変化への対応の加速は障害となるでしょうか、それとも機会を増やすでしょうか。 変化への対応の加速は障害となるでしょうか、それとも機会を増やすでしょうか。

執筆者
Ryan Munson

EY US Wealth and Asset Management Partner

Loves servicing the alternatives industry. A top-notch family man. Married to an EY alum with 3 children. Passionate about Buffalo Bills football.

Jun Li

EY Americas Wealth & Asset Management Co-leader and Ernst & Young LLP Financial Services Organization Tax Partner

Passionate about diversity and inclusiveness, mentoring and sponsorship. Loves beach vacations with family, relaxing with a good book and watching his young daughter win chess matches.

Natalie Deak Jaros

EY Americas Wealth & Asset Management Co-leader and WAM Assurance Leader

Passionate about servicing the industry and community. Celebrates D&I and promotes the recognition of high performing women in the industry. Loves spending time with her husband and two daughters.

Jessica Bloom

Partner, Wealth and Asset Management, Ernst & Young LLP

A problem solver, that aims to continuously drive positive change. Energized by finding practical and thoughtful solutions to complex problems. Loves new experiences and exploring with her family.

8 分 2020年11月6日

2020年版のGlobal Alternative Fund Survey(グローバルオルタナティブ投資調査)では、変動する期待を落ち着かせることで、業界が変化をコントロールしている実態が明らかになりました。

要点
  • 2020年に起きた混乱、具体的には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、労働環境、市場でのバリュエーション、戦略、提案内容が劇的に変化した。
  • 混乱の年ではあったものの、状況に応じて計画を立て、テクノロジーを活用し、優れたサービスを求め、レジリエンス(回復力)を維持した企業はスムーズに対応することができた。
  • 1年にわたる混乱の中、オルタナティブ投資の市場は、テクノロジーへの投資と存在意義を維持する方法として変化を受け入れたチームの恩恵を受けた。

2020年はいつもとは違う年になったという点に異論を唱える人は、世界的に見てもまずいないでしょう。金融市場や経済指標については、今年の滑り出しは順調でした。多くのアセットクラスと指数が、年初から2月中旬にかけて上昇しています。ところが、3月初旬には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが認識され実感を伴うと、ほとんどの主要都市が大打撃を受けました。多くの市場では急ブレーキがかかって停止状態に陥り、近代史上最長の強気相場に終止符が打たれ、失業率が跳ね上がりました。

世界はたちまち極端に振れ、失業率は過去最低から過去最高となり、急速に伸びていたGDPから一転、多くの国や地域で国内生産が突如として停止しました。その結果、金融市場と世界経済は混乱に陥り、経営モデルにひずみが生じて課題を突き付けられました。レジリエンスが試され、そしてそれが報われる年へと早変わりしましたが、オルタナティブ投資の市場は粘り強く障害を乗り越え、機会をつかみました。

市場のボラティリティーと世界的な不確実性が多くの見通しに暗い影を落とす中で異彩を放っているのが、オルタナティブ投資のパフォーマンスです。特にプライベートエクイティ(PE)は群を抜いており、ファンドマネージャー(運用者)は期待通りかそれ以上のパフォーマンスを見せたと投資家の約8割が感じています。世界中の至る所、そしてあらゆる市場が混乱で揺れていたものの、投資家の間では、パンデミック下において、ファンドマネージャーのパフォーマンスは期待以上だったとの見方がほとんどです。

平均して、ほぼ全ての戦略が主要なベンチマークを大幅に上回りました。そのレジリエンスは高く、先を見越して市場の混乱に乗じることで機会をとらえながら、下降局面では資金を維持して自らの価値を示しました。

通常とは異なる状況が定着し、依然としてとどまっています。従来とは比べものにならないほど市場のボラティリティーが高まり、取引量が増え、「リモートワーク」という比較的新しい概念が強制されました。懸念事項は、対面での話し合い、関係性の維持・深化、新たな人材の面接・獲得に集中していました。ファンドマネージャーはクライアントサービスの提供を続けながら、先を見越した対応をとりました。

テクノロジー、自動化、アウトソーシングに期待をかけ導入を加速することで、オルタナティブファンドマネージャーは業務運営と報告に一貫性を持たせ、デジタル化を進めることができました。今回のパンデミックによりデジタルの普及が拡大しているとはいえ、ファンドマネージャーと投資家は、特にIR・マーケティング部門について一層のデジタル化を必要とし、求めています。

詳しくは第14号となるEY Global Alternative Fund Surveyをご覧ください。本号では、ヘッジファンドマネージャーやプライベートエクイティ・ファンドマネージャーの包括的視点のほか、アセットクラスだけでなく、オルタナティブ投資全体で広範な資産配分を行う機関投資家の見解も紹介しています。


            ジャングルを見下ろす女性(東南アジア)
(Chapter breaker)
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第1章

コロナ禍に直面する中でのオルタナティブファンドマネージャーのレジリエンス

何年も前からテクノロジーとアウトソーシングに投資をしてきたことで、 途切れることなく業務を続けることができました。

コロナ禍でのオルタナティブ投資のパフォーマンスは期待以上

投資家の間では、コロナ禍におけるファンドマネージャーのパフォーマンスは期待以上だったとの見方がほとんどです。特にプライベートエクイティに関しては、約8割が期待を上回るパフォーマンスだったと感じています。ヘッジファンドのパフォーマンスは戦略によりばらつきがありますが、平均して、ほぼ全てが主要なベンチマークを大幅に上回りました。主要な指数が15%~20%も低下した2020年初めでも、多くのヘッジファンドが1桁台の下げにとどまっています。ファンドは、機会をうかがいながら市場の混乱に乗じて動き、下降局面では資金を維持して自らの価値を示しました。

コロナ禍で市場が大混乱に陥る中でも、顧客にはおおむねオルタナティブ投資業界の「通常通り」のサービスを提供

投資家は全般的に、混乱の真っただ中でもファンドマネージャーは自分たちの問題に答える以上の対応をし、ビジネスとパフォーマンスに関する最新情報をより頻繁に提供してくれたと感じています。実際、この期間にファンドマネージャーがクライアントサービスのニーズを満たさなかったと感じた投資家はごく一部です。

自動化が最も進んでいない分野はマーケティングとIR

ファンドマネージャー(特にプライベートエクイティのファンドマネージャー)は、ほとんどの部門で、恐らくは必要以上に手作業が行われていることを認めています。ファンド会計とミドルオフィスは最も先進的な部門です。ファンドマネージャーは何年も前から、合理化によりタイムリーで正確な報告を実現するために資金を投じてきました。一方、マーケティングやIR部門は、手作業中心の体制のまま、ほとんど変わっていません。人間的な交流を図る対面での経験は必要ですが、その経験を充実させることができるのはテクノロジーと有意義な投資家向けの報告書です。

オルタナティブファンドマネージャーにとっては、テクノロジーに投資してクライアントのニーズをより一層満たす機会

ファンドマネージャーがマーケティングやIR部門の自動化は不十分だと指摘していることを踏まえると、投資家の大半が、ファンドマネージャーはデジタルインフラの拡充を図る必要があると述べていることも驚くに値しません。投資家の3分の2近くが、同分野への投資は今後の関係にとって有益であると考えています。投資家は、ヘッジファンドについては前進がみられると感じており、39%が非常に高度なデジタルインフラを備えていると回答しています。一方、プライベートエクイティファンドに関して同様の回答をした投資家は34%にとどまりました。


            丘の上で祈りの旗を掲げ、双眼鏡をのぞくカップル
(Chapter breaker)
2

第2章

資産配分と運用商品の提案

業界では引き続き商品・サービスのコンバージェンスと多様化がテーマであり、単一の戦略を提案するのは中小または ブティック(専門特化)型ファンドのマネージャーに限られています。

オルタナティブファンドマネージャーにとって資産の拡大は依然として最優先事項

プライベートエクイティのファンドマネージャー、ヘッジファンドマネージャーともに、最優先事項は3年連続で今回も資産の拡大でした。コストの上昇と手数料に対する圧力に対応するためには資産の拡大が不可欠であり、これは当然のことといえます。

投資家は大規模なオルタナティブ資産のポートフォリオを維持しているが、アセットクラス内でシフトが起きつつある

投資家によるオルタナティブ資産全体への配分はここ数年あまり変わっていません。オルタナティブ資産に配分される割合は、ポートフォリオ全体の20%から25%で推移していますが、その内訳は常に変化しています。

コロナ禍で、アクティブ運用への関心が高まる

変化が起きているのは、オルタナティブ商品内でのシフトだけではありません。ヘッジファンドマネージャーは、コロナ禍に端を発する市場のボラティリティーによりアクティブ運用への関心が著しく高まると予想しています。コロナ禍と、それに伴う市場のボラティリティーの影響で、アクティブ運用への投資家の関心が高まると予想するヘッジファンドマネージャーは、調査対象者の半数以上に上りました。この傾向は運用資産が100億ドルを超える大規模ヘッジファンドマネージャーでより顕著に表われ、75%以上が、コロナ禍によってアクティブ運用への関心が高まると回答しました。

オルタナティブファンドマネージャーは引き続きさまざまな商品を提供

EYのこれまでの調査結果では、中核分野以外にも提案内容を拡大したいという意欲をファンドマネージャーが持っていることが明らかになっていました。2020年の調査でも同様の結果が得られ、依然として、ヘッジファンドマネージャーとプライベートエクイティ・ファンドマネージャーの境界線があいまいになっている様子がうかがえます。


             マチュピチュにたたずむアジア人女性
(Chapter breaker)
3

第3章

環境・社会・ガバナンス(ESG)

2020年は、ビジネス・経済界でESGが大きな注目を集めた年としても記憶されることになるでしょう。

オルタナティブファンドマネージャーはESG商品の需要に追いついていない

今回も社会的責任投資が有望な成長分野であることが分かりました。現在、投資家の半数近くがESG商品に投資しています。ポートフォリオにESG商品を組み込んでいる投資家の数が、2019年からほぼ倍増した計算です。投資家はファンドマネージャーに委託するかどうかを決める際に、そのファンドマネージャーのESG方針を特に重視しています。ほぼ全ての投資家(88%)が、投資判断にどのようにESGを組み込んでいるかをファンドマネージャーに尋ねています。

ESG商品への投資を必要としている投資家が増加

ESG商品への投資を必要としている投資家の割合がこの1年で2倍近くに増えました。この数字は今後2年間でさらに倍増する見込みです。


            城壁の上を歩く女性
(Chapter breaker)
4

第4章

人材

人材の優先事項についての話は、もっぱらファンドマネージャーがトップクラスの金融プロフェッショナルを呼び込み、つなぎ止める方法についてでした。

ヘッジファンドマネージャーとプライベートエクイティ・ファンドマネージャーでは、人材管理のアプローチが大きく異なる

優秀な人材の雇用とつなぎ止めに関しては、直面する問題に共通点は多いものの、ヘッジファンドマネージャーとプライベートエクイティ・ファンドマネージャーでは、人材管理戦略に対するアプローチが大きく異なります。

調査対象のプライベートエクイティ・ファンドマネージャーの半数以上が、性的マイノリティと少数民族の登用を増やすことが最優先事項だと回答しました。一方、ヘッジファンドマネージャーにとっての最優先事項は、2020年も引き続き従業員の生産性向上です。

部分的なリモートワークがニューノーマルに

オルタナティブファンドマネージャーは、コロナ禍が収束して正常化した後でも、従業員の約3分の1がリモートワークを行うと予想しています。多くのファンドマネージャーがオフィススペースを縮小しており、リモートワーク専門のスタッフを置く計画だと回答した一方、今後ずっと交代出勤制にすることを決めたとの声も聞かれました。


             テントの横でノートパソコンに向かう女性
(Chapter breaker)
5

第5章

引き続きデータ、テクノロジー、自動化に注力

オルタナティブファンドマネージャーの成否を決めるのは、データとテクノロジーをうまく活用できるかどうかです。

投資家はヘッジファンドマネージャーの方がテクノロジーに精通していると評価

テクノロジーが進化し続け、コロナ禍で一段と不可欠な存在になる中、投資家はテクノロジーとデータを活用するファンドマネージャーの取り組みにまずまず満足しています。特にヘッジファンドには好意的な評価が示され、調査対象の投資家の半数以上が、ヘッジファンド業界は他の金融サービスと比べてテクノロジー面で優位に立っていると感じていました。この背景には、ヘッジファンドがデータとテクノロジーを迅速に導入していることがあります。主にポートフォリオの運用を支えるためですが、最近では、業務全体と投資家のエンゲージメントを評価するメカニズムとして導入されています。

業務における自動化の度合いに開きが見られる

投資家はファンドマネージャーのテクノロジーの導入に満足しているかもしれませんが、さまざまな部門の自動化となると、改善の余地があることは間違いありません。投資家やその他の関係者は、手作業は段階的になくすことができる、また、なくすべきだと考えています。社内で開発したものであれ、サービス事業者が提供するものであれ、テクノロジーの提案の進化によって、あらゆる戦略のファンドマネージャーがあらゆる業務分野を自動化できるようになりました。そのため、投資家から期待されるようになってきたデジタルインフラの整備に適切に取り組んでいる姿勢を示しながら、より効率的でタイムリーな処理と報告を実現できるようになります。

サマリー

いつ「通常の状態」が戻るのかは、時が経たないと分かりません。2020年の混乱で、レジリエンスと迅速な適応が、持続的な価値創造を推進する手段として変化を受け入れるという姿勢を強める上で絶大な効果を発揮することが証明されました。今では、そのいずれも定着しています。かつてはあまりにトリッキー、あるいはあまりに実験的だと見られていたものが、今では機会をつかむための新たな切り口とみなされるようになっています。

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Ryan Munson

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Loves servicing the alternatives industry. A top-notch family man. Married to an EY alum with 3 children. Passionate about Buffalo Bills football.

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Natalie Deak Jaros

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Passionate about servicing the industry and community. Celebrates D&I and promotes the recognition of high performing women in the industry. Loves spending time with her husband and two daughters.

Jessica Bloom

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A problem solver, that aims to continuously drive positive change. Energized by finding practical and thoughtful solutions to complex problems. Loves new experiences and exploring with her family.