EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
公認会計士 福山 伊吹
5回にわたり、「これだけは知っておきたい!管理入門」シリーズを掲載しています。このシリーズでは、皆さんが会社を経営していくに当たって、日々、直面されるような身近な管理上の問題を取り上げて、どんな解決方法があるのかについて、ご紹介していきます。今回は最終回の経費の管理についてです。
このシリーズに登場するWWN社は、こんな会社です。
それでは、第5回「経費の管理」の中身に入っていきましょう!
WWN社は銀座の直営店とO百貨店の2店舗で製品を販売しており、女性向け衣料を製造する自社の工場を持っています。
WWN社の経理担当社員のみゆきさんは、期末の決算作業の一環で、当期経費の発生額を前期の発生額と比較する分析資料を作成しました。そこで、旅費交通費が前期と比べて2倍に増加していることに気付きました。
経理担当取締役のとおるさんに相談し、原因を調べたところ、WWN社では、販売部門の担当課長B氏が期末日近くに退職したのですが、B氏が在職中に出張旅費として、架空に会社に旅費交通費を請求していたことが分かりました。B氏は直営店の顧客と百貨店の販路を増やすため、ここ1~2年は地方の百貨店へ営業のための出張に行っていましたが、実際には当期の出張経費の中に、実際に出張していない日も出張したとして旅費の申請をしていたものが多数含まれていたのです。
B氏は出張のために立て替えた旅費は、WWN社の所定書類の「立替支払精算書」に出張の日程、目的、金額などの必要な事項を記載して提出していました。勤務状況を示す勤怠表にも同じ期間に出張している記載をして、提出者と承認者の押印個所の両方にB氏自身が押印の上、申請を行っていました。WWN社では、管理職の出張申請と旅費の立替払いの支払承認は、管理職自身の承認で、経理部に回すことになっていました。
皆さんの会社では、このようなことは起こらないようにしたいですね。
上記のケーススタディーは、カラ出張による旅費の請求のケースでしたが、実際には発生していない経費を計上する場合として、
などがあります。
これらを防止するには、立替払いを申請する起票者と、それをチェックする承認者を分け、管理職自身が精算請求を行った場合には、精算書をチェックする部長や役員などの上席者を設けるなど、職務分掌を行うことが有効と考えられます。
また、領収書の領収日、金額、使用頻度に異常がないか、筆跡に不審な点はないかなどを、きちんとチェックすることが必要です。領収書の発行先が特定の相手に偏っていないか、手書きの領収書が多くないかなどをチェックすることも有用です。
その他、従業員の勤怠管理の徹底、出張や接待交際費を支出する従業員個人別の予算管理を行う、従業員のモラルやコンプライアンスの意識を高める教育を行うことが求められます。
→WWN社では、旅費・交際費等の経費の管理につき、申請方法、承認手続、支払処理までを見直しました。管理職であっても、部長もしくは役員などの上長の承認を必要とすることにしました。また、出張の多い従業員は上長が勤務状況もきちんと管理をするように指示を行いました。
→WWN社では、経費の予算管理と増減分析を月次ベースで行い、異常な増減額や異常な増減率が出ている場合は担当者が原因を確認して上司へ報告することにしました。
経費は不正だけでなく処理誤りも含め、1件当たりの金額的は少額のものが多いと思われますが、累積すると多額となります。よって、会社にとって発見が遅れると多額の損害が生じてしまう場合があります。
今回取り上げたケーススタディー以外にも、経費の管理のポイントはいろいろあります。皆さんの会社では、どのくらい管理体制が整っているか、ぜひ一度チェックしてみてください。
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上記以外にも、定期的な人事異動やローテーションを行ったり、連続した営業日の休暇を取得したりすることを制度化することも、経費の支出に関する不正をけん制する機能が期待できます。
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