旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第67回 コンフォートゾーンの先に ~カテゴライズされない自分の居場所

ウィム・サクラ
株式会社Plusbase 共同代表


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2022年11月10日号に掲載された記事をご紹介します。



2年前まで医療現場で看護師として働いていた私が、スタートアップを立ち上げるなんて夢にも思いませんでした。そんな私がなぜ、「働く人のメンタルヘルス」という大きな社会課題に対して創業する決意をしたのか、そのきっかけとなった「カテゴライズされない自分の居場所」についてお話しします。

私のルーツはスリランカで、日本が大好きな両親の下、日本で生まれ育ちました。いつしか日本の進んだ医療を世界に広めたいという思いで看護師を志し、念願の急性期の看護師として配属をされます。しかし、過酷な現場でいつしか心身のバランスを崩し、現場を離れる大きな挫折を経験しました。

その後元々明るい性格だった私がなぜ・・・?という思いで、心理学や認知行動療法を学び、再び看護師として社会復帰します。しかし、復帰後も職場の上司や同僚、後輩までも自分と同じ経緯を辿るのを目の当たりにし、業界の根深い問題であり中から変えるのには限界があると感じました。その後、働く人の心のサポートを学びたいという思いから心療内科に移り、多くの学びやりがいも感じていましたが、一方で「命を守る人々の心を守る」にはどうしたらよいのだろう、と日々悶々としていました。このまま慣れ親しんだコンフォートゾーンにいるだけでは何も変わらないと思い、経済産業省とJETRO主催の「始動」というイノベーター育成プログラムにチャレンジしました。

無事プログラムに採択され、100名の同期とともにそれぞれの解決したい課題やその解決方法などを切磋琢磨していきます。「世界をより良くしたい」と強く思う多種多様な業界の仲間に囲まれ非常に刺激的でしたが、何よりも「看護師だから」「女性だから」「外国籍だから」とカテゴライズされず、ありのままを正当に評価しあえる文化、心理的安全性がそこにはありました。

また、選抜され渡航したシリコンバレーで圧倒的に衝撃を受けたのは、命の現場であり失敗が許されなかった医療業界とは真逆で、常識を覆し世界をより良くしていくイノベーションを産むための「失敗を恐れず許容する文化」があること、そして「Yes,andの精神」でアイデアが拡がっていくデザイン思考が町中で繰り広げられていることでした。そして、なぜあなたがやるのか?(Why you ?)を何度も問われることで、自らを動かす強い原体験に気づき、それが今後の困難を乗り越え走り続けるエネルギーとなること、そういった想いが連鎖し仲間が集まることも実感しました。

無意識に「女性だから」「外国籍だから選挙権もないし」「どうせ社会に正当には評価してもらえないだろう」と考え、声をあげたりチャレンジする勇気すら持てなかった私が、コンフォートゾーンを飛び出すことで、年齢や性別、人種も関係なく正当に評価をしてもらえたり背中を推してもらえる場所に出会えました。失敗を恐れず、自分や人のよりよい幸せのためにもコンフォートゾーンから飛び出してみるのはいかがでしょうか。



ウィム・サクラ

ウィム・サクラ
株式会社Plusbase 共同代表
看護師/認定心理士/健康経営アドバイザー

略歴
名古屋生まれで、スリランカ国籍を持つ。救急看護師時代、心と体のバランスを崩し最前線を離れる挫折を経験。「元々明るかった私が、なぜ?」という思いから心理学を学び、都内心療内科で看護師・認定心理士として働く人の心のサポートを行う。一方で、直接救える人々の限界や、日本、特に医療業界の“働く人の心を守る仕組み“(EAP)の導入が遅れていることに疑問を持ち株式会社Plusbaseを設立。現在は看護師向けメンタルサポート『Ns.be(ナースビー)』を開発中。

  • 経済産業省・JETRO主催「始動Next innovator2020」 6期生シリコンバレー選抜
  • 公益財団法人「パブリックリソース財団」主催「女性リーダー支援基金 ~一粒の麦~」1期生


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