旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第49回 すべての人がZestyに活きれる社会を作りたい


伊藤 由起子
株式会社ゼスト 代表取締役

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2021年4月1日特大号に掲載された記事をご紹介します。

1988年に株式会社ゼストは誕生しましたが、この当時、ZESTを英和辞典で調べると「わび・さび」と訳されていました。なぜこんな訳になってしまうのだろうと、不思議に思ったものです。今になると、「禅」と通じるからなのかな、と勝手に解釈しています。


そもそもZESTってどんな使われ方をしているのでしょうか? アメリカにはZesty Cheeseというスナックがありますが、この場合、ちょっと古いCMになりますが「カリッとサクッと美味しそう」という意味になります。Zesty Soapという石鹸は「クリーミーで泡立ちよい」、Zesty Treeだったら「葉が枯れることのない常緑樹」、Zesty Personなら「元気溌剌、若々しい、情熱的」という意味になります。ZESTYという形容詞は続く名刺によって、まったく違う意味になります。共通しているのは、その名詞の最高の状態を表しているという点だけ。


であれば、その最高の状態って、人によって定義が異なっていいはず。たとえば、Zesty Soapの定義を「頑固な油汚れを一瞬で取り除く」とする人がいてもいい。そこで私たちは「Zesty Men / Womenとなり、Zesty Systemを世界に届けよう!」という意味を込めて、ZESTという社名にしました。これがとても禅問答なのです。そもそもZestyな人ってどんな人? Zestyなシステムってどんなシステム? そこの定義から始めないといけません。そして、最高を目指し続けるわけですから、妥協ができないし、終りもありません。時代が変われば、答えもどんどん変わっていきます。変わらないのは、最高を目指す姿勢だけ。


実は、私がIT業界に入った40年前は女性がほとんどいませんでした。その中で、認めてもらうには、人の数倍できる程度ではダメで、仕事を回してもらうには、軽く10倍以上の差をつけるしかありませんでした。一見無理と思われるかもしれませんが、実は意外と簡単で、圧倒的な量の経験を積めばいいだけです。そのために、長時間という武器と知恵を使いました。いかに短時間でより多くの量をこなせるか、生産性の工夫と改善をし続けました。この何かを追い求めるスタイル自体が、Zestyという考え方の原点になったのかなと、今、振り返ってみると思います。


その後、自分の居場所を作るために、25歳で起業。初期のメンバーはみな「自分の居場所が必要」な人たちばかりで、優秀だけど日本の社会では活きにくいダイバーシティな環境だったため、「すべての人がZestyに活きれる社会」という考え方が自然と最初からありました。社員の能力を最大限に活かすだけでなく、お客さまの能力を最大限に活かせるようなシステムという観点でずっといろんなシステムを作り続けたため、いくつもの日本発/世界初が生まれました。今は「2025年問題の介護の人手不足をなくす」にチャレンジしていて、在宅医療業界に従事する人達だけでなく、高齢者も「Zestyに活きれる社会」になるよう日々精進しております。

伊藤 由起子


伊藤 由起子(いとう・ゆきこ)
株式会社ゼスト 代表取締役

略歴
1962年生まれ。幼少期を英独米で過ごす。大学在学中、システム会社で、日本女性初かつ同社トップのプログラマーとなる。25歳で株式会社ゼストを起業。孫正義自慢の「3日間で月次決算ができる日次決算」システムなどを多数発明。「あらゆる人が活かされ、活躍できる世界を創る」ことをミッションにソリューションを提供し続けている。2016年、「500 KOBE」で全世界からの20社に選出。19年には「HIMSS & Health 2.0 Japan 2019」ピッチコンテストにて最優秀賞&アフラック賞をW受賞。