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会計情報トピックス 吉田剛
この平成23年6月第1四半期決算においては、平成23年3月に改正された企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」等に基づく四半期報告の簡素化が導入されるとともに、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」による過年度遡及処理等の取扱いが適用となります。
本稿では、これら新会計基準に係る論点を含む平成23年6月第1四半期決算での留意事項をQ&A方式で解説します。
Q13か月P/L及びC/F計算書の開示省略の同時適用の要否
Q23か月P/L及びC/F計算書の開示省略の要件
Q3四半期財務諸表の省略に係る継続性と比較情報
Q4特定事業会社における3か月P/Lの開示
Q5四半期会計期間に係る注記等の開示
Q6前期の貸倒引当金戻入額の表示
Q7金融商品の時価情報を注記する場合の比較情報
Q8包括利益の表示に関する2年目の留意事項
Q92年目のセグメント情報 (遡及適用等の取扱い)
なお、本稿の本文において、会計基準等の略称は以下を用いています。
正式名称 |
本文中の略称 |
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企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」 |
四半期基準 |
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企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」 |
セグメント基準 |
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企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」 |
過年度遡及基準 |
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企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」 |
包括利益基準 |
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企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」 |
四半期指針 |
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企業会計基準適用指針第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」 |
過年度遡及指針 |
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会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」 |
金融商品実務指針 |
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「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」 |
四半期財規 |
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「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」 |
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「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」 |
財規 |
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「企業内容等の開示に関する内閣府令」 |
開示府令 |
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会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」 |
金融商品実務指針 |
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監査・保証実務委員会実務指針第77号「追加情報の注記について」 |
監査・保証77号 |
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「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について |
四半期財規ガイドライン |
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「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について |
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「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について |
財規ガイドライン |
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「『四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)』等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」(平成23年3月31日 金融庁) |
金融庁の考え方 |
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「『四半期財務諸表に関する会計基準(案)』及び『四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針(案)』等に対するコメント」の5.主なコメントの概要とそれらに対する対応案 |
ASBJコメント対応 |
また、本稿の本文中、四半期財務諸表等の表記として、以下を用いています。
内容 |
本文中の表記 |
---|---|
四半期連結財務諸表又は四半期財務諸表 |
四半期財務諸表 |
四半期連結累計期間又は四半期累計期間 |
四半期累計期間 |
四半期連結会計期間又は四半期会計期間 |
四半期会計期間 |
四半期連結貸借対照表又は四半期貸借対照表 |
四半期貸借対照表 |
四半期連結損益計算書又は四半期損益計算書 |
四半期損益計算書 |
四半期連結損益計算書及び四半期連結包括利益計算書若しくは四半期連結損益及び包括利益計算書又は四半期損益計算書 |
四半期損益計算書等 |
四半期連結キャッシュ・フロー計算書又は四半期キャッシュ・フロー計算書 |
四半期キャッシュ・フロー計算書 |
平成23年3月の四半期基準等及び四半期連結財規等の改正により、四半期報告に関して、四半期財務諸表も一定の簡素化が図られました。
具体的には、四半期会計期間(3か月)に係る四半期損益計算書等(第2・第3四半期)について、開示の省略が可能とされるとともに(四半期基準7項(2)、7-2項)、第1・第3四半期の四半期キャッシュ・フロー計算書に関しても、その開示を省略することができるものとされました(四半期基準5-2項、6-2項)。
これらの定めは、それぞれ別個のものとして設けられており、いずれかの計算書の作成を省略しても、もう一方の計算書の開示省略が強制されることはありません。
なお、四半期連結財務諸表における四半期包括利益の表示において、2計算書方式を採用している場合、四半期連結会計期間に係る四半期連結損益計算書と四半期連結包括利益計算書の開示・省略は、一体として判断される必要があるため留意が必要です(四半期連結財規83条の2第3項)。
四半期損益計算書等(3か月)又は四半期キャッシュ・フロー計算書の開示の省略に関して、特に要件は設けられていません(四半期基準7-2項、5-2項、6-2項参照)。
このため、会社がその判断で開示の省略を決定することができますが、年度内の開示の首尾一貫性が求められていますので、留意が必要です(Q3参照)。
四半期損益計算書等(3か月)又は四半期キャッシュ・フロー計算書の開示の省略に関しては、年度内の首尾一貫性が求められています。すなわち、四半期損益計算書等(3か月)につき、第2四半期で開示(又は省略)した場合には、第3四半期も開示(又は省略)することとされています(四半期基準7-3項)。また、四半期キャッシュ・フロー計算書につき、第1四半期で開示(又は省略)した場合には、第3四半期でも原則として開示(又は省略)することとされました(四半期基準5-2項、6-2項)。
一方、年度間の継続性に関しては、明確な定めが設けられておらず(ASBJコメント対応3)、前年まで開示しなかったものを開示する、又は前年まで開示していたものを省略するような変更を行うことは認められるものと考えられます。ただし、みだりに変更することは継続性の観点より「望ましくないと考えられ」るものとされている点に留意が必要です(金融庁の考え方No.2、No.3)。
また、従来開示されていなかったものを当期より開示した場合、比較情報の開示は不要とされています(四半期基準7-4項)。この場合、前期の情報を任意で開示することができますが、開示した場合には比較情報として四半期レビューの対象となります(四半期基準37-3項)。
なお、従来開示していたものを省略した場合、省略した期においては、前期の情報を開示する必要はないものと考えられます。この取扱いは、適用初年度においても同様です(金融庁の考え方No.13)。
銀行業・保険業等の特定事業会社における第2四半期の四半期報告書においては、従来と同様、四半期損益計算書等(3か月)の開示が規定されているため、留意が必要です(開示府令 第四号の三様式 記載上の注意(30)なお書)。
また、当該四半期損益計算書等(3か月)は、中間(連結)財務諸表の「その他」の項に記載され、非財務情報としての取扱いとなるため、年度内の首尾一貫性の規制の対象とならないものと考えられます。したがって、特定事業会社において第2四半期の四半期損益計算書等(3か月)を府令の規定により開示したとしても、第3四半期における四半期損益計算書等(3か月)の開示が必須とされるものではないと考えます。
ご質問のP/L関係の注記は、四半期損益計算書等(3か月)を開示した場合であっても、なお任意に開示することができるものとされているため、四半期損益計算書等(3か月)とセットで開示が求められるということはありません。
セグメント情報、1株当たり四半期純損益、著しい季節的変動の注記に関しては、四半期損益計算書等(3か月)自体が任意開示とされたことを受け、これら注記の3か月情報も原則的な開示項目から外れています。すなわち、四半期損益計算書等(3か月)が開示された場合にも、併せて開示が求められるということはなく、あくまで任意に開示することができるものとされています(四半期基準58-3項、59-2項、61-2項)。なお、四半期会計期間に係る1株当たり四半期純損益は、四半期損益計算書等(3か月)の開示の有無にかかわらず、主要な経営指標等の推移(いわゆるハイライト情報)での開示が必要とされます。
また、これらの注記事項を開示する場合には、年度内の首尾一貫性が求められる点に留意が必要です(四半期基準58-3項なお書、59-2項なお書、61-2項なお書)。年度間の継続性に関しては明示された定め等がありませんが、比較情報の取扱いを含め、四半期損益計算書等(3か月)等の取扱いに準じることになると考えられます(ASBJコメント対応7、本留意事項Q3参照)。
前年同四半期の四半期損益計算書に特別利益に掲記されていた貸倒引当金戻入額は、比較情報においてそのまま特別利益として表示されることになると考えられます。
過年度遡及基準の適用に伴い、貸倒引当金に関連する損益計算書上の表示の取扱いに関しては、以下のような改正が行われています。
項目 |
項数 |
改正後 |
改正前 |
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貸倒引当金戻入額の表示 |
125項 |
原則として営業費用又は営業外費用から控除するか、営業外収益として認識 |
原則として特別利益 |
償却債権取立益の表示 |
124項 |
原則として営業外収益 |
原則として特別利益 |
貸倒損失時の貸倒引当金の不足額 |
123項 |
債権の性格により、原則として営業費用又は営業外費用に認識(前提として、当該不足額が過去の誤謬に該当する場合は修正再表示) |
過年度損益修正に該当する場合は原則として特別損失、それ以外は販売費又は営業外費用 |
(※)項数は金融商品実務指針の項数を示しています。
また、前年同四半期において特別利益に表示されていた貸倒引当金戻入額は、過年度遡及基準が平成23年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更等から適用され、前期以前に行われている会計上の変更等には適用されないため(過年度遡及基準23項、金融商品実務指針195-11項)、特別利益としての表示は特に組み替えられないものと解されます(企業会計基準委員会のHPで公表されている「企業会計基準第24号『会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準』及び企業会計基準適用指針第24号『会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針』について」p.9)。
四半期財務諸表において、四半期貸借対照表計上額に著しい変動があるなど、一定の条件を満たすことにより金融商品、有価証券、デリバティブ取引の時価等を注記する場合、当四半期末の数値を開示するだけでなく、比較情報として前連結会計年度(前事業年度)末の数値も開示する必要があります。
四半期財務諸表の一部を構成する比較情報においては、当四半期会計期間及び当四半期累計期間の四半期財務諸表に記載されたすべての数値について、原則として、前連結会計年度(事業年度)並びに前年同四半期会計期間及び前年同四半期累計期間に係る数値を含めなければならないとされています(四半期連結財規ガイドライン5の3の1、四半期財規ガイドライン4の3の1)。このため、過年度遡及基準の適用前は、当四半期の数値のみを開示していた金融商品の時価注記等であっても、前連結会計年度(前事業年度)末の数値を併せて開示することに留意する必要があります(金融庁の考え方No.25)。
当第1四半期決算の四半期包括利益の表示に係る留意事項は、以下の3点です。
当第1四半期においては過年度遡及基準が適用となっており、前年同四半期(平成22年6月第1四半期)に係る四半期連結包括利益計算書(又は四半期連結損益及び包括利益計算書)が比較情報として開示されます(包括利益基準15項)。
四半期報告書の冒頭に掲げられるハイライト情報においても、前年同四半期分の四半期包括利益が開示されます。平成23年3月期の有価証券報告書では、連結財務諸表の注記でのみ前期の包括利益が開示され、ハイライト情報では特に開示されませんでした。この平成23年6月第1四半期では、過年度遡及基準の適用により、ハイライト情報も遡及処理の影響を反映して作成されることになります(企業内容等開示ガイドライン24の4の7-7、5-12-2)。
平成23年3月期において、その他の包括利益の内訳項目別の税効果額及び組替調整額の注記(包括利益基準8項、9項)は、適用初年度の経過措置により不要とされていました(包括利益基準13項)。当該注記は、四半期決算では省略が可能とされています(包括利益基準10項)。
なお、当該注記の作成に関して、会社によっては相当な負担となることも考えられ、四半期決算として開示をしない場合でも、年度の決算に向けてこれら注記金額を適正に集計・算定し、かつ社内でチェックできる体制を整えておくことが重要であると考えられます。
会計方針の変更及びこれに類似するセグメント情報上の事象がいくつかありますが、各々取扱いが相違する点に留意が必要です。以下の表にまとめていますので、ご確認ください。
(※1)これら金額のすべて又は一部につき、正確に算定することができないときは、概算額によることができ、算定が実務上困難な場合には、その旨及びその理由を記載する(四半期指針40項なお書)。また、前年度の第2四半期以降にこれらの変更を行い、当四半期と前年同四半期の測定方法・区分方法に相違がみられる場合、原則として、変更後の方法により作成し直した情報を開示する(四半期基準19項(7)⑥、25項(5-2)⑥)。
(※2)第2四半期以降に変更した場合には、これに加えて第2四半期以降に変更した理由を記載する(四半期基準19項(7)⑤、25項(5-2)⑤)。
(※3)四半期指針上で定められる又は認められている「前年同四半期の情報を作り直す取扱い」による場合、規則上は、報告セグメントごとの利益等に関する情報とは別に、「4.報告セグメントの変更等に関する事項」に記載するものとされているが(四半期連結財規15条2項、同様式第一号 記載上の注意8、四半期財規22条の3第2項、同様式第一号 記載上の注意8)、基本的には比較情報を修正することになるのではないかと考えられる。