日本の新規上場動向 - 2022年1月~6月

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
公認会計士 吉本 麻衣子

1. 新規上場市場の概況

2022年1月~6月の国内株式市場は、年明け日経平均株価終値29,301円でスタートし、その後米国株式市場の推移に足並みをそろえる形で徐々に下落を続け3月上旬には一時24,000円台となるものの、その後は25,000円台から28,000円台の間を推移し、6月最終日終値は26,393円となりました。また、2022年4月4日、東京証券取引所ではでプライム市場、スタンダード市場、グロース市場、名古屋証券取引所ではプレミア市場、メイン市場、ネクスト市場がそれぞれ始動しました。そのような市場環境の中で、新規上場企業数は、48社(TOKYO PRO Marketを含む。以下同様)となりました。前年同期(2021年1月~6月)と比較すると11社減と大幅に減少しています。市場別に見ると、全体の56.3%にあたる27社がマザーズ市場もしくはグロース市場に上場し、新興市場合計で全体の83.3%を占めています(表1)。

表1 最近5年間(1月~6月)の市場別新規上場企業数

表1 最近5年間(1月~6月)の市場別新規上場企業数

(注1)東証(1部、2部、マザーズ、JASDAQスタンダード)及び名証セントレックスについては、2022年1月から4月3日の実績、東証(プライム、スタンダード、グロース)及び名証ネクストについては4月4日から6月の実績となっています。
(注2)集計期間中に市場区分の変更があったため、市場区分ごとの増減比較は省略しています。
(注3)対象期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注4)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。

 

2. 新規上場企業データの分析

業種別では、サービス業18社(昨年13社)、情報・通信業11社(昨年21社)となっており、それぞれ新規上場企業全体の37.5%及び22.9%を占め、他の業種社数との開きが昨年同様に見られます。(表2)。

表2 2022年(1月~6月)の業種別新規上場企業数

表2 2022年(1月~6月)の業種別新規上場企業数

本店所在地別では、全体の64.6%にあたる31社の本店所在地が東京都であり、依然として東京都が中心です(表3)。東京都以外に本店所在地がある場合でも上場市場は東証に集中しています。

表3 2022年(1月~6月)の地域別新規上場企業数


表3 2022年(1月~6月)の地域別新規上場企業数

赤字上場(直前期の当期純利益が赤字で上場した会社)数はマザーズ市場もしくはグロース市場に上場した8社とTOKYO PRO Marketに上場した2社の合計10社であり、初値が公募価格を上回った会社はTOKYO PRO Marketを除いた新規上場企業において、26社ありました。

直前期の売上高の分布を見ると、10億円未満の企業が9社(19%)、10億円以上50億円未満の企業が22社(46%)であり、全体の約3分の2を売上高50億円未満の比較的小規模な企業が占めています(図1)。売上高が200億円を超える新規上場企業は、東証1部及び東証2部に上場した2社にとどまっています。

初値時価総額の分布を見ると、50億円未満の企業が22社(46%)、50億円以上100億円未満の企業が15社(31%)であり、全体の約4分の3を占めています。500億円を超えた企業は1社のみであり、昨年(7社)と比較して大幅に減少しています(図2)。なお、初値時価総額が最も高かったのは、ANYCOLOR株式会社の1,442億円でした。マザーズ市場とジャスダック市場及びグロース市場の平均初値時価総額は146億円と、前年同期の275億円と比較して大幅に減少しました。

図1 2022年(1月~6月) 新規上場企業・直前期売上高/ 図2 2022年(1月~6月) 新規上場企業・初値時価総額

図1 2022年(1月~6月) 新規上場企業・直前期売上高/ 図2 2022年(1月~6月) 新規上場企業・初値時価総額

監査法人別では、EY新日本有限責任監査法人8社(16.7%)、有限責任あずざ監査法人が5社(10.4%)、有限責任監査法人トーマツ10社(20.8%)となり3法人合計で50%に届かない一方で、中小規模等のその他の監査法人の割合が増加しており、新規上場において担う役割が大きくなってきていることがうかがえます(表4)。

表4 2019年~2022年6月の監査法人別新規上場企業数

表4 2019年~2022年6月の監査法人別新規上場企業数