OECD、BEPS最終レポートを公表:アジアパシフィックにおける銀行業界に対する影響

OECD、BEPS最終レポートを公表:アジアパシフィックにおける銀行業界に対する影響

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EY 税理士法人

2015年11月16日
カテゴリー その他

Japan tax alert 2015年11月16日号

経済協力開発機構(OECD)は、税源浸食と利益移転(BEPS: base erosion and profit shifting)に関する2年間にわたるプロジェクトにおいて、15の行動計画すべての重点分野に関する最終レポートを公表しました。これらのレポートは、移転価格ルール、支払利子の損金算入、ハイブリッド、恒久的施設の概念、及び租税条約の特典の制限を含め、国際課税システムにおける主要な要素に係る重要な変更についてOECD及びG20諸国が策定した推奨事項を詳述しています。これには、新たな国別報告書の要件及び2階層となる移転価格文書化の新たなアプローチも含まれています。このプロジェクトは、租税条約、OECDモデル租税条約コメンタリー、移転価格ガイドライン及び国内法の改正を通じて、利益に対する課税が、当該利益を生み出す経済活動が行われている場所及び価値創造の場において、確実に行われるようにすることを幅広く目指しています。

同時にOECDは、OECD及びG20諸国がBEPS推奨事項の導入に関するモニタリングに取り組み、かつこれらの試みにさらなる国々を含めた枠組みを策定する計画を発表しました。多国間協定や金融取引の支払いなどの一部のトピックに関する作業は、2017年まで継続される予定です。

銀行業界は、規制主導の構造改革に係る過去に例を見ない対応と同時並行でBEPSの進展に対処しなければならないという独自の課題に直面しています。本アラートでは、最終レポートから生じる主要な内容のうち、アジアパシフィックの銀行業界にとって関連性の高いものをご紹介しています。

銀行業界にとっての特段の関心事は、利子及び経済的に同等なその他の支払いの損金算入や課税が、BEPSへの取組みにおける主要な重点分野の1つとされていることです。行動4は、企業における利子の損金算入について特に焦点を合わせています。しかし、これは資金調達に関連するBEPS対抗措置の中のツールの1つに過ぎません。特に、ハイブリッド・ミスマッチ・ルール(行動2)、被支配外国法人(CFC)ルール(行動3)、条約の濫用(行動6)及び移転価格(行動8-10)はすべて、銀行の資金調達構造に影響を及ぼします(ただし、これらのそれぞれルールの対象は、単なる資金調達にとどまりません)。

アジアパシフィックの国・地域の多くは正式なOECD加盟国ではないため、推奨事項全体を導入しない可能性がありますが、これらの国・地域の多くはBEPSプロジェクトに関与したため、BEPSの影響はアジアパシフィックにおいても実感されるようになると考えられます。アジアパシフィックのOECD非加盟国がBEPSの提案の一部を導入しない場合であっても、オーストラリア、米国又は欧州の銀行のアジアパシフィックを地域拠点とした金融取引及びグループ構造が、これらの本国で想定されるBEPS関連の国内法の改正による影響を受けるであろうことは疑う余地がありません。

ある国が1つ又は複数の行動を導入することを決定した場合に、異なる各行動がどのように相互作用し得るかが検討されてきました。特に、ハイブリッド・ミスマッチ・ルール(行動2)は利子の損金算入を制限する固定比率ルール(行動4)に先立って適用されるべきであることが既に確認されています。さらに、ある国が利子制限ルールと並行してCFCルールを適用した場合、親会社において課税対象となるCFC所得は、行動4における利子損金算入ルールの下で、固定比率ルール及びグループ比率ルールを適用する際に親会社のEBITDAの計算に含められる可能性があります。行動4によって、各グループがグループ内における利子の支払い水準の引下げを促されると予想されます。したがって、これはさらに各国のCFCルールに対する圧力を低下させると見込まれます。

銀行業界においては、各国・地域の国内法及び租税条約が幅広く改正される可能性があるため、推奨事項の複雑性と相まって、短期と長期の両方にわたる資金調達アレンジメント、資本及びグループ構造の潜在的な寿命について、レビューすることが重要になっています。

※各行動別の詳細は、PDFでご覧いただけます。

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