
申告漏れ件数が過去最多に 国税庁による平成26年度における移転価格実地調査
Japan tax alert 2016年1月13日号
国税庁は、2014年(平成26年)事務年度における移転価格税制に係る実地調査において、移転価格税制を導入した1986年以来、申告漏れ件数が過去最高の240件となり、更正あるいは納税者が修正申告を行ったことを発表しました。
法人税調査の際に、税務署も移転価格調査を行う事案が増えたため、移転価格にかかる更正あるいは修正申告の件数が増加していることが推測されます。複数年度に渡り営業損失を計上した後、営業利益に転じ、繰越欠損金を使い始めた企業が移転価格調査の対象になっているケースも顕著です。低金利貸付及び金利無償貸付で受取利息の申告漏れを指摘されるケースも増えています。
移転価格の専門的な調査は通常、東京国税局調査第一部国際情報第1部門~3部門、大阪国税局調査第一部国際情報第一課、名古屋国税局国際情報課によって行われていますが、最近は移転価格調査ではなく、法人税調査において国外関連取引について、国外関連者への寄付金課税を行う案件が増えています。国外関連者への寄付金課税が行われるパターンとしては以下が挙げられます。
- 親会社の活動が海外子会社への役務提供と見做されて、経費の損金算入が否認される場合
- 外国企業の子会社が取引単位営業利益法を適用し、所得を減額する移転価格の一括調整を行っている場合に、1.一括調整の実施が事前に合意されていたことが確認できる証拠がないとき; 2.調整金額の算定がベンチマーキングスタディに依拠していない、又は、算定方法が年度により異なっていて、移転価格ポリシーに基づかず、恣意性が散見されるとき
経済協力開発機構(OECD)による、税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)に対する行動計画に基づき各国が法制化を行うと、各国の税務当局は今後ますます移転価格税制の執行を強化するであろうと思われます。企業には、移転価格ポリシーの策定、移転価格文書の作成、事前確認申請等で移転価格課税リスクを管理する対応が迫れています。
※本アラートの全文は、PDFでご覧いただけます。