棚卸資産の評価に関する会計基準 第1回:棚卸資産の評価に関する会計基準(制度趣旨、適用範囲等)

公認会計士 浦田 千賀子
公認会計士 湯本 純久
公認会計士 七海 健太郎

1. はじめに

企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下、「棚卸資産会計基準」という)が平成20年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。その後、平成20年9月に改正されています。

この解説シリーズにおいては、棚卸資産会計基準の適用に当たっての実務上のポイントを解説します。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをお断り申し上げます。

 

2. 棚卸資産会計基準が設定された経緯、基準適用の範囲

棚卸資産会計基準は、他の会計基準との整合性や棚卸資産の評価基準として低価法を原則とする国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点からそれまでの原価法と低価法の選択適用を見直し、収益性の低下による簿価引き下げという考え方に基づいた評価基準や開示方法に関して整備したものです。本会計基準の適用の範囲は、棚卸資産を「通常の販売目的で保有する棚卸資産」と「トレーディング目的で保有する棚卸資産」に区分して、前者については、収益性の低下によって帳簿価額を切り下げること、後者については、市場価格に基づいて評価することを定めています。

 

3. トレーディング目的で保有する棚卸資産の評価基準、表示

トレーディング目的で保有する棚卸資産については、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額(評価差額)については、当期の損益として処理します(棚卸資産会計基準第15項)。トレーディング目的で保有する棚卸資産として分類するための留意点や保有目的の変更の処理については、「金融商品に係る会計基準」における売買目的有価証券の取り扱いに準ずるものとされています(棚卸資産会計基準第16項)。

トレーディング目的で保有する棚卸資産に係る損益の表示は、原則として関連損益を純額で売上高の計上区分に計上します。ただし、当該金額の重要性が乏しい場合には営業外収益または営業外費用として計上することができます(財務諸表等規則第72条の2、連結財務諸表規則第51条の2)。



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