四半期簡素化等に対応する四半期連結財規等の改正ポイント

2011年4月5日
カテゴリー 会計情報トピックス

会計情報トピックス 吉田剛

内閣府令第10号が平成23年3月31日に公布

平成23年3月31日に、「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第10号)(以下「改正府令」という。)が公布されています。また、関連するガイドラインについても、同日付で改正が発出されています。

改正府令は、平成23年3月25日に公表された改正企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「改正四半期会計基準」という。)と同じく、四半期報告の簡素化を目的とし、簡素化の具体的な内容を規則や府令に反映するために公布されたものです。また、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「過年度遡及会計基準」という。)などの公表を受け、四半期決算・中間決算における過年度遡及の具体的な規定を設ける改正も併せて行われています。

なお、四半期簡素化や比較情報の考え方の導入に伴い、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」についても改正が行われています。

1. 改正された主な規則等

  • 四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(四半期連結財規)
  • 四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(四半期財規)
  • 中間連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(中間連結財規)
  • 中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(中間財規)
  • 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(連結財規)
  • 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財規)
  • 企業内容等の開示に関する内閣府令(開示府令)
  • 「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(四半期財務諸表等規則ガイドライン)等のガイドライン関係
  • 企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)

2. 四半期報告簡素化に関する改正

(1)主な改正の内容

① 四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書の省略(第1・第3四半期)(四半期連結財規第5条の2、四半期財規第4条の2など)

第1・第3四半期の四半期報告書においては、これまで作成が義務付けられていた四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書の作成を省略できる旨の規定が設けられました。

また、第1四半期で四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書を開示した場合には、第3四半期でも開示するものとされ、年度内での開示の整合性が図られています。

これら第1・第3四半期の四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書を開示した場合は、経理の状況の冒頭記載においてその旨を記載することが必要とされています。

なお、開示を省略した場合には、当該累計期間に係る減価償却費(有形固定資産及び無形固定資産(のれんを除く。))とのれんの償却額が注記されます(四半期連結財規第27条の2、四半期財規第22条の3)。

② 3か月情報の省略(第2・第3四半期)(四半期連結財規第64条第2項、四半期財規第56条第2項など)

これまでのP/L情報(*)は、第2・第3四半期においては期首からの累計情報のほか、3か月情報の作成が義務付けられていました。今回の改正により、当該3か月情報については、任意の開示とすることとされました。セグメント情報、1株当たり情報、著しい季節的変動がある場合の注記についても、同じく任意の開示とされています。

また、第2四半期で3か月情報を開示した場合には、第3四半期でも開示するものとされ、年度内での開示の整合性が図られています。

これら第2・第3四半期の3か月情報を開示した場合は、経理の状況の冒頭記載においてその旨を記載することが必要とされています。

さらに、有価証券報告書に記載されていた第1四半期から第4四半期の売上高、四半期純損益等の情報についても、1株当たり四半期純損益を除き、累計情報(第1から第3四半期の累計情報及び通年の数値)を記載することとなります(開示府令第三号様式記載上の注意(46)b、第二号様式記載上の注意(66)c、d)。

(*)包括利益の表示の導入により、四半期連結財務諸表におけるこれまでの四半期連結損益計算書は、四半期連結損益計算書及び四半期連結包括利益計算書(2計算書方式の場合)又は四半期連結損益及び包括利益計算書(1計算書方式の場合)として作成されます。なお、四半期個別財務諸表では、これまでどおり四半期損益計算書を作成するものとされ、包括利益の表示は今のところ導入されていません。

③ 注記事項の廃止・簡略化

四半期報告の簡略化の目的に資するため、以下の注記規定が削除されました。

  • 表示方法の変更に関する注記
  • 簡便な会計処理に関する記載
  • 金融商品等に関する注記の省略(第1・第3四半期)(金融機関を除く。)
  • ストック・オプション等に関する注記
  • 資産除去債務に関する注記
  • 賃貸等不動産に関する注記
  • 開示対象特別目的会社に関する注記
  • リース取引に関する注記
  • 担保資産の注記
  • 一括掲記した場合の棚卸資産の内訳の注記(第1・第3四半期)
  • 棚卸資産及び工事損失引当金に関する注記
  • 一括掲記した場合の販売費及び一般管理費の内訳の注記(第1・第3四半期)
  • 1株当たり純資産額の注記
  • 発行済株式・自己株式・新株予約権等に関する注記

また、一部の注記で簡略化(取得による企業結合の注記における期首に完了したとした場合の影響額の記載の廃止など)が図られています。

④ 非財務情報に係る記載の廃止・簡略化

③と同じく、四半期報告の簡略化の目的に資するため、これまで規定されてきた以下の記載の廃止・簡略化が規定されました。

  • 経理の状況で3か月情報を省略した場合における「主要な経営指標等の推移」の3か月情報の省略(1株当たり四半期純損益金額を除く。)
  • 「関係会社の状況」の記載の廃止
  • 「株価の推移」の記載の廃止
  • 「事業の内容」等について、当四半期(連結)累計期間に重要な変更があった場合にのみ記載を求めることに改正
  • 「従業員の状況」、「生産、受注及び販売の状況」及び「設備の状況」につき、当四半期(累計)に重要な変更があった場合に「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」において記載することに改正
  • 当四半期(3か月)に新株予約権証券が発行された場合にのみ、「新株予約権等の状況」等を記載することに改正 など

(2)適用時期

平成23年4月1日以後開始する連結会計年度又は事業年度に属する四半期(連結)会計期間及び四半期(連結)累計期間に係る四半期(連結)財務諸表(四半期報告書)から適用することとされています。

3. 過年度遡及会計基準等の公表を受けた規定の新設等

(1)主な改正の内容

① 注記事項の新設

過年度遡及会計基準等(中間(連結)財務諸表に係る過年度遡及・四半期(連結)財務諸表に係る過年度遡及)において定められた一定の注記が、規則上も求められることが明らかになりました(四半期連結財規第10条の2から第10条の6、四半期財規第5条から第5条の5)。

② 比較情報の規定の新設

年度と同じく、比較情報の規定が新設されました。比較情報とは、当四半期(当中間期)の財務諸表に記載された事項に対応する前期及び前年同四半期(前中間期)に係る事項をいうものとされ、当四半期(当中間期)の財務諸表は、この比較情報も含めたものとなることが規定されました(四半期連結財規第5条の3、四半期財規第4条の3など)。

また、中間(連結)財務諸表については、前(連結)中間会計期間末の中間(連結)貸借対照表、前連結会計年度(事業年度)の要約(連結)損益計算書、要約(連結)株主資本等変動計算書、要約(連結)キャッシュ・フロー計算書の開示が廃止されます(中間連結財規様式第四号~様式第八号、中間財規様式第四号~様式第八号、下表参照)。

中間(連結)財務諸表
改正後
従来(斜字は今回削除)
貸借対照表
前期末・当中間末
前中間末・当中間末・前期末
損益計算書等(*)
前中間・当中間
前中間・当中間・前期
株主資本等変動計算書 前中間・当中間 前中間・当中間・前期
キャッシュ・フロー計算書 前中間・当中間 前中間・当中間・前期

(*)連結では、中間連結損益計算書及び中間連結包括利益計算書又は中間連結損益及び包括利益計算書

なお、これに対応し、開示府令上の前年度の財務諸表の取扱いが改正されています(開示府令第四号の三様式記載上の注意(19)など)。

③ 中間株主資本等変動計算書の科目表記

中間株主資本等変動計算書の「前期末残高」との表記が「当期首残高」へと変更されました(中間財規様式第六号)。

(2)適用時期

過年度遡及会計基準等と同じく、平成23年4月1日以後開始する連結会計年度又は事業年度に属する四半期(連結)会計期間に係る四半期(連結)財務諸表又は同日に開始する中間(連結)会計期間に係る中間(連結)財務諸表について適用することとされています。

4. その他の改正事項

会計方針の変更を行った場合に注記される主な科目への影響額について、具体的な算定方法が明示されました(財規ガイドライン8の3)。

5. 公開草案からの主たる修正事項

第1・第3四半期の四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書の作成の省略、及び第2・第3四半期の3か月P/Lの作成の省略について、年度内の首尾一貫性を図るものとする規定が設けられました。

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