これだけは知っておきたい!税務入門 第2回 法人税の税額計算のしくみ

戦略マーケッツ事業部 企業成長サポートセンター
パートナー 公認会計士 中川 真紀子

法人税とはどんな税金?

会社も、個人と同様に、日々国からの行政サービスを受けています。国が行政サービスを提供するためにかかるコストを、会社にも負担してもらおうというのが法人税です。

法人税は、個人のかかる税金でいうと所得税にあたります。会社が1事業年度で儲けた利益に対してかかる税金です。
法人税額は、1事業年度で儲けた利益(所得金額)に、一定の税率を掛けて計算します。

法人税額 =会社の儲け
(1事業年度の所得金額)
  × 税率

実は、所得金額の計算には少し複雑な一定のルールがあるのですが、ここでは、所得金額は単純に1事業年度の会社の儲けと考えてください。
所得金額の計算ルールについては、第5回でご説明する予定です。

 

法人税の税率

では、いったいどれくらいの税率で法人税は課されるのでしょうか?
法人税の税率は、法人の種類(第1回「会社が納める税金」参照)によっても異なるのですが、株式会社の場合には下表のようになっています。

 資本金額1億円以下
(中小法人)
資本金額1億円超
(大法人)
①所得金額800万円以下の部分15.0%

②所得金額800万円超の部分25.5%
25.5%

(注)税率は、H26年12月末現在において公表されている税率です。

この表をご覧いただくとおわかりになると思いますが、税率は、会社の資本金額によって少し異なります。
具体的には、資本金額が1億円以下か又は1億円超かによって税率が異なります。資本金額が1億円以下の会社は、一部の所得(800万円以下の部分)に対する税率が小さいため、法人税額全体も1億円超の会社と比較すると小さくなります。

なお、資本金額が1億円以下の会社は「中小法人」といいます。
中小法人に該当すると、一部の所得に対する税率が低くなるほか、さまざまな優遇があります。法人税率は基本となるため、ぜひ覚えておきましょう。

法人税額を計算してみよう

次に、具体的に計算例で見てみましょう。

法人税額の計算例

法人税額ケースⅰ
・資本金額が5000万円の場合
・所得金額は3000万円
ケースⅱ
・資本金額が3億円の場合
・所得金額は3000万円
①所得金額800万円以下の部分120万円
=800万円×15.0%

②所得金額800万円超の部分561万円
=(3000万円-800万円)
×25.5%
765万円
=3000万円×25.5%
法人税額 ①+②681万円
765万円      

<ケースⅰ>

ケースⅰは、会社の資本金額が5000万円の場合です。資本金額が1億円以下であるため、中小法人に該当します。
決算が終わり、会社の顧問税理士による計算の結果、当期の所得金額が3000万円であると報告を受けたとします。

資本金額が1億円以下の場合には、法人税額の計算を2段階に分けて計算します。
具体的には、①所得金額が800万円以下の部分と、②所得金額が800万円超の部分に分けてそれぞれ税額を計算し、これらを足した合計が、会社が納める法人税額になります。

この計算例では、①所得金額800万円以下の部分の法人税額は、税率15%を用いて計算した結果120万円となり、②所得金額800万円超の部分の法人税額は、税率25.5%を用いて計算した結果561万円となります。
よって合計で法人税額は681万円ということになります。

<ケースⅱ>

次に、ケースⅱは、会社の資本金額が3億円の場合です。資本金が1億円超であるため、中小法人には該当しません。
ケースⅱの場合も、ケースⅰと比較できるように、所得金額は3000万円であるとします。

ケースⅱの場合は、ケースⅰのように2段階に分けて法人税額を計算しません。所得金額全体に対して税率を掛けた金額が法人税額となります。
この計算例では、所得金額3000万円に税率25.5%を用いて計算し、765万円が納める法人税額ということになります。

ケースⅰの資本金5000万円の場合と、ケースⅱの資本金3億円の場合を比較すると、同じ所得金額でも、資本金額の大きさが違うことにより、資本金5000万円の会社の方が、法人税額の納付額が84万円(=765万円-681万円)少なくなるということがおわかりいただけるかと思います。

 

会社経営にとって税金は重要

ここまで、法人税のしくみと計算方法を見てきましたが、法人税額の金額は大きいと思いますか? 
法人税率が25.5%ということは、会社が儲けた利益の約4分の1は、法人税として納めなければならないことになります。また、法人税の他、住民税や事業税も納めなければならないため、もっと多くの税金を支払うことになります。

法人税は(住民税や事業税も)、納付期限までに、現金または預金で納めなければなりません。現金または預金で納めるということは、納付するタイミングに、それに見合うだけの現金または預金が手元になければならないということです。こういった点においても、会社経営にとって、税金の基本的なしくみを知っておくことは、とても重要であるといえます。


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