関連法令等の改正

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EY Japan

2024年2月6日
カテゴリー IPOの動向

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
シニアマネージャー 公認会計士 髙橋 朗

1. 「四半期開示制度の廃止を含む金融商品取引法等の一部を改正する法律」の成立

2023年11月20日、第211回国会に提出されていた「四半期開示制度の廃止を含む金融商品取引法等の一部を改正する法律」(以下「改正金商法」という。)が成立しました。

改正金商法は、2022年12月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、四半期開示をはじめとする情報開示の頻度・タイミングについて、金融商品取引法に基づく四半期報告書と取引所規則に基づく四半期決算短信には重複がみられ、コスト削減や効率化の観点から見直すべきとの提言に基づいて改正されたものになります。

2. 改正の主な概要

(1) 四半期報告書の廃止

改正金商法の成立によって、企業開示の効率化の観点から、上場企業の第1・第3四半期開示については、金融商品取引法上の四半期報告書を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化される亊になります。また、第2四半期開示は新たに定められた半期報告書の提出が求められるようになります。四半期(第1・第3四半期)の監査人のレビューは任意とされていますが、会計不正等が起こった場合や企業の内部統制の不備が判明した場合等は、取引所規則により一定期間四半期決算短信への監査人のレビューの義務付けが検討されています。

(2) 第2四半期(半期報告書)の取扱い

見直し後の半期報告書については、現行の第2四半期報告書と同程度の記載内容と監査人のレビューが要求されています。また、半期報告書の提出期限は現状の四半期報告書と同様に第2四半期決算日後45日以内とされています。

(3) 公衆縦覧期間の延長

半期報告書及び臨時報告書は、法令上の開示情報としての重要性が高まることから、公衆縦覧期間(各3年間・1年間)を5年間(課徴金の除斥期間と同様)へ延長されています。

(4) 適用時期について

金融商品取引法等の一部を改正する法律は、2024年4月1日から施行されます。ただし、2024年4月1日より前に開始した四半期会計期間については、従来どおり、四半期報告書の提出が求められます。したがって、決算期によって四半期報告書が廃止され、四半期決算短信に統一される時期、及び新たに定められた半期報告書の提出が求められる時期が異なるため留意が必要です。

3. 上場準備会社の対応

今回の「改正金商法」の成立により金融商品取引法上の四半期報告書は廃止されますが、当面は四半期決算短信の提出が義務付けられているため、上場準備会社においては、引き続き45日以内に四半期決算短信を提出できる社内体制を構築する必要がある点には留意が必要です。

また、上場申請書類における四半期報告書の取扱いについては、現状新たな公表は行われていないため、今後の動向を注視し、自社への影響を把握し、適時に対応していく事が重要になると考えられます。

【図】一本化後の四半期開示制度

【図】一本化後の四半期開示制度

(出所)金融庁 「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」(令和5年3月14日提出)を基にEY作成