダーとしての業界でのマインドシェアを高める

企業は、5G導入のプロセスにおいてサービスプロバイダーのサポートを求めており、一部の業界ではサービスの共同開発やカスタマイズなど、サプライヤーが備えている特性がますます重要になっています。例えばエネルギーセクターの回答者の34%が、カスタマイズへの対応力をベンダーが将来的に備えるべき重要な特性として挙げており、現時点で重要と考えている21%よりも多くなっています。

ただし、5Gプロバイダーがこうした需要に乗じるには、業界でのマインドシェアを高める必要があります。例えば通信事業者は、IoTプロバイダーとしての信頼性は一般的に最も高いものの、消費財・小売、パブリック、ヘルスケアの3セクターではIoTのエキスパートとはみなされていません。

5Gプロバイダーは業界での顧客のマインドシェアを高める必要があります。IoTプロバイダーとしての通信事業者の信頼性は一般的に高いものの、消費財・小売、パブリック、ヘルスケアの3セクターではIoTのエキスパートとはみなされていません。

IoTサプライヤーに対する信頼度 – セクター別

5Gは単なる接続技術ではないことから、デジタルトランスフォーメーションの触媒となり得る5Gプロバイダーの能力も、重要性を増しています。通信事業者はここでも課題に直面しています。全セクターの回答者の35%が、デジタルトランスフォーメーションのエキスパートとして通信事業者を信頼していると回答しているものの、トップである情報技術(IT)サービス企業の43%を下回っています。デジタルトランスフォーメーションのエキスパートとして通信事業者に注目している割合が最も低いセクターは、テクノロジーとヘルスケアでした。

結局のところ、企業が5Gを採用する際に必要となる全ての領域で成熟した能力を備えているサプライヤーの種類を1つに絞ることはできません。この観点からすると、特にエンドツーエンドのソリューション提供力が顧客のニーズとして重要になるにつれ、5Gソリューションプロバイダー同士でパートナー関係を結ぶ必要が出てきます。これにより企業の5G計画で存在感を増すことができます。例えば、69%の組織が5Gに現在投資している、または投資を計画しているのに対し、5GベースのIoTに関して通信事業者と現在提携している、または提携を計画している割合はその半数にとどまっています。

「Maximizing the 5G opportunity for enterprise」の調査結果

69%

5Gに現在投資している、または投資を計画している組織の割合。ただし、5GベースのIoTに関して通信事業者と現在提携している、または提携を計画している組織は、その半数にとどまっている。

4. 5Gエコシステムのコラボレーションに対する企業の信頼感を向上させる

法人顧客のマインドシェアを高め、垂直型産業や新型コロナウイルス感染症収束後の世界を慎重に見据えた5Gのビジョンを示すことは非常に重要です。ただし、顧客と直接コラボレーションする能力もまた重要度を増しています。EYの調査では、77%の企業が、5Gによるビジネス成果を提供できるベンダーをパートナーとして優先することが分かっています。

「Maximizing the 5G opportunity for enterprise」の調査結果

77%

5Gによるビジネス成果を提供できるベンダーをパートナーとして優先する企業の割合。

しかし、コラボレーションを成功させる基礎の部分については注意が必要です。産業別の垂直型エコシステムに対する考え方を分析すると、エコシステムのコラボレーションに対する寛容さと、5Gエコシステムに関する懸念には正の相関関係があることが分かります。この緊張関係を放置すれば、いずれ問題が生じる恐れがあります。

5Gのコラボレーションに対するセクター別の考え方

この課題の解決にあたっては、パブリックや製造などコラボレーションに寛容なセクターを中心に、5Gパートナーエコシステムがそうした業界でどのように役立つのかについての理解が深まるよう支援します。一方で、他のセクター(消費財・小売、ヘルスケア、ファイナンシャルサービスなど)では、外部とのコラボレーションをさほど重視していません。こうしたセクターではエコシステムの採用についての懸念が少ないという調査結果が出ているのも、それが理由だと考えられます。

これらの業種では、5Gでのコラボレーションの基本的なメリットを説明することが、より一層重要になります。最終的には、オープンイノベーションの原則が、5GベースのIoTの世界で中心的な役割を果たすことになるでしょう。5Gサプライヤーはこのことを認識し、業界を超えたコラボレーションの取り組みを主導するため行動を起こす必要があります。

サマリー

EYが実施した5Gの機会に関する調査「Maximizing the 5G opportunity for enterprise」では、自動車、消費財・小売、金融サービス、ヘルスケア、エネルギー、製造、パブリック、テクノロジーの8セクター、1,000社の企業を対象に調査を行いました。この調査では、5Gの機会を評価する上で、変わりゆく企業のニーズと考え方について詳しく考察しています。モノのインターネット(IoT)の次の波で5Gが果たす重要な役割を示唆する兆しはありますが、期待と不安が交錯しています。さらに詳しい情報については、「5Gのビジョンについて自信を持てない企業を、クライアントは信頼するでしょうか?」をご覧ください。

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執筆者
Tom Loozen

EY Global Telecommunications Sector Leader

Fascinated by the positive impact of telecoms. Passionate musician. Enjoys educating himself on psychology, wine, sports, technology, arts and much more. Husband and father of three daughters.

Adrian Baschnonga

EY Global Telecommunications Lead Analyst

Lead Analyst with deep sector knowledge in technology, media and telecom, gained in professional services and business intelligence environments.