インボイス制度下における立替金の実務

2022年9月1日
カテゴリー 太田達也の視点

公認会計士 太田 達也

適格請求書および立替金精算書の保存

令和5年10月1日から導入されるインボイス制度下においては、一定の事項が記載された帳簿と適格請求書等の保存が、仕入税額控除の適用を受けるための要件になります。

ここで経費を立替払してもらう場合の請求書等の保存が問題となります。経費の支払先(請求書発行者)から立替払をした会社宛に交付された適格請求書をそのまま受領したとしても、これをもって請求書発行者から交付された適格請求書とすることはできない点に留意する必要があります。

例えば、ビル管理事業者・各テナント・公共料金事業者などの三者間において、ビル管理事業者が各テナントの水道光熱費等を立替払し、後日、各テナントと精算する場合、通常であれば、公共料金事業者からは「ビル管理事業者宛」のインボイスが交付されることとなります。請求書の宛名が立替払をした会社となっているため、適格請求書の記載事項(新消法57条の4第1項6号)を満たしません。その場合、会社が仕入税額控除を行うためには、立替払を行った会社宛の適格請求書に加え、立替払を行った会社が作成した立替金精算書の交付を受け、経費の支払先である会社(請求書発行者)から行った課税仕入れが自社のものであることが明らかにされている場合に、その適格請求書の写しおよび立替金精算書の保存をもって、経費の支払先である会社からの課税仕入れに係る請求書等の保存要件を満たすことになります(インボイス通達4-2、適格請求書Q&A・問78)。

インボイス制度下における立替金の実務 図1

この場合、立替払を行う会社が適格請求書発行事業者以外の事業者であっても、経費の支払先の会社が適格請求書発行事業者であれば、仕入税額控除を行うことができることは言うまでもありません。

なお、立替払の内容が、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れに該当することが確認できた場合には、一定の事項を記載した帳簿を保存することにより仕入税額控除を行うことができます。この場合、適格請求書および立替金精算書の保存は不要となります。

立替金精算書の記載内容

立替金精算書は、適格請求書が実質的には(立替払を行った会社ではなく)課税仕入れを行った会社(立替払を受けた会社)のものであることを明らかにするためのものであり、具体的な記載事項や様式などは明らかにされていません。課税仕入れを行った(立替払を受けた)会社に係る宛名、立替払を行った会社の名称、支払日、支払内容および支払金額等が記載されていれば問題ないと考えられます。

ビル管理事業者が各テナントの水道光熱費等を立替払し、後日、各テナントと精算する場合の立替金精算書の記載例を示すと、次のようになります。なお、あくまでも一例に過ぎません。

インボイス制度下における立替金の実務 立替金精算書の記載例

図表中の番号は、次の適格請求書の記載事項です。

① 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容および軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の税抜価額または税込価額の合計額および適用税率
⑤ 税率ごとに区分して合計した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける当該事業者(課税仕入れを行った者)の氏名または名称

交付する適格請求書のコピーが大量となる場合

立替払を受けた者に交付する適格請求書のコピーが大量となるなどの事情により、立替払を行った会社(先の図表のB社)が、コピーを交付することが困難なときは、立替払を行った会社が経費の支払先(先のC社)から交付を受けた適格請求書を保存し、課税仕入れを行った会社(先のA社)に立替金精算書を交付することにより、A社はB社が作成した(A社の負担額が記載されている)立替金精算書の保存をもって、仕入税額控除を行うことができます。

ただし、この場合、B社は、その立替金が仕入税額控除可能なものか(すなわち、適格請求書発行事業者からの仕入れか、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れか)を明らかにし、また、適用税率ごとに区分するなど、A社が仕入税額控除を受けるに当たっての必要な事項を立替金精算書に記載しなければならない点に留意する必要があります

なお、仕入税額控除の要件として保存が必要な帳簿には、課税仕入れの相手方の氏名または名称の記載が必要となりますし、その仕入れ(経費)が適格請求書発行事業者から受けたものであることを確認できるように、立替払を行ったB社とA社の間で、課税仕入れの相手方の氏名または名称および登録番号を確認できるようにしておく必要があります。ただし、これらの事項について、別途、書面等で通知する場合のほか、継続的な取引に係る契約書等で、別途明らかにされているなどの場合には、立替金精算書において明らかにしていなくても差し支えありません。

※ 経費の支払先の登録番号を明記するなど、立替金精算書のみでインボイスの必要事項を満たす必要があります。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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