プライベートエクイティは、デジタルエコノミーで成功するための人材を育成できるか。 プライベートエクイティは、デジタルエコノミーで成功するための人材を育成できるか。

創立者が高齢化し、デジタル化が加速する中で、プライベートエクイティは、優秀な人材を呼び込み、維持しなければなりません。

プライベートエクイティ(PE)は世界経済のエンジンとして確固たる地位を築いてはいますが、一番古い会社ですら創立から数十年しかたっていません。そしてその多くは創立者がまだ現職です。しかし、古参の引退が近づき、そろそろ支配権を渡すときがやってきました。

PEの今後のあり方について私たちが作成したリポート「How can private equity transform into positive equity?(プライベートエクイティがポジティブエクイティ(プラスの資産価値)に変身するためには)」は、このような環境の中での後継者育成計画は、文化とダイナミズムを維持すると同時に、ビジネスの新しい現実に対応すること、例えばデジタルスキルのギャップを埋めることが必要だと指摘しています。

リーダーのバトンタッチ

私たちのリポートの中で、TPGの会長兼創業パートナー、David Bounderman氏は次のように述べています。「PE業界はいまだに個人の要素が非常に強く、あまり組織化が進んでいるとは言えません。大手の多くは現在も創立者が経営しています。時間の経過とともに世代交代が必要になるでしょう」 一部のPE会社は、従来創立者の人格の延長線状で活動しており、ビジネスもインベスター・リレーションズも創立者個人と密接に結びついています。

これらの会社は、ビジョンを立てる創立者なしでどうすれば生き残れるのでしょうか。PE会社にとって重要なのは、最も多様で行動的な人材を呼び込めるかどうかです。しかし同時に、事業を確実に継続させ、信頼を維持するためには、それらの新規参入者が会社の重要な目的と文化を理解する必要があります。

人材に報いる

人材を維持する上での一つの大きな課題は適正な報酬の提供です。私たちのリポートの中で、ハーバード・ビジネススクールのJosh Lerner教授は次のように指摘しています。「企業によってかなりの不平等が存在することがわかりました。一般に大手の場合、創業者の報酬は平均的なシニアパートナーの2倍以上です。

その結果、人材が定着せず、離職率が上昇します。Lerner教授は次のように説明します。「不平等感が大きい企業ほど人材が定着しない傾向にあります。高実績を上げているにもかかわらず持ち株比率の低いパートナーは、当然のことながらためらうことなく辞めます。シニアパートナーを失えば、最終的にその企業は資金調達能力で同業他社に後れを取ることになります。

高実績者だけでなく公平に報いる報酬制度の構築が、次世代の優秀な人材を引き付け、維持するための鍵になるでしょう。

ビジネスモデルに起きたディスラプション

さらに、PE界のリーダーになりうる次世代の人材が特定された際に、企業は多様性だけでなく、特にテクノロジーに関して専門性を持った人材を求めることがますます重要になっています。本リポートへの回答者の多くが、このスキルギャップを解消することが、PE会社が今後生き残る上で非常に重要だと主張します。

カーライル・グループの共同創立者で共同CEOのDavid Rubenstein氏は次のように話しています。「ディスラプションの機が熟した金融サービスの分野に目を向けるとすれば、こういうことが言えるでしょう。私たちは基本的に40~50年前と同じビジネスモデルを使っているということです。

ディスラプションの機が熟した金融サービスの分野に目を向けるとすれば、こういうことが言えるでしょう。私たちは基本的に40~50年前と同じビジネスモデルを使っているということです。
David Rubenstein
カーライル・グループ 共同創立者 共同CEO

Rubenstein氏は、私たちのリポートの中で、この新しい人材はおそらく若い世代から出てくると予想し、次のように話しています。最終的には、おそらく20代か30代の人たちが、より優れたものを考え出すでしょう。そして、彼らがそれを思いついたとき、おそらく業界にトランスフォメーションが起きます。

私たちのリポートの中で、CPPIBのプライベート・インベストメント担当グローバル・ヘッドのShane Feeley氏は、「当社のポートフォリオにあるほぼ全ての企業で、テクノロジーによるディスラプションが起きています」と述べています。PEは、成長加速や価値向上の可能性がある分野の発見に特に力を入れています。従って、このディスラプションが持つ性質を理解することが肝要です。そしてそれは、デジタルと先端技術を理解し、潜在的ユニコーン企業とどこにでもある企業の違いを見抜ける人材の獲得を意味するようになるでしょう。

デジタル的思考の必要性

多くのセクターと同様に、これはPE会社が生き延びて繁栄するためには、デジタル的思考を持たなければならないことを意味します。

EY Americas Digital Strategy LeaderのGlenn Englerは次のように指摘します。「私たちがリポートの中でインタビューしたリーダーの皆さんは、こうした状況に対処するということは、デジタルに精通した人材を取り入れることだと言及しています。ところが、デジタルディスラプションについては何年も前から警告されていたにもかかわらず、多くのPE会社は最高デジタル責任者(CDO)を置いていません。いまだにITとマーケティングに責任を委ねているケースも多く見られます。デジタルディスラプションがポートフォリオ企業に与えうる影響は、多くのPE会社の認識を大きく上回ると考えられます。

PE会社がこの難題に対処し、デジタル時代がもたらすチャンスを大いに生かすためには、焦点を絞ったデジタル戦略が立てられる新世代のCDOが必要です。これらの戦略は二つの重要なスキルセットに重点を置く必要があります。

  1. 将来性を評価する:PE会社は、時代を先取りして価値を評価することで成り立っています。つまり、新しいテクノロジーの潜在能力を本当の意味で理解できる、デジタルにたけた人材が必要だということです。私たちのリポートの中でBonderman氏は次のように述べています。「それは電気自動車などに投資するといったことです。このビジネスを理解するためにはデジタルに明るくなければなりません。
  2. 価値を高める:PE会社は同時に、投資先の企業が事業効率を高められるように後押しすることで利益を得ます。スタートアップ企業が記録的な速さで価値評価を大きく伸ばし、既存企業を脅かす、ハイペースなデジタルの世界において、これは、新しいスタートアップ企業の脅威の前に効率的であり続けるためのコストカットという面でも、これらの脅威の先を見越すために重点分野を特定し、ビジネスモデルを立案するという面でも適材が必要だということでもあります。(ビジネスモデルの立案は多くのスタートアップ企業がまだ苦労している分野です。
    デジタルディスラプションの真っただ中にあって、多くの企業で古参リーダーの交代が予想されるPE業界は、次世代の人材を取り入れて斬新なアイデアを捉え、予想外の成功への道筋を発見できる独自のポジションにあります。

サマリー

PE会社がリーダー後継計画を開始しました。新しい成長の道筋をつくる上で、デジタルに詳しい人材の活用が重要な役割を果たすでしょう。

この記事について

執筆者 EY Global

複数の強みや専門性を兼ね備えるプロフェッショナル集団