5 分 2019年2月22日
作業場でガラスを切断する男性

テクノロジー業界のM&Aで製品と技術の統合を成功させるには

製品のイノベーションと商品化(PIC)部門の統合を成功させる鍵となるのは、厳密なプログラム管理です。

製品とテクノロジーの統合は、 テクノロジー企業のM&A取引でしばしば中心的な問題と なります。統合することで別個に運用するよりも 多くの価値を生み出すことが可能だからです。一般に 製品の研究開発、エンジニアリング、プロセス開発、製品管理などを含む製品のイノベーションと商品化(PIC)部門をうまく統合することが、ディールモデルに伴う収益向上と事業費の削減を実現するための鍵となります。さらに、外部から一見して分かりやすいため、ディールの成功または失敗を判断する材料となりえます。

また、性質上極めて複雑で、部署間の枠を越えるものであり、適切に実施するのが困難です。製品とテクノロジーの統合には、高水準の不確実性を伴う、相互に関連するパイプライン全体にわたった技術的、商業的、組織的基準のバランスが必要です。統合が成功するか失敗に終わるかは、製品とテクノロジーの統合戦略をこの複雑な状況を理解し、正しい種類の価値を捉えることにフォーカスさせ、変更項目の実行にあたってよくある潜在的な落とし穴を避けられるかどうかにかかっています。

統合マネジメントオフィス(IMO)は、一般的に部署間の活動を調整し、適切な統合水準を実現します。しかし、経営幹部や統合担当リーダー は、エンジニアリング担当者の業務を妨げることのないよう、製品とテクノロジーの分野を「ブラックボックス」として、統合プログラム全体の直接の範囲外として扱うようIMOに指示する場合があります。多くの場合これは、最適とはいえない統合や他部署のワークストリームとの不整合につながり、ひいてはディールの価値に悪影響を及ぼします。

これらの深刻なリスクを回避するために、 統合を担当するリーダーは誰もが認識しているが避けている問題 に正面から取り組まなければなりません。

着地点を明確にして取りかかる 

買収側企業は製品とテクノロジーの統合 における重要施策を明確にし、 適切なステークホルダー全員に働きかけたらすぐに、合併組織の PIC部門に適した構成 や経営モデルを緻密に計画するという 重要かつ難しい取り組み を開始する必要があります。私たちのこれまでの経験 から、買収側企業がまず考慮すべき重要なポイントは次の二つです。 

初めに、買収側企業と被買収企業の間で PIC部門のオペレーションと文化がどの程度異なるかを検討します。 例えば、 エンジニアは事業部門と エンジニアリング部門のどちらに直属しているか。エンジニアの評価方法はどのようなものか。 開発システムやプロセスは どの程度成熟しているか。 

次に、ディールの価値を実現するために、 買収側企業の製品とテクノロジーを どの程度変更する必要があるかを検討します。例えば、 買収側企業の製品の一部を 製造中止にするか。開発チームを 統合するか。既存製品への投資を 減少させるか。 

組み込み

PICのオペレーション上の違いがそれほど深刻でなく 、買収側企業の組織を変更する必要性が少ない場合 、通常、被買収企業は買収側企業の組織の システムとプロセスに そのまま組み込まれます。従来のタックイン取引では、買収側企業は 買収した事業を 低コストで運営でき、自社のブランド力や 市場開拓力を被買収企業の製品ポートフォリオに適用して 収益の相乗効果 を実現できました。

機能のアップグレード

買収側企業が 誤った形でタックイン(組み込み) を行ってしまい、後になってより劇的な 移行の必要性に気付くことはよくあることです。 組織同士は似ているものの、 技術的に大きな変化が買収側企業に もたらされる場合には、両方の組織を 変える必要があります。合併後の組織 は、最高の製品を提供できる「ベストオブブリード(最善の組み合わせ)」 のシステム、プロセス、テクノロジーを選択する 必要があります。

新たなインスタンス

買収側企業と被買収企業の間に 互換性がない場合、PIC部門を 完全に統合する 動機付けが弱まる可能性があります。製品部門と テクノロジー部門が別々の運用モデル を維持すれば、エンジニアリング人材とモチベーションの混乱 を最小限に抑え、 主要なイニシアチブに集中することができます。ディールの 価値の重要な要素を損なう可能性 があるため、コスト効率は 選択的かつ慎重に追求する必要があります。

新たなアーキテクチャ

業務上の 違いが大きく、買収側企業の製品やテクノロジーの 変化がディールの価値 に内在している場合、両方の 組織で組織的変革 が必要になる可能性があります。このような ディールでは、 PIC部門の今後の経営モデルを 一から、そしてディールの目標である 最終的な戦略的製品と テクノロジーを想定して設計する必要があります。 

この枠組みは単純に 見えるかもしれません。しかし、買収側企業が PICの経営モデルに関する困難な決定を 避けたり、既存グループへの 将来の影響を 過小評価したり、両社のオペレーション上の差異について 誤った判断をするケースが実際に発生しています。オペレーション上の違いが 大きい場合ですら、買収側企業はあらゆる買収先を自社に 「組み込む」べきだと考えることが多くあります。その結果、 ディールの根拠が損なわれてしまったり、 「新たなインスタンス」を 追求するものの何の相乗効果もなかったと 後々気付いたりすることになります。そして多くの場合、買収側企業は自社のPIC部門の 変更に消極的であるため、意図的なディスラプションのための 最大のチャンスを見逃してしまいます。

よくある潜在的な落とし穴を回避する

テクノロジー企業を買収する企業は、たとえ長期的な経営モデルを目指すとしても、「今ここ」を管理し、多くのディールを遅らせる、または価値を損なうリスクを軽減するよう準備を固める必要があります。

重要な人材の離職

ディールは従業員に不確実性をもたらす可能性があります。そして、重要なエンジニアリング人材を失うことは、最速かつ最も確実に価値が損なわれる原因の一つです。 PIC部門を統合することにより、統合された組織内でチャンスとリソースが拡大するため、エンジニアリング担当者にプラス面を示して人材の定着を促すことができます。

進行中のイニシアチブの混乱

企業がある時点で各種イニシアチブに費やせる資本、時間、経営陣の指揮には限りがあります。買収側企業と被買収企業における進行中の製品およびテクノロジープログラムは、買収と並行して管理する必要があります。そして取引の本質上、それぞれについてコスト、スピード、生み出される価値のトレードオフが必要となります。経営幹部はポートフォリオ全体を検討し、企業戦略を最大限有効に実施するための変化のロードマップを決定しなくてはなりません。

エコシステムの混乱

内部の関係もまた重要です。つまり、サプライヤー、テクノロジープロバイダー、顧客、パートナーとの関係が成功への鍵を握るのです。

慎重なステークホルダー分析と変更管理手順により、価値を損ないかねない取引関係の混乱を最小限に抑えることができます。

サマリー

テクノロジーの変化のペースが急加速するにつれて、適切な製品の統合はますます関心を集めるようになります。テクノロジー企業にとっては、他の統合作業に適用しているのと同じ、厳密で可視性の高いプログラム管理を製品のイノベーションと商品化に適用することが有効でしょう。こうした企業は困難な組織的課題に正面から取り組み、価値の創出に熱心に取り組む必要があります。

この記事について

執筆者

EY Global

複数の強みや専門性を兼ね備えるプロフェッショナル集団