2022年3月期 有報開示事例分析 第6回:実務対応報告41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」の開示

2022年12月12日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 兵藤 伸考

Question

2022年3月期決算に係る有報の「ストック・オプション等関係」の注記において、実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」の開示の状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2022年8月
  • 調査対象期間:2022年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する2,166社
    ① 3月31日決算
    ② 2022年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ③ 日本基準を採用している

【調査結果】

2021年1月28日に、企業会計基準委員会(ASBJ)より実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」(以下「株式無償交付取扱い」という。)が公表された。

株式無償交付取扱いでは、費用の認識や測定は企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「ストック・オプション会計基準」という。)の定めに準じることとしていることから、ストック・オプション会計基準等における注記事項を基礎とし、ストック・オプションと事前交付型、事後交付型とのプロセスの違いを考慮して、企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下「ストック・オプション適用指針」という。)の定めに準じて、次のような注記項目が定められている(株式無償交付取扱い52項、20項)。

  • 事前交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において権利未確定数が存在したものに限る)
  • 事後交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において権利未確定数が存在したものに限る、ただし、権利確定後の未発行株式数を除く)
  • 付与日における公正な評価単価の見積方法
  • 権利確定数の見積方法
  • 条件変更の状況

調査対象会社について、「ストック・オプション等関係」の注記事項において取締役の報酬等として株式を無償交付する取引の内容を記載している事例を調査した結果は<図表>のとおりである。

<図表> 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引の内容を注記している事例

内容 会社数(社)
事前交付型 11
事後交付型 2
合計 13

注記事例が少ない要因として、株式無償交付取扱いは、会社法第202条の2に基づいて、上場会社が取締役等の報酬等として株式を無償交付する取引を対象としており、引き続きいわゆる現物出資構成による取引により株式報酬を付与している会社が多いためと考えられる。

この点、インセンティブ報酬の各制度における開示を含む会計上の取扱いについて会計基準等により整備される必要があると思われるが、この「いわゆる現物出資構成による取引に関する会計基準の開発」については、2021年11月の基準諮問会議(現、企業会計基準諮問会議)に上程され、本項執筆時点においては、ASBJにおいてテーマアップの要否の検討が行われている。

なお、日本公認会計士協会会計制度委員会研究報告第15号「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」V12(2)①において、ストック・オプションに関する注記は、ストック・オプション会計基準が適用となるものに限定して求められるものではあるものの、注記の趣旨からは、ストック・オプション以外の自社株型インセンティブ報酬を導入している企業において、同様の注記を追加情報として記載することも考えられるとされている。

この点、「ストック・オプション等関係」の注記事項として取締役の報酬等として株式を無償交付する取引の内容を記載している事例を調査したところ、前述の当該注記事例13社以外に「株式無償交付取扱いを適用していない旨」を明示して、いわゆる現物出資構成による取引による株式報酬の内容を記載している事例が2社あった。

(旬刊経理情報(中央経済社)2022年9月20日号 No.1655「2022年3月期「有報」分析」を一部修正)