2016年度英国予算速報

2016年度英国予算速報

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Japan tax alert 2016年3月18日号

2016年3月16日、ジョージ・オズボーン英国財務大臣は2016年度の国家予算を議会で発表しました。この予算書には多数の予想されていた改正(OECDの税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトに沿ったいくつかの改正を含む)並びに法人税率及び欠損金の利用に係る法人税関係の予想がされていなかった改正が含まれています。

要約

予算書は、ビジネスに対して魅力的な税制を維持しつつ、同時に課税ベースの拡張及び租税回避を防止するという現在の政府の継続的な重点施策を示しています。

英国で事業を行っている日本企業にとっての注目点は、英国法人税率が2020年には17%に引き下げられるということです。以前に発表された18%よりもさらに低い税率となります。この改正は、日本タックスヘイブン対策の適用対象とならない日本企業にとっては朗報です。

また、利子の損金算入制度はBEPS行動4に合わせて制限が加えられます。移転価格規則は、関連するOECDガイドライン及びBEPS行動に沿って改正されます。欠損金の利用は、より柔軟になりますが、一定の場合には、新しい利用制限の対象となる場合もあります。

大企業、特定の産業、及び特別な事実・状況にのみ関係する改正もあるため、日本企業グループは自社の税務ポジションの詳細な検討により、改正規定適用の有無を判断する必要があります。

企業及びビジネスに関するポイント
  • 法人税率は2020年4月までにさらに17%に引き下げられます。法人税率は2017年4月までは20%で、2015年の時点では2020年に18%に引き下げると提案されていましたが、予算書では、さらに1%税率が引き下げられます。
  • BEPS行動4に沿った利子の損金算入制限が2017年4月から導入されます。主要改正は、純支払利子の損金算入を英国企業グループのEBITDAの30%までに制限するものです。ただし、全世界グループのグループ利子比率適用による損金算入の例外規定も設けられています。また、英国グループの純支払利子2百万ポンド(本規定適用前)の損金算入を認めるデミニマスルールが適用されます。
  • 税務上の欠損金に関する改正として、利用に関する柔軟性を高める一方、欠損金の利用限度額につき制限を設けました。英国法人税法上の繰越欠損金制度は欠損金をその性質に応じて区分し、各々の区分の欠損金の利用制限規定を定めている複雑な制度となっています。これまでの規則は、繰越期限や相殺割合に制限はありませんでした。今回の改正による緩和措置で、2017年4月1日以後に発生した欠損金についてはグループ内、又は他の区分の所得との相殺が可能となりますが、5百万ポンド超の課税所得がある場合、超過所得に関して繰越欠損金の利用は超過額の50%までに制限されます。
  • 2016年財政法案で定められた通り、BEPS行動2に沿って、ハイブリッドミスマッチ取決めの無効化規則が2017年1月1日から導入されます。
  • ドイツとの協定及びBEPS行動5に沿って、パテントボックス規則の改正が2016年7月1日から施行されます。
  • 2016年4月1日から、「移転価格ガイドライン」が改正され、BEPS行動による経済開発協力機構(OECD)移転価格ガイドラインの改正点を取り込むことになります。
  • 大企業の法人税の予定納税制度に関し各納付期限が早期化されますが、この改正は2019年4月1日以降に始まる会計年度から適用されることとなります(2017年開始予定から延期)。
  • 株式の処分に係るキャピタルゲイン課税の免税措置(substantial shareholding exemption、実質的株式持分免税措置)及び源泉税課税に係る租税条約パスポートスキームの改定に関するコンサルテーションが行われます。
特別な産業に従事する企業に適用される改正
  • 石油収入税の実質的廃止、石油・ガス採掘に対する追加課税の減額を含む石油・ガス産業支援措置。
  • 銀行に対する上述の欠損金利用制限規則はさらに厳格化され、2016年4月1日以後、銀行は2015年4月以前からの繰越欠損金の利用限度額は所得の25%に制限されます。
  • 商業不動産に課される印紙税の改正(3月17日午前零時より施行)。新しい税率体系では、取引価額の15万ポンドまでの部分は0%、次の10万ポンドまでは2%、25万ポンドを超える部分の対価は5%の税率となります。高額リース(現在価値が5百万ポンド超)には2%の税率が課されます。
  • オフショア不動産デベロッパーに対する課税措置が2016年度財政法案の報告書段階で導入予定。
  • 保険料税を0.5%増税。
  • 高糖度のソフトドリンクを生産する企業に対する新たな課税として、砂糖税を2年後に導入。

※本アラートの全文は、PDFでご覧いただけます。

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