海外資産管理は国際的包囲網へ 海外資産の自動的情報交換に関する共通報告基準(CRS)適用開始

海外資産管理は国際的包囲網へ 海外資産の自動的情報交換に関する共通報告基準(CRS)適用開始

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EY 税理士法人

2016年4月28日
カテゴリー FATCA/CRS

Japan tax alert 2016年4月28日号

日本の富裕層の資産管理体制が、国税庁が導入した国外財産調書及び財産債務調書制度により強化されたことは2016年2月10日付のジャパン・タックス・アラートでお伝えしたとおりです。しかし、今後、「共通報告基準(CRS: Common Reporting Standard)」の導入により、富裕層が保有する資産の管理・調査は次のステージに入ることになり、国内の納税者も注意が必要となります。

CRSとは、経済協力開発機構(OECD)が策定した、海外資産の自動的情報交換に関する国際基準です。これにより、金融資産の情報を各国税務当局間で効率的に交換し、外国の金融機関の口座を通じた国際的な脱税及び租税回避に対処することが目的です。

すでに米国では、2008年のスイスUBS事件(スイス大手金融機関が米国人富裕層の脱税をほう助したとされる事件)を受けて、「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」が成立し、独自の情報交換の制度が採用されています。CRSは、各国がFATCA対応で米国と合意しているのを受けて、別の国際的枠組みを構築するものです。CRS参加国の多くはFATCA協定国でもあります。CRSはFATCAの政府間協定をベースに設計された制度ではあるものの、様々な点でギャップが存在し、かつFATCA自体、CRS施行後も制度としては併存する見込みです。

各国の税務当局は、自国の金融機関(銀行、証券会社、信託銀行、保険会社等)から非居住者の口座情報の報告を受け、その情報を口座保有者の居住地国の税務当局と情報交換を行います。交換される情報は、口座保有者の氏名・住所、納税者番号、口座残高、利子・配当の年間受取総額が含まれます。

CRSは各国において国内法制化されたうえで、イギリス、ドイツ、韓国、インドなどの早期適用国では、既に2016年1月1日から適用されています。2016年1年間の口座情報が2017年9月に、早期適用国間で交換されることになります。

共通報告基準、日本では

日本政府は、2018年適用国として(2018年から税務当局間で情報交換が開始される国)、業界団体など様々な利害関係者と協議を終え、2015年3月31日にCRS関連法及び政省令を公表しています。本邦金融機関は2017年1月1日から、CRS要件にしたがって対象口座の特定手続を行い、報告対象となる顧客情報を翌年4月30日までにe-Taxなど所定の方法にて所轄の税務署へ申告を行う必要があります。2016年12月31日以前の既存の顧客口座のうち、報告対象となる顧客口座を特定するための手続きは、2018年末までに完了することが義務付けられています。

本アラートの全文は、PDFでご覧いただけます。

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