
米国外銀行・金融口座開示様式(FBAR)の新たな提出期限と期限延長制度の導入
Japan tax alert 2015年11月2日号
2015年7月31日に成立したSurface Transportation and Veterans Health Care Choice Improvement Act of 2015により、2016年度米国外銀行・金融口座開示様式(様式FinCEN 114"Report of Foreign Bank and Financial Accounts": 以下「FBAR」)以降、FBARの提出期日が変更となりました(2017年の提出期限が生じるもの)。 同時に、これまでにはなかった期限延長やFBARを提出する初年度の納税者に対するペナルティ免除についても規定されています。
背景
米国外に銀行、投資、その他の口座を有する、又は口座のサイン権を有する米国人(法人、個人は問わない)は、それら口座の合計金額が暦年中に$1万を超える場合、その口座情報をFBAR(現在の様式FinCEN114、旧様式TD F90-22.1)を使用して、米国財務省に電子申告にて提出する義務があります。この報告義務に関しては、米国個人所得税・法人税申告書における質問にも記載もされており、納税者に注意喚起がなされています。なお、2011年より、個人所得税申告書において、様式8938"Statement of Specified Foreign Financial Assets"により、同様の情報が求められていますが、FBARの提出は様式8938とは異なり、別途提出を求められるものです。
これまで、FBARの提出期限は6月30日であり、その延長は認められていませんでした。例えば、2014年のFBARについては、2015年6月30日までに提出する必要がありました。
新ガイドライン
- 期限
2015年の暦年については、これまで通り、2016年6月30日が期限です。2016年及びそれ以後の暦年のFBARついては、翌年4月15日が提出期限となり、個人及び(暦年を事業年度とする)法人の所得税申告書と同じになります。 - 期限延長
FBARについては、以前は認められていなかった6カ月の延長が可能となり、期限延長手続を行うことにより、最終期限は10月15日まで延長されます。なお、期限延長の方法は、所得税申告書に適用される財務省規則条文に則るとありますが、現時点では詳細は不明です。 - ペナルティ免除
「FBAR提出が初めて求められる納税者においては、FBARの期限延長を期限までに行わなかった、又は怠ったことに関するペナルティは当局により免除され得る」と明確に記載されています。
影響
新法による変更は、いくつかの点において、納税者にプラスの影響を与えますが、同時に未解決の問題点もあります。FBARの提出は、個人のみならず法人にも求められますが、その情報開示は複雑です。直接保有する口座のみならず、支配権を有する法人等を通しての米国外口座やサイン権のある口座についても開示しなければなりません。適正な報告をするという点においては、準備に十分な時間がとれるため、期限延長は納税者にとって朗報と言えます。しかし、具体的にどのように期限延長を行うかという点については、明確にされていません。例えば、どのような様式を使うのか、電子申告がなされるべきなのか、納税者に代わり様式作成者が提出できるのか等、多くの不明な点が残ります。初めてFBAR提出が必要となる納税者に対するペナルティ免除も、朗報と言えますが、その詳細についてはやはり現時点では不明です。なお、FBARの未提出について現在もペナルティを課されない手続がありますが(Delinquent FBAR Submission Procedures)、この手続との関連性も不明です。米国財務省又は歳入庁により、2015年末、又は2016年に書面のガイダンスが発表される見込みとなっています。
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