5 分 2019.03.28
解き放たれる

ファミリーエンタープライズが変化を有効活用するには?

5 分 2019.03.28

デジタル化や地政学的情勢から生じるディスラプション(創造的破壊)に対処する上で、ファミリーエンタープライズは有利です。

ディスラプションのペースが速くなり、規制環境が変化し、世界経済が絶えず変化している昨今、企業にとってはやりがいがあるとはいえ、経営は難しい時代になっています。しかし、ファミリーエンタープライズは少なからず優位であるといえます。特に、原点である家族の強い絆を足掛かりとして、すでに何世代にもわたって成功し続けてきたビジネスには特に有利だからです。

そうした息の長い功績をたたえるため、私たちは毎年、旧来の型を破るイノベーターであり、たいていは市場リーダーとなったファミリーエンタープライズや顕著な功績を挙げた人たちを「EY Family Business Award of Excellence」で表彰しています。受賞者は、今日直面する問題に目覚ましいアプローチで取り組まれた方々です。

私たちは変化がもたらす問題を掘り下げる機会に恵まれたほか、EYのワールド アントレプレナー・オブ・ザ・イヤーフォーラム™2018でファミリーエンタープライズの経験の一部として他の点にも踏み込むことができました。このフォーラムでは、ファミリーエンタープライズのリーダー200人以上が集まり、加速する変化の影響について話し合い、デジタル化、地政学的情勢、次世代について意見を交わしました。

1.デジタル化に取締役会を巻き込む

急速に進化するテクノロジーは、ファミリーエンタープライズにとって天の恵みであり、新しい市場への参入、新規機会の活用、新製品の開発が可能になっています。端的に言えば、デジタル化は引き続きビジネス環境を変えながら急速に進んでいます。ファミリーエンタープライズが前進するには、取締役会が新しいデジタル環境を受け入れなければなりません。

「取締役会はデジタルの影響を理解し、その上で自社の戦略を見直し組織を再編成しなければなりません」と、INSEADのLudo Van der Heyden教授は指摘します。DQ&Aインターナショナルの創業者Heleen Dura van Oord氏も同じ意見です。周囲に聡明な人々をそろえ、デジタルを取り込むように自分自身を鼓舞することです」

データを制する者が未来を制する。

Peter Rejler

President and CEO, Rejlers AB

 

ファミリーエンタープライズがデジタルで自社を再構築する際にカギを握るのがビッグデータです。「データを制する者が未来を制する」と言うのは、Rejlers ABの社長兼CEO、Peter Rejler氏です。 Van der Heyden教授の「実店舗とオンライン店舗をどのように融合させますか」という問いに、デジタル化への適合でうまくバランスを取ることが重要であると力説しました。

総合的に見れば、デジタル化はファミリーエンタープライズにとってとてつもない機会になると、Dura van Oord氏は言います。「デジタル化は、顧客ニーズに応える以外の何物でもありません。すでにある価値にテクノロジーを上乗せすることなのです」

その機会を取り込むには、コラボレーションがカギになると、IOTA(アイオタ)の共同創設者、Dominik Schiener氏は考えています。「2018年はコンバージェンス(集合・収れん)の年に他なりません。私たちは集い、イノベーションを共有し、連携する必要があります」と、同氏は語りました。

2.地政学的戦略を全社的な戦略とする

デジタル化は膨大な機会をもたらしますが、現在の地政学的環境にはさまざまなリスクが潜んでいます。世界の既成勢力が揺らぎ、同時多発的に起きる危機がサプライチェーンや顧客、家族自身に影響を及ぼす中、ファミリーエンタープライズはかじ取りをしながら進んでいかなければなりません。

「地政学的戦略は、全社的な戦略の一部であるべきです」と、EYのGeostrategic Business Group Deputy LeaderのCherie Faiellaは言います。Cherie Faiellaは、現状を分析し、将来的な事業を検討してシナリオプランニングを行うことを企業に推奨しています。ファミリーエンタープライズが事業拡大を推進するために海外市場に力を入れる中、EYグロースバロメーター(The EY Growth Barometer)調査はシナリオプランニングが特に重要だとしています。

民主主義は脆(もろ)く、社会契約はさまざまな点で傷ついています。

Alex Krijger

Founder and Managing Partner, Krijger & Partners

 

「シナリオプランニングは事業規模を拡大することができます」と、Teneo Intelligenceの共同社長、Kevin Kajiwara氏は指摘しています。さらに、世代を通して考えるファミリーエンタープライズは、四半期単位で対応を迫られている上場企業よりも長期的に見て実を結ぶことが多いため、ファミリーエンタープライズには優位性があります」とも付け加えています。

Krijger & Partnersの創業者兼マネージングパートナーのAlex Krijger氏は、「突拍子もないことを考えるべきです」と企業のリーダーに助言しています。シナリオを事業戦略に織り込む際には、できる限り広範なデータソースから多種多様なデータを使用すべきだと言います。

変わりやすい米国大統領の言動を見ても、短期間のうちにどれほど大きな変化が起きているかが明らかです。 エラスムス大学のJan Peter Balkenende教授は、「米国にはかつて、党派間で一致した外交政策がありました」と話した上で、貿易戦争やナショナリズムの台頭を背景に米国主導によって維持されてきた平和が揺らいでいるように見える中、欧州のリーダーたちに指導力をもっと発揮するように求めました。

「欧州には新しい使命が必要です」と、Krijger氏は述べています。 「民主主義は脆(もろ)く、社会契約はさまざまな点で傷ついています」

Balkenende 教授は、欧州、そしてファミリーエンタープライズは、経済協力開発機構(OECD)の持続可能な開発目標と共鳴するような建設的なアジェンダを追求すべきと指摘します。最優先すべきは、気候変動への対応、循環型経済の追求、道義的な目標の達成です。

3.次世代を未来の構築へと導く

そうした目標は、ファミリーエンタープライズを継ぐ次の世代の継承者にとって特に重要です。彼らはすでにそれぞれの会社に貢献し、将来は多角化や共通の目的を追求するためにさらに多くの貢献が求められます。例えば、向こう30年間で世代交代を迎えるファミリーエンタープライズは総額6兆ドルに上ります。

ドラマ「ダウントン・アビー」のロケ地ともなった先祖伝来の邸宅、ハイクレア城を一族で所有するシアーシャ・ハーバート伯爵令嬢は、ファミリーエンタープライズの多角化に積極的に関わっています。「私たちはミレニアル世代との関わり方について、新しい方法を模索しています。モダンで世界的なブランドと伝統との間でバランスを取ろうとしています」

私たちは、モダンで世界的なブランドと伝統との間でバランスを取ろうとしています。

シアーシャ・ハーバート伯爵令嬢

DOBファミリーオフィスのFrank Tobé氏は、ファミリーエンタープライズには新しい世界で展開する事業の方向性をもう一度調整することが求められていると言います。

サイード・ビジネス・スクールのBridget Kustin博士によれば、野心と大望とアクションを結び付けることが極めて重要であると指摘しています。ファミリーエンタープライズは、儀式やしきたりによって自社について多くを学習できるので、それらには意味があります、と同氏は付け加えます。「儀式やしきたりによって、バラバラの個人が一つの集合体の一員であることを自覚できるのです」

EY Global Next Generation LeaderであるLauri Oinaala氏は、次の世代のメンバーにとっても目的意識が重要と語っています。「事業経営には目的がなければなりません。目的があって初めて、マイルストーンを設定できます。ファミリーエンタープライズの一員として、どこに向かっているかを理解することが重要です」

サマリー

急速に進むデジタル化、予測不可能な地政学的情勢から次世代に備えるための対策に至るまで、優れたファミリーエンタープライズはあらゆる面の課題に対処すべくまい進しています。

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