7 分 2021年2月5日
Woman watching rainbow over icelandic landscape

2021年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10

執筆者
Barak Ravid

EY-Parthenon Global Technology, Media and Telecommunications Co-Head

Energized by all things at the intersection of technology and strategy. Passionate about the strength of diverse and inclusive teams. Love sailing, soccer and snowboarding. Father of three girls.

Stephan van Rhee

EY Global Technology Sector Analyst

Sector analyst with a keen interest in technology and innovation. News addict. Sports enthusiast.

EY Japanの窓口

EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコムセクターコンサルティングリーダー パートナー

「顧客価値」を引き出すべくチームをリード。愛する妻と娘がいる。

7 分 2021年2月5日

2021年は、テクノロジー企業の経営幹部が事業増強のために活用できる大きなビジネスオポチュニティが生まれるでしょう。

要点
  • パンデミックを受け入れた社会が成り立ちつつある今、市場では新たな機会とリスクが生まれている。
  • ビジネスモデルを変えることで、テクノロジー企業は将来の市場により的確に対応できる。
  • 業務の変革が、迅速なデリバリーと顧客との関係構築を後押しする。
Local Perspective IconEY Japanの視点

日本のテクノロジー企業は、企業価値、イノベーションにおいて米中のテクノジー企業に差をつけられています。この状況を打破するためにデジタルトランスフォーメーションを取り入れたビジネスモデルの構築が必要となるのですが、今までは現状維持バイアスにより「変化」を先送りにしてきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症により生活様式が一気にデジタル化したことにより、日本のテクノロジー企業は「変化」をせざる得ない状況に追い込まれています。

ネットを通じた商品の購入はもちろん、これまで「不可能」と思われていたリモートワークも普及し、個人も変わり社会も変わりました。この「外圧」を好機と捉え、変化に対応しビジネスモデルをトランスフォーメーションできた企業だけが生き残っていきます。今後、現代の不確実性の高い世界に対応できる組織の構築が中長期的に必要となるでしょう。

 

EY Japanの窓口

尾山 哲夫
EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコムセクターコンサルティングリーダー パートナー

迅速かつ果断にパンデミックに対応したテクノロジーセクターにとって、2020年は好業績を達成した1年となりました。人々が在宅勤務に移行した際は経済全体を見事にサポートし、販売モデルとデリバリーモデルを変え、非常に短期間でサプライチェーンを再編し、デジタルトランスフォーメーションを加速しました。多くのテクノロジー企業が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で生まれた新たな機会をいち早く捉えた反面、市場のボラティリティや、政府によるテクノロジー市場の規制強化などのリスクも生まれており、こうしたリスクを軽減する必要がありました。

2021年のテクノロジー企業は、クライアントとの対話を通してこれまで最も得意としてきたイノベーションと成長に継続的に取り組むとともに、以下に挙げる10の機会を捉える必要があると私たちは考えます。

1. 複雑さを排除し、可能な限り迅速に動く

テクノロジー企業がM&Aなど多様な手法で力強い成長に注力して10年がたちますが、今回のパンデミックによって、多くの企業がそれぞれのレベルで組織の複雑さを実感することになりました。あまりにもその組織構造が複雑なため、市場の変化に迅速に対応できていないケースも見受けられます。組織の簡素化、レガシー要素と管理職の削減、買収した企業の効果的な統合など、行動を起こす必要があります。一部のテクノロジー企業では、実行のスピードを上げ、競争力維持のためにリセットが必要です。経営モデルを最適化し、「目的に合った」テクノロジー、スキル、ケイパビリティ、体制、プロセスを中心に据えた組織作りが必要です。

2. 「全てを賭け」て、継続的な収益が得られる消費型のビジネスモデルに転換する

消費型のビジネスモデルに転換することで、投資家からより多くの資金を調達できるだけでなく、継続的に収益を上げられるようになり、顧客とより緊密な関係を構築する機会も生まれます。また、クロスセリングとアップセリングのチャンスも広がります。これはソフトウエアに限った話ではありません。消費型のビジネスから生まれる収益は2024年までに収益全体の50%を超えることが予想されますが、これにはサービスやハードウエアも含まれています。一方、このようなビジネスモデルの転換には、中核的な部門全体で主要なビジネスプロセス、インセンティブ、業績指標を大幅に見直す必要があることを、多くのテクノロジー企業は認識しています。トップクラスのテクノロジー企業は、変革を生む取り組みとしてこうしたビジネスモデルの導入を優先的に進めていますが、十分な成果を上げられずに苦戦している企業もあります。

3. サプライチェーンを強化して、事業の安定を図る

2020年は、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとした世界的なサプライチェーンの混乱、米中間を中心とした貿易摩擦、段階的な関税引き上げや貿易規制強化により、市場のボラティリティと地政学的な不確実性が上昇し続けました。サプライチェーンを持つテクノロジー企業は引き続き既存ベンダーと潜在的なリスクを慎重に見直し、製造と流通の拠点を再検討する必要があります。調達を一元化する戦略は可能な限り見直すべきであり、事業を展開している地域のリスクを比較検討しなければなりません。自動化やデジタルツインを含め、イネーブリングテクノロジー(実現技術)の活用がディスラプションのリスクを軽減する可能性があります。

4. テレワーク環境において人材を管理する

かねてから、人材の充実はテクノロジー企業の大きな関心事でしたが、今回のパンデミックで、優秀な人材の確保に対する企業の考え方にパラダイムシフトが起きています。テレワークでの協働が実現したことで、人材の選択肢が広がりました。しかし、テレワークという環境で人材を誘致し定着させるためには、文化の構築を続けながら、出社と在宅勤務の割合やテレワーク従業員のエンゲージメントをいかに維持するかなど、従業員に対する価値提案を再検討する必要があります。確実な解決策などありません。視野を広げ、会社のニーズに合わせると同時に働き方の改革という従業員の期待にも応える包括的な価値提案を構築することが求められます。

5. 複雑さを増すITアーキテクチャのセキュリティを管理する

在宅勤務への移行を即時に進める必要のあった当初、重点が置かれたのはセキュリティではなく、全員をつなげることでした。アクセスポイントが急増し、さまざまなデバイスやリモートアクセスが可能なアプリケーションが利用されるようになったことで、現在、企業のネットワークは一層複雑で脆弱(ぜいじゃく)な状態になっています。今後成功を収めるためにはこれまでの考え方を変え、セキュリティの対象と範囲だけでなく、このようなアクセスポイントの急激な増加によって生じた幅広いネットワークセキュリティのニーズも考慮することが必要です。

6. プライバシー対応の透明性を高め、顧客データの価値の最大化を図る

ユーザーと顧客のデータから生み出される価値を示す上で、広告主導型のビジネスモデルが引き続き中心的な役割を果たす中、その結果として生まれるユーザーや顧客との関係、それに伴うトレードオフに対する圧力が高まっています。自分のデータがどのように利用されるのか、ユーザーはより詳しく知りたいと考えています。EYが実施した調査では、消費者の54%が新型コロナウイルス感染症の拡大により、自分が提供する個人データへの意識が高まったと回答しました。規制当局も、データのセキュリティから顧客データの税務上の公正価値まで、幅広い問題に懸念を示しています。サービスプロバイダーがデータ戦略とデータの利用方法について透明性を確保できなければ、ユーザーと信頼関係を築くことはできません。規制当局の調査を受ける恐れもあります。プライバシー法令を順守する以上の対応をしているという期待感を生むことで、データを最大限に利用し、顧客との良好な関係を築き、その価値を無駄にしないことができます。

7. 増え続ける長期的価値向上要因のリストに社会問題を加える

以前から、テクノロジー企業は環境サステナビリティ活動において主導的な役割を担ってきました。それは、厳格な情報開示基準や二酸化炭素(CO2)排出量ゼロを達成するという公約からも明らかです。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、テクノロジー企業は社会との関わりを強めています。その一方で、2020年に噴出した社会問題や人種問題により、多くのテクノロジー企業はこれまでは沈黙を守ることができたこれら問題に対し、その関与を強く求められていることを実感することとなりました。今後数年間、特に人工知能(AI)、ニューラルアルゴリズム、顔認証の隆盛に伴い、自社の立場を表明せねばならない問題が増えていくでしょう。それに対応するための長期的価値という枠組みは、顧客や従業員などのステークホルダーと信頼関係を構築し、信用とエンゲージメントを高めていく中での指針となるはずです。

8. エコシステムの変化に対応する

新たなテクノロジーの導入が業界を問わず急拡大しています。IDCは、2022年までに世界のGDPの65%がデジタル分野から生み出されると予想しています。医療部門における患者のリモートモニタリングや自動車業界における先進運転支援システムなど、最新のインダストリーアプリケーションの開発と普及には、業界からのインプットとさまざまな技術の融合が必要です。テクノロジー企業は、こうした新たなエコシステムにおいて主導的な役割を担うことになるでしょう。単にイネーブラーとしての役割を果たすだけではなく、ソリューションを形にし、設計するための取り組みを先頭に立って進めることができます。そのためには、業界のパートナーと協力して共通の市場参入アプローチを採らなければなりません。周辺業界のエコシステムの管理と構築に積極的に取り組むとともに、コラボレーションと共同イノベーションを促進する必要があります。

9. 研究開発の実効性を高める

テクノロジーセクターにとってイノベーションは不可欠ですが、技術を進歩させることは難しくなり、今まで以上に多くの資金が必要となっています。例えば半導体の場合、世代が上がるごとに、設計費用が飛躍的に上昇します。ソフトウエアとソリューションについても、データの密度が高くなり、アルゴリズムが複雑化したことで、イノベーションコストが高騰しました。必要なツールを取り入れ、オープンソーステクノロジーを活用し、さまざまな国や地域のメリットを考慮し、研究開発(R&D)資金を効果的かつ効率的に使うことが求められます。リターンを生みだすことのできるプロジェクトに投資する明確なメカニズムが必要です。

10. M&Aで成長を再加速させる

テクノロジーセクターは成長のけん引役ですが、ここ数年間、その収益モメンタムは若干低下してきました。その一方で、セクター全体の株式評価は高騰しています。この相反する状況により、成長を示し続けることが今まで以上に重視されています。しかし、多くのテクノロジー企業にとってオーガニックな成⻑が難しくなっていることから、M&Aは成長を遂げる手段としてその魅力を増していくでしょう。買収は、新たな製品、市場、ソリューションを獲得して収益の拡大を再び加速させる一助となり、非中核事業の売却は、斜陽事業や成長の鈍った事業から撤退し、事業ポートフォリオを再構築する手だてとなるでしょう。

サマリー

ビジネスモデルを変え、業務の変革を進めることで、テクノロジー企業は新たな市場機会を捉えることができます。

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Barak Ravid

EY-Parthenon Global Technology, Media and Telecommunications Co-Head

Energized by all things at the intersection of technology and strategy. Passionate about the strength of diverse and inclusive teams. Love sailing, soccer and snowboarding. Father of three girls.

Stephan van Rhee

EY Global Technology Sector Analyst

Sector analyst with a keen interest in technology and innovation. News addict. Sports enthusiast.

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「顧客価値」を引き出すべくチームをリード。愛する妻と娘がいる。