3 分 2022年8月9日
温室でデジタルタブレットを使う農家の女性(ヒーローイメージ)

サステナビリティに関する報告基準の統一により、どのような進展があるのか

執筆者 Marie-Laure Delarue

EY Global Vice Chair – Assurance

マリー・ロール・ドラリュー / 変化の推進者。人材育成に情熱を注ぐ。イノベーションを促進。バイリンガル。ワイン好き。

EY Japanの窓口

EY Climate Change and Sustainability Services, Japan Regional Leader, APAC ESG & Sustainability Strategy Solution Leader

サステナビリティの分野で活躍。多様性に配慮し、プロフェッショナルとしての品位を持ちつつ、実務重視の姿勢を貫く。

3 分 2022年8月9日

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持続可能な経済に向けて、企業は公約を具体的な行動に移す必要があります。これには協調して取り組むことが重要な鍵となります。

要点
  • 持続可能な経済を目指すには、企業、政府、その他のステークホルダーがコラボレーションを通じ、協調し取り組むべきである。
  • この12カ月間で大きな進展があり、大企業は大きく前進している。
  • 企業はコミットメントの表明から明確な行動へとシフトする必要があり、共通の報告基準を策定する動きがこれを後押ししている。

持続可能な世界経済の実現には、協調して取り組む姿勢が必要です。市民、政府、規制当局、民間セクターなど、全員が協力する必要があります。この点において、企業はその役割を果たす準備ができていると言えるでしょう。この1年、大企業はコミットメントを強化し、約束を行動に移すために具体的な前進を遂げました。

昨年11月にスコットランドで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、新しく国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が設立され、サステナビリティに関する共通の報告基準の策定を進めることになりました。その目標は、財務報告に適用される規則と同様に厳格な、一連の統一規則を策定することです。

当時は、基準を策定することの重要性は十分に認識されていなかったかもしれません。報告についてはそれほど注目を集めるテーマではないからです。しかし、報告書を提出することは極めて重要です。特に気候変動問題に関して前進を図るには、こうした報告基準の作成が欠かせません。企業と投資家は自身が直面するリスク、すなわち洪水や嵐などの物理的リスクと、炭素排出量ネットゼロへの移行に伴う移行リスクの両方を認識する必要があります。これらのリスクを測定する必要がある上、投資家においては、業界内で、また異業種間で各企業がどのように比較されるのかを見極めなければなりません。

この情報を基に、企業はリスク軽減および機会活用の戦略を立てることができます。最後のポイントは気候変動の議論であまり取り沙汰されませんが、重要な点です。賢明な企業は、株主の富を築くと同時に環境に優しい世界の実現に貢献できるような、新たな事業が登場する可能性に気付くでしょう。民間セクターがエネルギー転換に資金と人材を投入すれば、まったく新しい産業が生まれる可能性があります。

しかしそのどれもが、新たな基準による共通の言語がなければ実現しません。その理由はこれまでの経緯を見れば分かります。企業はこれまで自主的に開示を進めてきましたが、その情報は必ずしも有用ではありませんでした。企業はいろいろな開示基準を選んで採用し、さまざまに解釈してきました。その結果、一貫性が失われ、誰に対しても満足のいくものではありませんでした。2021年度のコーポレートレポーティング調査(pdf、英語版のみ)および機関投資家を対象としたEY Global Institutional Investor Survey(pdf)によれば、企業と投資家は共に現状に不満を抱いています。またこれらの調査で、両者は、財務報告に適用される枠組みと同様に一貫した強制的なESG基準を求めていることが分かりました。

次世代の基準の採用は、それほど遠い未来ではないかもしれません。ISSBは3月に、開示要件に関する2つの提言、すなわち全般的なサステナビリティに関する提言と、気候変動に関する提言を公表しました。メンバーは数カ月かけてフィードバックを行います。ISSBはフィードバックの内容を検討し、年末までに最終規則を決定する予定です。

迅速な決定が待ち望まれると同時に、強く求められています。2月に公表されたレポートでは、世界の人口の半数が危険な気候変動の影響にすでにさらされていると、国連が招集した気候変動対策委員会が警告しています。委員会は、地球温暖化を抑えるため、すぐに行動を起こさなければ、世界は破壊的な嵐、深刻な猛暑、海面の上昇、穀物収量の低下に見舞われると述べています。

地球温暖化抑止に必要なエネルギー転換は数十年かかるため、進捗を予測することは難しいです。ウクライナ情勢により、一時的に化石燃料の供給と価格への注目が集まっていますが、これが環境に優しいテクノロジーを阻害するのか促進するのかは、予測できません。

ただ一つはっきりしているのは、経済界が同じテーブルに着き、サステナビリティを進める用意があるということです。今年の11月にエジプトで開催されるCOP27では、企業がどの程度真剣に公約を具体的な行動に移そうとしているかを示す機会になるでしょう。話し合いの時は終わり、行動する時が来ているのです。民間セクターに重要な役割を果たす準備ができていることも確かです。企業は統一開示基準の策定によって、ようやく共通の言語で共通の課題に取り組むことができるでしょう。

 

サマリー

持続可能な世界経済を構築するには、国を越えたコラボレーションが必要です。市民、政府、規制当局、民間セクターなど、全員が協力する必要があります。この1年、企業はコミットメントを強化し、実際に前進を遂げました。来るCOP27で、企業は実践へのコミットメントを示すことになりますが、統一基準の策定により、共通の課題に取り組みやすくなるでしょう。

この記事について

執筆者 Marie-Laure Delarue

EY Global Vice Chair – Assurance

マリー・ロール・ドラリュー / 変化の推進者。人材育成に情熱を注ぐ。イノベーションを促進。バイリンガル。ワイン好き。

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サステナビリティの分野で活躍。多様性に配慮し、プロフェッショナルとしての品位を持ちつつ、実務重視の姿勢を貫く。

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