EYはカーボンネガティブを維持、2025年のネットゼロ実現に向け前進

9 分 2022年10月11日
執筆者 Carmine Di Sibio

EY Global Chairman and CEO

Passionate about clients and the power of the global EY organization. Driver of growth and innovation. Relationship builder. Sports fan.

9 分 2022年10月11日

EYは2022年度に7項⽬のCO2削減アクションプランを強⼒に実行し、2025年のネットゼロ達成に向けて引き続き順調に取り組みを進めています。

要点
  • EYは引き続き温室効果ガス(GHG)排出量の削減を図っており、CO2の相殺・除去量が排出量を上回るカーボンネガティブを2年連続で実現した。
  • 今後の課題は、クライアントをサポートし独自のグローバルな文化を維持しつつ、排出量を抑制しながら事業を成長させることである。
  • クライアントが事業の脱炭素化を図り、低炭素経済への移行を加速させる手助けをするため、サービス、テクノロジー、プロダクトへの投資を行っている。

国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)を受け、脱炭素化が最⼤の世界的ビジネス課題に浮上し、ネットゼロ実現に取り組む企業が急増しています。ネットゼロ宣⾔をし、Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)と連携して、気候科学に従って排出量の削減を図る企業や⾦融機関はすでに3,000社を超えました。

企業がオペレーション変⾰を進め、脱炭素化を後押しする今、その機運は⾼まり続けています。とはいえ成⻑企業の場合、プラス成⻑を遂げれば国や地域を問わず結果的に排出量が増加するリスクがあるので、これに対処することが急務です。

「2023年度以降の課題は引き続き事業を成⻑させ、独⾃のグローバルな⽂化を維持しながら、CO2絶対排出量を削減することです」とEY Global Vice Chair – SustainabilityのSteve Varleyは述べています。これが課題であることは、EYの⼈材基盤(フルタイム当量(FTE)ベース)が基準年である2019年度以降29%拡⼤していることからも明らかです。

また、出張が再開されたことで2023年度は⾶⾏機での移動に伴うCO2排出限度の真価が問われる最初の年になるでしょう。

「この課題に対応する準備は整っており、CO2削減アクションプランに打ち出した対策がネットゼロ達成に向け引き続き取り組みを進める上で役⽴つと確信しています」とVarleyは⾔います。

2023年度以降の課題は引き続き事業を成⻑させ、独⾃のグローバルな⽂化を維持しながら、CO2絶対排出量を削減することです。
Steve Varley
EY Global Vice Chair – Sustainability

EYは2021年1月にCO2削減への取り組みに着手しました。スコープ1、スコープ2、スコープ3の温室効果ガス絶対排出量を(基準年の2019年度から)40%削減し、2025年にネットゼロを実現させることを目指しています。これは、SBTiから承認を受けた1.5°C⽬標に沿ったものです。またこの⽬標は気候科学の観点からも、地球の気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の⽬標の達成に必要とされています。

EYは2021年度に、世界全体でカーボンネガティブを実現するという⼤きなマイルストーンを達成しました。カーボンネガティブの実現とは排出量を上回る量のCO2を相殺または除去することを意味します。2022年度もカーボンネガティブを実現し、2025年のネットゼロ達成に向け引き続き順調に取り組みを進めていることを誇りに思います。
 

EYではどのように温室効果ガスの排出量を削減し、カーボンネガティブを維持しているか

2022年度にEYが排出した温室効果ガスは合計で⼆酸化炭素に換算して59万7千CO2換算トン(tCO2e)でした。基準年である2019年度の135万4千CO2換算トン(tCO2e)から56%削減できたことになります。⼀⽅、スコープ3の出張によるCO2排出量とスコープ2のオフィス電⼒消費量が激減した2021年度と⽐べると53%の増加です。ただ、2022年度にはEYの事業の多くが通常業務を再開しており増加は想定内のことです。EYの1.5°C⽬標にもコロナ禍後の温室効果ガスの排出量増加を織り込んでいます。

まだ削減できていない排出量を相殺するため、EYでは有数のプロジェクト開発企業やグローバルな気候変動ソリューションプロバイダーと共同で引き続きCO2オフセット・ポートフォリオに投資をしています。これらのプロジェクトで相殺したCO2排出量は合計72万3千CO2換算トン(tCO2e)です。これは2022年度にEYが排出した量の121%に相当し、2022年度も確実にカーボンネガティブを実現できます。いずれのプロジェクトも相殺の質についてEYが定めた基準を満たしています。また独⽴した検証を受け、追加性と永続性があり、別の⽬的では使⽤されずリーケージにもつながらない、かつコミュニティにプラスの効果をもたらすことはその実績から明らかです。

多くのクライアントと同様、⾃社の排出量をより正確に把握する⼀助としてEYでは新たなテクノロジーを導⼊しています。Enablonを導⼊したことでスコープ1とスコープ2の排出量をより正確に把握できるようになりました。対象となるデータポイントはEYネットワーク全体にある約650カ所のオフィスのエネルギー使⽤量、⽔消費量、燃料データなどです。

スコープ3の排出量についても出張の予約や航空機、鉄道、⾃動⾞関連の⽀出額を分析して引き続き詳細に把握しています。卓越したクライアントサービスを提供し、市場で優位を保ち、EYのチーム全体で連携し、EYの企業⽂化を強化する上で、出張は⽋かせません。⼀⽅、2025年のネットゼロ実現という⽬標達成に向け引き続き取り組むことができるよう、環境に配慮し、熟慮した上で出張をする必要があることも認識しています。2023年度の⾶⾏機での移動に伴うCO2排出限度は、2022年度の限度から6%引き下げました。この限度を確実に守るためには、排出量の削減と、クライアント対応などの活動で必要となる出張とのバランスを取ることが2023年度以降の課題となるでしょう。
 

2025年のネットゼロ実現に向けた7項目のCO2削減アクションプランの進捗状況

2025年にネットゼロを実現するため今後も7項⽬のCO2削減アクションプランの実⾏に努め、今まで以上に持続可能な組織づくりに取り組みます。2022年度は1年を通して、主要となる各アクションで⼤きな実績を上げることができました。

  • 1. 出張によるCO2排出量︓2025年度までに基準年の2019年度⽐で35%削減する

    • 2022年度は出張に伴うCO2排出量が基準年である2019年に⽐べて74%減少しています。その背景には鉄道での移動を選ぶ社員が増え(2019年度が全体の4%であるのに対して2022年度は20%)、⽇帰り出張が減った(2019年度が全体の18%であるのに対して2022年度は3%)ことがあります。
    • 2023年度の⾶⾏機での移動に伴うCO2排出限度は2022年度の限度から6%引き下げました。2025年度までに排出量を35%削減するという⽬標を達成するため、この排出限度は今後も毎年6%ずつ引き下げていきます。
  • 2. エネルギー︓EY全体のオフィス電⼒消費量を削減した上で、残りの必要電⼒を100%再⽣可能エネルギーで賄う

    • 現在、EYが全世界で消費する電⼒の47%が再⽣可能エネルギー由来です。国別で⾒ると、⽶国、英国、ドイツでは再⽣可能エネルギー由来100%を実現しました。インド、⽇本、そして南⽶の⼀部諸国でも再⽣可能エネルギーがかなりの割合を占めています。建物のオーナーやオーナー候補と連携して再⽣可能エネルギーへの転換を引き続き進めています。
    • EYは2023年度にRE100にゴールドメンバーとして加盟します。RE100は世界で最も⼤きな影響⼒を持つ企業を結集させ、使⽤電⼒を100%再⽣可能エネルギーで賄うことを⽬指す世界的なイニシアチブです。
  • 3. 契約︓電⼒供給契約はバーチャルPPA(vPPA)で締結し、EYの消費量を上回る電⼒を送電網に供給する

    • 現時点で締結しているバーチャルPPA(vPPA)はEYのメンバーファーム2社が結んだ3件です。今後もバーチャルPPAの締結が可能な場合にはEYのメンバーファームと連携して、新たな再⽣可能エネルギープロジェクトを⽴ち上げていきます。2023年度にはオーストラリアで新たなバーチャルPPAの取引を完了させることを⽬指しています。
  • 4. 測定︓クライアント業務実施時のCO2排出量をEYのチームが算定し、削減できるようにする

    • 新しい排出量ダッシュボードはEYの出張に伴う排出量⽬標に対する進捗状況を常時チェックするためのツールであり、EYのメンバーファームの誰もが利⽤できます。また出張社員ダッシュボードにより、EYメンバーは⾃分の出張関連のCO2排出量を完全に可視化できます。
    • 2023年度には出張に関連する新たな意思決定ツールをIBMと連携して導⼊します。これは各移動⼿段のCO2排出量を表⽰するツールです。それによりEYの社員は正しい情報を得て、熟慮の上で出張時の交通手段を決定できるようになります。
  • 5. EYの年間排出量を上回るCO2を除去または相殺する、⾃然と科学技術を活⽤したプロジェクト

    • まだ削減できていない排出量の相殺を⽬的として⾃然とテクノロジーを活⽤したプロジェクトに引き続き投資をしています。2022年度は10件のこうしたプロジェクトの助力を得て、72万3千CO2換算トン(tCO2e)を相殺することができました。これは、2022年度にEYが排出したCO2の121%に相当しており、カーボンネガティブを確実に維持できています。
    • プロジェクトの内容は森林保全、⾵⼒・太陽光発電による再⽣可能エネルギー、クリーンクックストーブ、泥炭地保護、環境再⽣型農業、ブルーカーボン、バイオ炭などです。
    • 気候変動におけるグローバル⽬標の達成に不可⽋な気候変動対策テクノロジーの開発と規模を⽀えるには、⾰新的な除去プロジェクトに対するアーリーアダプターのサポートが⽋かせません。EYは2021年にLowering Emissions by Accelerating Forest Finance (LEAF) Coalitionへの参加同意書に署名をしました。これは熱帯・亜熱帯林の保全に資⾦を拠出して国に有益な⽀援を⾏い、何億もの⼈々が恩恵を受けることのできる画期的な官⺠共同イニシアチブです。また、英国の先駆的なプロジェクトで開発された直接空気回収技術(DAC)による将来の⻑期供給契約(オフテイク契約)に関する覚書も締結しました。
  • 6. サプライヤー︓EYのサプライヤーの75%(⽀出額ベース)に対し、2025年度までにSBTを設定するよう求める

    • EYでは、サプライヤーに変革の推進を促すため、その組織のScience Based Targets(SBT、科学的根拠に基づいた排出削減目標)を設定する手助けをしています。また、脱炭素化を進める取り組みに対する意欲の向上に役立つ研修も行っています。現時点までにこの目標を設定したサプライヤーは全体の52%ですが、2025年度までに75%が目標を定めることを目指しています。
  • 7. クライアント︓事業の脱炭素化による企業価値の創出に取り組むクライアントの助けとなり、サステナビリティに関わるその他の課題や機会に対するソリューションを提供するサービスやソリューションへの投資を⾏う

    • クライアントのサステナビリティに関わる⽬標と宣⾔の達成に向けた取り組みを⽀援しています。EYの⾰新的なソリューションとテクノロジーで企業やセクターのサステナビリティに関わる最⼤の課題に対処します。具体的には、アライアンスパートナーであるMicrosoftIBMSAPEnablonServiceNowと連携して、クライアントがこれまで以上にサステナビリティを戦略に組み込めるよう有効なテクノロジー、商品、サービスを開発しています。

この7項⽬のアクションプランに基づいてネットゼロ実現に向け活動する⼀⽅で、引き続きSBTiの動向にも注意を払っています。その動向の1つが先ごろ⾏われたネットゼロの定義の更新です。EYは多くのクライアントと共にこの定義の変更がもたらす影響をより明確に把握し、それがEYにとってどのような意味を持つのかを⾒極めるべく取り組んでいます。
 

低炭素社会の実現に向け他者と連携

「他のプロフェッショナルサービスファームと同様、EYのビジネスモデルは製造業、⼩売業、削減が難しい業界など多くの業界に⽐べてシンプルです」とVarleyは指摘します。「EYでは、⾃社の排出量⾃体が少ないことを認識しつつ、⾃らの経験、招集⼒、スキル、サービス、⼈材を⽣かして他者が低炭素化を進める⽀援をしています」

脱炭素化に取り組むクライアントとサプライヤーをサポートする他、引き続き招集⼒を⽣かして、志を同じくする組織を結集し、企業、社会、そして地球のためにサステナビリティから価値を創造し、守っています。

他者と連携することですべての⼈の排出量削減に役⽴つ、⼒を結集させた解決策を⾒いだすことができるはずです。結局のところ、サステナビリティはすべての⼈に関わりのある問題なのです。
Carmine Di Sibio
EY Global Chairman and CEO

2021年11⽉にはEYのリーダーらがCOP26に参加しました。ビジネス界と⾦融界のリーダーが各国政府のリーダーと共に集結し、⼀致団結して対応する必要性があるとの判断をCOP会議で下したのは、これが初めてのことです。2022年11⽉にエジプトで開催されるCOP27を⾒据え、EYでは今後もネットゼロ社会の実現に向けた進捗を加速させる取り組みを後押ししていきます。またクライアントと連携して、宣⾔を企業活動へと具現化し、真の変化を⽣み出していく⽅針です。

サステナビリティの測定と報告に関しては引き続き基準策定機関と連携し、また、英国のチャールズ3世国王が創設した持続可能な市場のためのイニシアチブ(SMI、Sustainable Markets Initiative)やサステナビリティ責任者のフォーラム「S30」(SMIの一部)など外部組織との取り組みを通じて脱炭素化を推し進めています。

気候科学で明確に⽰されているように、規模の⼤⼩にかかわらず組織が⼤気中のCO2の量を削減するあらゆる取り組みを速やかに前進させることが不可⽋です。また全員が役割を果たす必要があり、さらに⼀歩進んだ取り組みができる企業はそれを実⾏に移さなければなりません。⼀致団結することでネットゼロという難しい課題に⽴ち向かい、より良い、より持続可能な社会を構築できるはずです。

「気候変動と脱炭素化という難しい課題の解決策は、⼒を合わせて探すしかありません。他者と連携することですべての⼈の排出量削減に役⽴つ、⼒を結集させた解決策を⾒いだすことができるはずです」とEY Global会⻑兼CEOのCarmine Di Sibioは述べています。「結局のところ、サステナビリティはすべての⼈に関わりのある問題なのです」

  • 別表︓2020年度から2022年度におけるEYの温室効果ガス排出量の推移

    下の表は、スコープ1、スコープ2、スコープ3の温室効果ガスの排出量削減におけるEYの進捗状況を示しています。

       

    温室効果ガスの排出量*      
      2020年度 2021年度 2022年度
    総排出量(tCO2e)

    976,000

    394,000 597,000
    社員1人当たりの排出量(tCO2e/FTE) 3.3 1.3 1.7
    GHGプロトコルのスコープ1(tCO2e) 9,000 10,000 18,000
    GHGプロトコルのスコープ2(tCO2e) 132,000 106,000 148,000
    GHGプロトコルのスコープ3(tCO2e) 835,000 278,000 431,000
    売上高1,000米ドル当たりの排出量(tCO2e/US$000) 0.0263 0.0099 0.0131

     

    *温室効果ガスの排出量はEYグローバル・カーボンフットプリント⼿法に従って算出されています。これは世界資源研究所(WRI)および持続可能な開発のための世界経済⼈会議(WBCSD)が策定した温室効果ガス(GHG)プロトコルに基づいており、スコープ2の排出量を報告する際は「ロケーションベース」のアプローチを⽤います。排出量の算出には英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省が発表した2022年の変換係数または必要に応じて国内で発⾏された係数を使⽤します。⾶⾏機での移動に伴うCO2排出量の算出に⽤いられる変換係数には「放射強制⼒」の影響が含まれます。オフィスのエネルギー消費に伴うCO2排出量は世界のオフィスポートフォリオの83%に相当する活動データを⽤いて推計しています。2022年には当社のScience Based Targets(科学的根拠に基づいた排出削減⽬標)に沿った報告を⾏うためスコープ3の排出量カテゴリーを追加しました。上記の各報告対象年の数字にはスコープ3のカテゴリー(出張、社員の通勤、リモートワーク、業務で発⽣した廃棄物、燃料・エネルギー関連の活動)に関わる排出量が含まれています。

  • 脱炭素化に関する主要な用語

    Science Based Targets(SBT、科学的根拠に基づいた排出削減⽬標)︓温室効果ガス削減⽬標。組織によるCO2排出量を気候科学とパリ協定の⽬標に沿って削減し、地球温暖化を産業⾰命前の⽔準プラス1.5°Cに抑制することを⽬指す。

    カーボンニュートラル:組織が1年間に出すCO2排出量に相当するCO2を除去、相殺した状態を指す。

    カーボンネガティブ:組織がSBTのプラス1.5°C⽬標に沿った形でCO2排出量を削減すると同時に、⾃然由来のソリューションと炭素技術への投資により年間のCO2排出量を上回るCO2を除去、相殺した状態を指す。

    ネットゼロ:SBTのプラス1.5°C⽬標の達成および⼤気中からの残留排出量の除去という2つを両⽴した時点を指す。

    排出量のスコープ:排出量は温室効果ガスプロトコルで以下の3つに分類されています。

    スコープ1︓事業者またはその⽀配下の事業者の活動に伴う直接排出量すべて
    スコープ2︓事業者が購⼊し消費する電⼒からの間接排出量
    スコープ3︓事業者の活動に伴う、電⼒を除いたその他の間接排出量すべて

    EYでは、スコープ1とスコープ2は主にオフィスのエネルギーに関連したもので、スコープ3は出張によるものです。

サマリー

EYは2025年のネットゼロ実現に向けてCO2絶対排出量の削減に取り組んでおり、カーボンネガティブを2年連続で実現できたことを誇りに思います。経験、サービス、ソリューション、⼈材を⽣かし、他者と連携して低炭素社会への移⾏を後押ししていきます。

この記事について

執筆者 Carmine Di Sibio

EY Global Chairman and CEO

Passionate about clients and the power of the global EY organization. Driver of growth and innovation. Relationship builder. Sports fan.