EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
公認会計士 蟹澤啓輔
わが国の四半期報告制度が創設されてから約3年が経過しました。四半期財務諸表の作成実務についても、ある程度蓄積されてきましたが、財務諸表作成者の開示書類の作成負担が加重である旨の意見や、平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」において四半期報告の簡素化が盛り込まれたことなどを受けて会計基準の見直しが図られ、平成23年3月25日に「四半期財務諸表に関する会計基準」等が改正され、公表されました。
今回の改正は平成23年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から適用されます。3月決算会社の場合、平成23年6月末に四半期決算期末を迎える平成24年3月期の第1四半期から適用を受けることになります。
開示対象の財務諸表についての改正をまとめると以下の表のようになります。
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累計会計期間:
一連結会計年度又は一事業年度(以下、年度)期首から四半期会計期間の末日までの期間
四半期会計期間:
年度が3カ月を超える場合に、当該年度の期間を3カ月ごとに区分した期間
従来は毎四半期ごとに四半期キャッシュ・フロー計算書を作成し、開示することが求められていましたが、財務諸表作成者の作成に係る負担が特に大きいなどの意見を受けて、今回の改正で第1四半期及び第3四半期においては、四半期キャッシュ・フロー計算書の作成を省略することができるようになりました。
ただし、財務諸表利用者の開示情報縮小に対する反対意見にも配慮し、四半期キャッシュ・フロー計算書の作成を省略した場合、期首からの累計期間に係る有形固定資産及びのれんを除く無形固定資産の減価償却費及びのれんの償却額(負ののれんの償却額を含む)を注記し、キャッシュ・フローの状況を把握するための情報を代替的に開示することとされました。
なお、年度内における首尾一貫性を確保する観点から、開示を省略する場合は、第1 四半期より省略を行い、例えば第3四半期から省略することは原則として認められない点に留意が必要となります。
改正前は四半期損益計算書及び四半期包括利益計算書は、四半期累計期間と四半期会計期間の両方の四半期損益計算書及び四半期包括利益計算書を作成し、開示することが求められていましたが、四半期会計期間情報は公表済みの直前四半期財務諸表等を基に推測可能であることなどから、今回の改正により四半期会計期間に係る四半期損益計算書及び四半期包括利益計算書の開示が不要になりました。
なお、会社が任意で四半期会計期間に係る四半期損益計算書及び四半期包括利益計算書を作成し、開示することも認められています。ただし、任意で四半期会計期間に係る四半期損益計算書及び四半期包括利益計算書を作成し、開示する場合は、第1四半期より開示を行う必要があります。
また、上記に関わらず前年同一四半期において四半期会計期間に係る四半期損益計算書及び四半期包括利益計算書の開示を行わなかった場合で、当年度の四半期より開示するときは、前年同一期間(同上)に係る開示は要しないこととされています。
今回の改正では主に財務諸表作成者の作成負担と開示の迅速性及び財務諸表利用者の開示ニーズを勘案して開示項目の簡素化が図られており、開示対象から削除された注記項目や注記の記載内容が見直された項目があります。
① 表示方法を変更した場合には、その内容
② 簡便的な会計処理
③ 1株当たり純資産
④ 発行済株式総数、自己株式数、新株予約権
⑤ ストック・オプション
これらについては、①は過年度遡及会計基準の適用後は過去の財務諸表が組み替えられること、②は財務諸表利用者の判断を誤らせないものに限り認められていることから記載の意義が乏しいこと、③は財務諸表利用者が開示情報から計算可能であること、④は四半期報告書の四半期財務諸表以外の開示項目において入手可能であること、⑤は財務諸表利用者の開示ニーズが必ずしも高くないことなどが考慮され、注記事項から削除されました。
① サービスを取得した場合には、当四半期会計期間において計上した費用の額とその科目名
② 財貨を取得した場合には、その取引による当初の資産計上額(又は費用計上額)と科目名称
③ 権利不行使による失効が生じた場合には、利益として計上した額
前年度末と比較して著しく変動している場合の下記注記
記載内容が見直された項目 |
見直しの内容 |
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重要な企業結合に関する事項の項目 |
当該企業結合が当年度の期首に完了したと仮定したときの影響の概算額等の記載を求めないこととされました。 |
四半期会計期間に関する注記事項 |
任意開示とされました。 |
企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項の例として示す事項 |
(※)総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業集団 |
四半期報告の簡素化のため、四半期報告書の財務情報以外の記載についても一部記載の廃止・簡素化が行われました。主な改正点は下記のとおりです。
記載箇所 |
改正の内容 |
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「主要な経営指標等の推移」 |
経理の状況で3カ月情報を省略した場合、「主要な経営指標等の推移」においても3カ月情報を省略する |
「関係会社の状況」 |
記載の廃止 |
「株価の推移」 |
記載の廃止 |
「事業の内容」等 |
当四半期(連結)累計期間に重要な変更があった場合にのみ記載を行う |
「従業員の状況」 「生産、受注及び販売の状況」 「設備の状況」 |
当四半期(累計)に重要な変更があった場合にのみ「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」において記載する |
「新株予約権等の状況」等 |
当四半期(3カ月)に新株予約権証券が発行された場合にのみ記載を行う |
四半期財務諸表に関する会計基準等の改正(企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項の例として掲げられている項目の見直し)に合わせて、四半期財務諸表における注記事項を掲げている会計基準等についても改正が行われました。また、簡素化の具体的な内容を反映させるため、開示書類を規定する四半期財務諸表等規則等についても改正されました。改正された主な会計基準等は以下のとおりです。
改正された会計基準等
改正された規則等
四半期簡素化