2019年3月期 有報開示事例分析 第4回:税効果会計基準の一部改正(発生原因別内訳における評価性引当額の区分及び重要な変動の内容)

2020年2月7日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 加藤 大輔

Question

企業会計基準28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(以下、「税効果会計基準一部改正」という)の適用に伴う開示内容(発生原因別内訳における評価性引当額の区分及び重要な変動の内容)の状況は?

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:2019年8月
  • 調査対象期間:2019年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:
    以下の条件に該当する216社(うち、連結財務諸表作成会社は211社)
    ① 2019年4月1日現在、JPX400に採用されている
    ② 3月31日決算
    ③ 2019年7月1日(法定提出期限)までに有報を提出
    ④ 日本基準を採用

【調査結果】

(1) 発生原因別の注記における評価性引当額の区分

調査対象会社について、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳(以下、「発生原因別の注記」という)における繰延税金資産から控除された額(以下、「評価性引当額」という)の区分の状況を分析した結果は、<図表1>のとおりである。

繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載しており、かつ、評価性引当額を記載している会社のうち、多くの会社が税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額を区分して開示していた。

<図表1> 発生原因別の注記における評価性引当額の区分状況

  会社数
(連結)
会社数
(個別)
繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として「税務上の繰越欠損金」の記載あり 評価性引当額の区分あり 106 33
評価性引当額の区分なし 54 14
評価性引当額の記載なし 1 0
小計 161 47
繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として「税務上の繰越欠損金」の記載なし (※) 50 169
合計 211 216

(※) 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳に「税務上の繰越欠損金」の項目を記載しているものの、2019年3月期の金額を記載していない会社(例えば、比較年度の金額のみを記載しており、2019年3月期の欄を"-"としている会社)を含めている。

(2) 発生原因別の注記における評価性引当額の変動の主な内容の記載状況

調査対象会社について、発生原因別の注記における評価性引当額の変動の主な内容の記載状況を分析した結果は、<図表2>のとおりである。
評価性引当額を記載している会社208社のうち、その変動内容を記載している会社は58社あった。

<図表2> 発生原因別の注記における評価性引当額の変動の主な内容の記載状況 (※)

  会社数
繰延税金資産の発生原因別の主な内訳に「評価性引当額」の記載あり 評価性引当額の変動内容の記載あり 58
重要な変動がない旨を記載 4
評価性引当額の変動内容の記載なし 146
小計 208
繰延税金資産の発生原因別の主な内訳に「評価性引当額」の記載なし 8
合計 216

(※) 連結財務諸表が作成されている場合には、個別税効果注記において評価性引当額の重要な変動に係る主な変動理由の記載は求められないことから、連結税効果注記において、当該記載状況を判断している。

(旬刊経理情報(中央経済社)2019年9月20日号 No.1556「2019年3月期 「有報」分析」を一部修正)