2022年1月31日
アフターコロナを見据えた財務経理機能の高度化 〜BlackLineを利用したトランスフォーメーション〜

アフターコロナを見据えた財務経理機能の高度化 〜BlackLineを利用したトランスフォーメーション〜

執筆者 EY 新日本有限責任監査法人

グローバルな経済社会の円滑な発展に貢献する監査法人

Ernst & Young ShinNihon LLC.

2022年1月31日

新型コロナウイルス感染症の影響下において、経理部門における課題やデジタルツールを用いた取組みについて関心が高まっています。本稿では、近年注目が高まっているクラウドソリューションBlackLineに着目し、経理高度化に資する各種機能やモデルケース、導入プロジェクトの留意点について解説します。

本稿の執筆者

EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部 公認会計士 原 幹夫

財務会計アドバイザリー(FAAS)事業部パートナー。当法人におけるBlackLineソリューションリーダー。

EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部 公認会計士 山田美由紀

BlackLine導入支援プロジェクトのエンゲージメントマネージャーを担当。
BlackLine Core認定者。

EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部 米国公認会計士 山西雄一郎

BlackLine導入支援プロジェクトにコアメンバーとして従事。
BlackLine Core認定者。

要点
  • 企業を取り巻く環境の変化や不確実性の高まりによって、経理部門に求められる役割が「スコアキーパー」から「ビジネスパートナー」に変化してきました。
  • 機能シフトの基盤作りとして求められる経理高度化について、四つの観点(可視化・標準化・自動化・統制強化)に整理して説明します。
  • 近年注目が高まっているクラウドソリューションを活用した経理高度化について、各種機能やモデルケース、導入プロジェクトの留意点を解説します。

Ⅰ はじめに

企業を取り巻く環境に大きな変化が起きている昨今、その変化に対応するために経理部門の役割も拡張が求められています。これまでの経理部門は、取引を正しく記帳する実務家としての役割(スコアキーパー)が中心でした。今後、不確実性に対応していく経理部門には、ビジネスの視点や経営者の視点を持ち、事業部門と共に意思決定に積極的に関与するビジネスパートナーとしての役割が求められてきます。その機能シフトの第一歩として、従来型のスコアキーパー的な役割における経理機能の高度化が必要となります。

Ⅱ 経理高度化における四つの観点

経理高度化として取組むべき内容は各社の状況によりますが、一般的には以下の四つの観点で整備していくことが考えられます。

① 可視化
進捗(ちょく)状況や業務負荷、作業手順の見える化

② 標準化
作業手順の標準化、SSC化・BPOの基盤整備

③ 自動化
作業の自動化・効率化、各種ERPとの連携

④ 統制強化
手作業の削減、共通プラットフォーム

経理高度化への取組みに際しては、単に現行業務をデジタル化するだけでは業務自体の提供価値が変わらないため、十分ではありません。業務のデジタル化と併せて、業務そのものの必要性や業務プロセスの見直しも進める必要があります。

Ⅲ BlackLineとは

BlackLineは、決算プロセス全体の効率化・自動化を支援するクラウド型決算プラットフォームであり、130カ国以上、3,700社以上の企業において導入実績(2021年12月時点)を有しています。決算プラットフォームとしての基盤を支える基本モジュールとさまざまなニーズに応じた拡張モジュールがあります。

1. 基本モジュール

  • タスク管理
    決算タスク、作業手順、進捗状況、実施結果、関連ドキュメントをリアルタイムで一元管理する
  • 勘定照合
    総勘定元帳と補助簿・根拠資料との照合作業において、照合テンプレートを用いた標準化や、データ連携機能を活用した自動化を行う
  • 差異分析
    勘定科目別に前年同期比などの差異情報を自動的に検出し、結果を記録・共有する

2. 拡張モジュール

  • マッチング
    債権データと入金データの消込など、二つ以上の明細データの突合せを自動化する
  • 仕訳入力
    勘定照合やマッチングの処理結果を踏まえた修正等について、仕訳を自動生成しERPへ連携する
  • Intercompany Hub(ICH)
    関係会社間取引に対応し、仕訳データの自動生成やネッティング処理を含む内部取引消去を行う

Ⅳ BlackLineを活用した経理高度化

BlackLineは早期導入が可能なSaaS(Software as a Service)であり、高度化をできる領域から素早く導入を進め(Small start)、導入効果を早期に刈り取り(Quick win)、その成功体験を周辺領域に拡げていく「経理高度化へのトランスフォーメーション」を可能にします。以下にモデルケースを紹介します(<図1>参照)。

図1 BlackLineを基盤にした経理高度化への道

まず、基本モジュールの導入により経理部門をデジタル化する基盤を整備します。Excel/手作業による作業履歴、レビューコメント、関連資料など一連の経理プロセスをタスク管理モジュールで可視化します。また、勘定照合や差異分析モジュールで、属人化・職人技となっている決算業務、統制業務を標準化します。

上記の基盤を整備しつつ、自動化・統制強化に進みます。マッチングモジュールは、Excel/手作業で実施している経理タスク(例:債権の入金消込や勘定明細の作成)を自動化し、仕訳入力モジュールは、仕訳の自動作成や周辺システムとのデータ連携に対応します。また、多くのリソースが割かれる関係会社間取引消去プロセスでは、ICHによりプロセスを効率化します。

それぞれの取組みは、細かい精度で高い品質が要求される作業を自動化し、ERPを含む社内周辺システムとの連携を向上させることで、内部統制の強化やSSC化/BPOに向けた準備にもつながります。

Ⅴ 高度化を可能にするBlackLine導入プロジェクト

経理高度化の実現には、既存プロセスのデジタル化だけではなく、プロセス自体の統廃合も検討できるプロジェクト体制が必要です。

また、一般的な「ウォーターフォール型」ではなく、プロトタイプの開発・検証を繰り返して完成度を高めていく「アジャイル型」の導入を行うことで、経理高度化の「Small start & Quick win」が加速します。

稼働後においては、社内勉強会やユーザー会などを通じて便利機能や最新機能をキャッチアップしていくことで、さらなる効率化が見込まれます。また、利用部門や利用モジュールの拡大を進めることで、企業全体の導入効果を高めていくことができます。

VI おわりに

デジタル化への取組みは企業の競争優位に大きな影響を及ぼします。スピーディかつコンパクトにスタート可能なソリューションが登場し、企業の関心も高まっています。アフターコロナにおいては、経理高度化への取組みがさらに推進していくことが予想されます。

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サマリー

新型コロナウイルス感染症の影響下において、経理部門における課題やデジタルツールを用いた取組みについて関心が高まっています。本稿では、近年注目が高まっているクラウドソリューションBlackLineに着目し、経理高度化に資する各種機能やモデルケース、導入プロジェクトの留意点について解説します。

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