旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第60回 キャリア以前に女性であることに誇りを持ち、その特性を最大化する

山川 景子
イヴレス株式会社 代表取締役CEO/イヴレスホスピタリティ合同会社 代表社員


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2022年3月10日特大号に掲載された記事をご紹介します。



女性であることも1つの特性になった今、誰もが迷いながら生きて、社会活動しています。何のためにキャリアを積んでいくのか? 自分の問いに答えられない方も多いでしょう。

若い頃の私は、結婚、出産、家庭を持つことなど縁遠い人生と思っていましたが、実際に結婚生活22年、子供たちも成人になって思うのは、女性は女性であることを受け止めて、仕事と家庭を両立することで、さまざまな苦難を経験する方が楽しい人生を送れるのではないかということです。もちろんすべてはご縁の連鎖で、散らばるパズルが合致したときに果たせるものですが、人生100年時代となった日本では、子育て中の20年は人生のおおよそ20%程度です。農水省の統計によれば女性の平均寿命は87歳、2065年には91歳まで増伸していくとあります。もしも出産したとしても、通常の子育て期間が終わってから40年以上も自由時間があると考えたら女性のキャリアのつくり方も変化して当然でしょう。

私はずっと今しかないと焦り、多くのモノを一緒に抱えて失敗が多かったのですが、子育てとキャリアに関しては正解がない分、2つ抱えても両方とも何となく成熟し、子育てにより自分の人生も振り返りができました。何より人格変化でしょうか、私はこんな良い人ではなかったと実感することが多いこの頃です。子育てする中で逃げられない環境がマインド強化に役立ったのかもしれません。

何らかの資格すら1つも取得してこなかった私は、覚悟を決めて学ぶこともできず、何をやっても中途半端で、褒められたキャリアの歩みではありませんでした。明確なゴールを決めて歩んだとしても、残酷なことに、活かされるキャリアと失われるキャリアがあります。人事に絡み、履歴書を見る機会が多いのですが、みなさん驚くほどの資格と実務を経験しています。これは私の独特な考えなのですが、何かを1つ得ることによって、失うモノがあるということです。得ることで感じる満足度が次の挑戦を邪魔するのです。結果、その資格や経験が重要であればあるほどに自分の中に壁ができて、次へのステップに向かえないのです。壁は年齢を重ねるほどに高くなります。何もなければ常に何かを求める貪欲さが生まれ、節操なく挑戦できる利点があります。開き直って潔く次へ進むことは、逆にカッコいいかもしれません。

キャリア形成において無駄なことは何一つ存在しません。すべて自分の経験になります。どんな立場であろうとも焦らず、先は長いと思うことが大事です。明確なゴールよりも、常にゴール手前で次の何かに挑戦していくことです。どんなことも楽しめなければ継続できません。それは起業であっても同じです。ぜひ自分の人生として、女性であることを最大化し、次のキャリアを重ねてほしいと思います。



山川景子

山川景子(やまかわ・けいこ)
イヴレス株式会社 代表取締役CEO/イヴレスホスピタリティ合同会社 代表社員

略歴
大阪府出身。在版出版社を経て、1990年会社設立。98年に事業内容を変更し、現在のイヴレス株式会社に。2014年「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」に認定、16年ヒノキリボンで「グッドデザイン賞・アワード」、21年「おもてなしセレクション金賞」受賞。18年イヴレス100%子会社イヴレスホスピタリティ合同会社を設立。静岡県熱海市、伊東市、沖縄県恩納村にてスモールラグジュアリーホテルを、東京都新宿区にて小規模ホテルを運営受託。21年東京証券取引所TOKYO PRO Marketに上場。EY Winning Women 2021ファイナリスト。福祉とデザインにも貢献。男児2人の母親でもある。



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