共通報告基準(CRS)のアジア各国の動向及び適用開始に向けて

共通報告基準(CRS)のアジア各国の動向及び適用開始に向けて

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EY 税理士法人

2015年12月2日
カテゴリー FATCA/CRS

Japan tax alert 2015年12月2日号

OECDにより策定された共通報告基準(Common Reporting Standard:CRS)は、各国において国内法制化されたうえで、早期適用国においては2016年1月1日から適用されることになります。今後のCRS対応に向けてのプランを立案する上で重要となる、アジア太平洋地域におけるCRS対応状況の最新情報をお届けします。

日本は2018年適用国として(2018年から税務当局間で情報交換が開始される国)、日本政府は様々な業界団体などの利害関係者と協議を終え、今年3月31日にCRS関連法及び政省令を公表しています。本邦金融機関は2017年1月1日から、CRS要件に従って対象口座の特定手続を行い、報告対象となる顧客口座情報を翌年4月30日までにe-Taxなど所定の方法にて所轄の税務署へ申告を行う必要があります。2016年12月31日以前の既存の顧客口座のうち、報告対象となる顧客口座を特定するための手続は、2018年末までに完了することが義務付けられています。税務当局からは、今後、追加ガイダンスが公表される見込みです。

香港は2018年適用予定国であり、香港政府は引き続き2018年にCRSを導入することを明言しています。また、パブリックコンサルテーションを通じて利害関係者からの意見募集を今年6月に完了しています。当該パブリックコンサルテーションには、金融機関や業界団体が積極的に参加しています。香港政府は2016年中に、CRS実施のための国内法の整備を完了することを目指しており、現在CRS関連法案の作成に取り組んでいます。

中国も2018年にCRSを導入すると明言しており、CRSの導入に向けて業界の利害関係者と協議が行われています。

また、シンガポールも香港・中国と同じ2018年にCRSの導入に向けて準備に取り組んでいます。シンガポール政府は、CRSに関する利害関係者との協議を間もなく開始する予定です。

インドはCRSの早期適用国の1つであり、インド政府はインドの金融機関がCRSを遵守できるよう、インド税法の一部改正を告示しています。インドは今年、米国との間で外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に関する政府間協定を締結しており、インドがCRS及びFATCAそれぞれの制度で要求される口座情報の報告を義務付けるという複合アプローチを最初に採用した国の1つであることは注目に値します。

韓国もCRSの早期導入国の1つであり、CRS導入作業を進めており、現在は政府間タスクフォースを創設して関連法案の作成に取り組んでいます。CRS関連法の整備プロセスの重要な部分は2015年中に完了する予定であり、政府間タスクフォースは同プロセスの一環としてパブリックコメントを募集し、CRS導入に関する意見を募集する予定となっています。

OECDでは最近、共通報告基準(CRS)導入ハンドブックやCRS導入がディスクロージャープログラムへ与える影響に関する税務当局向けの報告書を公表しています。最近発表された報告書は以下の通りです。

  1. 共通報告基準(CRS)導入ハンドブック
  2. オフショア・ボランタリー・ディスクロージャー・プログラム
  3. OECDモデル租税情報交換協定(TIEA)

これらの報告書は税務当局向けに作成されたものですが、各金融機関にとってもCRSが各国の国内法にどのように反映されるかを理解する上で参考になるものとなっています。特に、「CRS導入ハンドブック」では、国内法制化のための主要な課題について詳細な情報が提供されています。

※本アラートの全文は、PDFでご覧いただけます。

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