旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第58回 サプライチェーンから考えるジェンダー平等への新たな一手

鈴木世津
ヒューネクスト株式会社 創業者兼CEO
前ウィコネクトインターナショナル日本プロジェクトディレクター

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2022年1月10日・20日合併増大号に掲載された記事をご紹介します。

明けましておめでとうございます。企業のみなさまの関心は、新型コロナウィルスの感染動向、経済の立て直し、そして地球環境の持続性をいかにして実現するのかではないでしょうか。このジレンマを解くには、これまでの生産性ありきの価値観では無理です。真の豊かさに基づいた価値観を手がかりに、イノベーションをもたらす新しいゲームを直ちに始めなくてはなりません。その新しいゲームの一つが企業生態系の多様化を促進するサプライヤーダイバーシティです。


その多様性グループは複数あり、その企業の51%以上の株をマイノリティーが所有する企業のことを指し、主に女性、障がい者、LGBTQ、そして人種的少数派といったグループがその例です。なかでも女性が所有する企業は、世界の総企業数の約3割に相当すると世界銀行のレポートがあるにもかかわらず、国際NPOウィコネクトインターナショナルの調査では政府や大企業の総調達額に対して未だ1%も関与していないことがわかっています。私はご縁あって4年前にこのウィコネクトインターナショナルに出会い、女性が所有する企業(Women-Owned Business以下WOB)をサプライチェーンにつなげる活動の日本ディレクターに就任いたしました。我ながら絶妙なタイミングでありました。なぜならコロナ禍によってむしろこの活動は加速したからです。日本市場のふたを開けてみるとWOBは日本全国あらゆる業界に存在し、男性優勢の製造業でも女性事業承継者がしなやかに事業拡大している事実が判明しました。(2019年女性企業家実態調査実施191社回答)インテル、アクセンチュア、ジョンソン・エンド・ジョンソン、EYといった多国籍企業が日本市場においてウィコネクトインターナショナルの認定を受けたWOBからの調達を開始しています。活発化の理由は、イノベーションを必要とする時代に、長らく舞台袖にいた女性社長から生まれるアイディアや提案が、大企業の盲点とされるものであったからです。そしてサプライヤーを下請けとして利用する考え方を改め、重要な協業パートナーとして迎え入れ、多様性あるサプライチェーンを育むことは「価値創造の源泉」であると気付き始めたからです。同時にサプライヤーは重要な顧客でもあります。売買のダイナミズムに循環する経済生態系は生まれ、企業内の多様性の有り様が社会の実態を映し出す鏡ようになることで、次なる経済の道が拓けていきます。

さて、御社は多様性のある企業から調達をうけているでしょうか。まだという方は、一度女性社長との対話から始めてみませんか。ぜひ私にお声がけください。女性社長たちが気づきえた社会の盲点と発想の源泉に触れてください。おそらくもっと関係性を深めたいと感じるに違いありません。サプライヤーダイバーシティは2022年のジェンダー平等推進の切り札になるでしょう。

鈴木世津

鈴木世津(すずき せつ)
ヒューネクスト株式会社 創業者兼CEO
前ウィコネクトインターナショナル日本プロジェクトディレクター

略歴
2004年独立起業。目標達成型言語習得トレーニングと地元企業のグローバル化コンサルティングを提供。起業経験とコンサルティング経験が評価され、2018年4月に国際NPOウィコネクトインターナショナルの日本プロジェクトディレクターに就任。日本初のサプライヤーダイバーシティを始動させ、女性企業の取引拡大に貢献。3年半の役務を終え、2022年1月より女性サプライヤーのトラックに活躍の場を移す。