4 分 2022年7月20日
BMXバイクで空中に飛び上がっている2人の若い女性(ヒーローイメージ)

危機に直面することでどのようにコラボレーションが生まれるのか

執筆者 Hywel Ball

EY UK&I Assurance Managing Partner and UK Audit Head, EY UK&I Regional Managing Partner and UK Chair-elect

A member of EY UK LLP Board. FTSE 100 audit partner. Father of three and Welsh rugby fan.

4 分 2022年7月20日
関連トピック 世界経済フォーラム

ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会を受けて、コラボレーションがサステナブルな未来を創る上で、いかに重要であるかを考察します。

要点
  • 世界は前例のない課題と深い分断に直面しており、その多くが英国および世界のビジネスに影響を与えている。
  • 広範囲に影響するこれらの課題は、政府、企業、市民社会の間に、より大きな協力が必要なことを示している。
  • 2020年以降初めて参加者が集うこととなったダボス会議は、サステナブルな未来の構築につながる機会を生む場となった。

世界経済フォーラム(WEF)が前回ダボスで開催された当時、世界は今とは全く異なる様相を呈していました。2020年1月時点では、私たちはまだ世界的なパンデミックを経験しておらず、また今日のウクライナをめぐる情勢もほとんど思いも寄らぬことでした。エネルギーや食料の価格上昇は一部で予見されていたかもしれませんが、ビジネスと社会への影響が議題の最重要項目に挙がることはありませんでした。今とは全く異なる状況だったのです。

しかし、2022年5月にようやくWEFの年次総会がダボスで開催され、参加者が実際に集まることができたということは、明るい見通しと希望を持つことにもつながります。それは、危機が人々を分断する一方で、団結させることもできるからです。例えば、気候変動対策に伴う数多くのタスクは、人々に恐れや絶望を抱かせる一方で、行動を喚起し、新たな形の協力を促しています。

コラボレーションの必要性は重要なテーマです。フォーラムではビジネスリーダーや非政府組織(NGO)、政治家との協議を通じて模索され、具体化されることが期待されます。

互いに支え合う

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は最も弱い立場に置かれている人々に過度に影響し、社会の分断を浮き彫りにしましたが、その一方で、私たちがこの社会でお互いにどれだけ支え合っているかということも明らかになりました。英国では、企業とその顧客、従業員、サプライヤー、また事業の場である地域社会が相互に支え合っていることが見えてきました。どの企業が積極的に行動を起こせるのか、どの企業がパーパスを持たず、またパーパスがあっても実現できていないのか、たちまち明らかになりました。

成功している企業はそのすべてのステークホルダーに貢献すべきだという私の長年の信念は間違っていなかったと、パンデミックを機に確信できました。企業はステークホルダーのために、またステークホルダーと協力して事業を行うことでこそ、社会や投資家がますます求めている長期的価値を提供できます。その意味で、WEFは1973年にステークホルダー資本主義の考えを擁護した最初の組織ですが、おそらく現在私たちが直面している危機をきっかけにそれを具体化することになります。

理論を実践する

経済界は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック後の回復を模索する中、サプライチェーンのボトルネック、労働力不足、ウクライナ情勢の影響にも直面しており、それぞれの課題が関わり合っていることは明らかです。

市場が変化し、新たなテクノロジーが実用化され、英国企業が直面している変化もかつてないほど大きくなっています。企業が、新たに提携する組織や、生き残るだけでなく繁栄するための力を求めるようになる中、コラボレーションの形は変化しています。

最大の課題と思われる気候変動対策において、いずれの指導者、企業、国も単独では成功できないことが明らかです。

そのため、サステナブルな未来を創るには、私たち全員で議論する必要があります。つまり、国境や部門を超え、国や業界をまたいで関わることが求められます。これには企業と政府のリーダーが再び一堂に会する必要があり、だからこそダボスで直接対面してつながりを持つことが何より大切だったのです。

自分の役割を果たす

他者との協力は、自ら行動を起こすところから始まります。なすべきことをなしてこそ、良いリーダーとして変化を実現できるのです。

ネットゼロ経済への移行には全体の努力が必要です。EYはそのために招集者の役割を果たしています。EYの気候変動対策ビジネスフォーラムでは、英国の大企業11社と将来有望な若手リーダーの一団を招き、ネットゼロへの具体的な道を切り開こうとしている企業が明確なアクションプランを作成できるよう支援しました。EYは北海移行協定で英国政府、石油・ガス業界、大手テクノロジー企業と協力していますが、そこでも、2030年までに炭素排出量を最大6,000万トン削減へと導き、サプライチェーン全体で最大40,000人の雇用を支援するという大きな役割を期待されています。

報道されるニュースの裏側で、私たちは共通基準の策定に取り組んでおり、グリーンウォッシングを防ぐとともに、環境に優しい未来への投資が必要だと資本市場を納得させられるよう尽力しています。繰り返しますが、それにはコラボレーションが必要です。このケースでは、専門サービス会社と協力し、国際ビジネス評議会のサステナビリティ基準を作成しています。

新しい基準が新たなプレッシャーにもつながっていることを認識し、EYは今年、企業のネットゼロ計画に第三者の精査および検証を求める英国の新たな規則に企業が対応できるよう、「EY Carbon」という新事業を始めました。英国とアイルランドでのコンサルティング事業を2025年までに2倍に拡大するという最新の発表もまた、そうした課題に対処する上でEYの支援を求めるクライアントの要望を意識したものです。

ダボス会議

EYは、課題への対応に取り組む英国の各企業への支援と同時に、セクターや国を超えて協力し、深刻な問題に共に立ち向かいます。そのような対応がこれまで以上に重要になっている今、ダボスで開催された会議は、広い世界に向け大舞台でそれを行動に移すチャンスとなりました。

サマリー

気候変動から世界的なパンデミック、ウクライナ情勢まで、かつてないほど利害関係が緊迫し、その影響を英国企業が感じている中で、2022年のダボス会議が行われました。こうした課題を解決するためには、実効性のあるコラボレーションや協力が最も効果的です。2020年以降初となった対面でのWEFフォーラムは、今後を築く最適な基盤となるはずです。

この記事について

執筆者 Hywel Ball

EY UK&I Assurance Managing Partner and UK Audit Head, EY UK&I Regional Managing Partner and UK Chair-elect

A member of EY UK LLP Board. FTSE 100 audit partner. Father of three and Welsh rugby fan.

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