7. 増え続ける長期的価値向上要因のリストに社会問題を加える
以前から、テクノロジー企業は環境サステナビリティ活動において主導的な役割を担ってきました。それは、厳格な情報開示基準や二酸化炭素(CO2)排出量ゼロを達成するという公約からも明らかです。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、テクノロジー企業は社会との関わりを強めています。その一方で、2020年に噴出した社会問題や人種問題により、多くのテクノロジー企業はこれまでは沈黙を守ることができたこれら問題に対し、その関与を強く求められていることを実感することとなりました。今後数年間、特に人工知能(AI)、ニューラルアルゴリズム、顔認証の隆盛に伴い、自社の立場を表明せねばならない問題が増えていくでしょう。それに対応するための長期的価値という枠組みは、顧客や従業員などのステークホルダーと信頼関係を構築し、信用とエンゲージメントを高めていく中での指針となるはずです。
8. エコシステムの変化に対応する
新たなテクノロジーの導入が業界を問わず急拡大しています。IDCは、2022年までに世界のGDPの65%がデジタル分野から生み出されると予想しています。医療部門における患者のリモートモニタリングや自動車業界における先進運転支援システムなど、最新のインダストリーアプリケーションの開発と普及には、業界からのインプットとさまざまな技術の融合が必要です。テクノロジー企業は、こうした新たなエコシステムにおいて主導的な役割を担うことになるでしょう。単にイネーブラーとしての役割を果たすだけではなく、ソリューションを形にし、設計するための取り組みを先頭に立って進めることができます。そのためには、業界のパートナーと協力して共通の市場参入アプローチを採らなければなりません。周辺業界のエコシステムの管理と構築に積極的に取り組むとともに、コラボレーションと共同イノベーションを促進する必要があります。
9. 研究開発の実効性を高める
テクノロジーセクターにとってイノベーションは不可欠ですが、技術を進歩させることは難しくなり、今まで以上に多くの資金が必要となっています。例えば半導体の場合、世代が上がるごとに、設計費用が飛躍的に上昇します。ソフトウエアとソリューションについても、データの密度が高くなり、アルゴリズムが複雑化したことで、イノベーションコストが高騰しました。必要なツールを取り入れ、オープンソーステクノロジーを活用し、さまざまな国や地域のメリットを考慮し、研究開発(R&D)資金を効果的かつ効率的に使うことが求められます。リターンを生みだすことのできるプロジェクトに投資する明確なメカニズムが必要です。
10. M&Aで成長を再加速させる
テクノロジーセクターは成長のけん引役ですが、ここ数年間、その収益モメンタムは若干低下してきました。その一方で、セクター全体の株式評価は高騰しています。この相反する状況により、成長を示し続けることが今まで以上に重視されています。しかし、多くのテクノロジー企業にとってオーガニックな成⻑が難しくなっていることから、M&Aは成長を遂げる手段としてその魅力を増していくでしょう。買収は、新たな製品、市場、ソリューションを獲得して収益の拡大を再び加速させる一助となり、非中核事業の売却は、斜陽事業や成長の鈍った事業から撤退し、事業ポートフォリオを再構築する手だてとなるでしょう。