OECD理事会がBEPS報告書を取り入れたOECD移転価格ガイドラインの改定を承認

OECD理事会がBEPS報告書を取り入れたOECD移転価格ガイドラインの改定を承認

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EY 税理士法人

2016年6月20日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2016年6月20日号

エグゼクティブサマリー

2016年5月23日、経済協力開発機構の理事会(OECD理事会)は2015年10月に公表された税源浸食と利益移転(BEPS)の行動8-10及び13のレポートに定めたガイダンスを、OECD移転価格ガイドライン(OECD移転価格ガイドライン)(移転価格推奨事項)に取り入れる勧告を採択する正式な手続きを取りました。

さらに、OECD理事会は、「移転価格に係る税源浸食と利益移転のための措置の推奨事項」(BEPS推奨事項)を採択しました。これはOECD加盟国及び非加盟国の両方が行動8-10及び13のレポートに定めたガイダンスに従うことを推奨するものです。

詳細

2015年10月5日、OECDは行動8-10の最終レポート(移転価格の結果と価値創造の整合性)及び行動13の最終レポート(移転価格文書化及び国別報告書)を公表しました。これらはOECD移転価格ガイドラインの合意された改訂という形を取りました。

OECD移転価格ガイドラインの2010年版は、OECDが公表した最新版となります。行動8-10の最終レポートはこのガイドラインを改訂し、全9章のうち6つの章に変更が生じます。

新しいガイダンスは独立企業原則の適用(OECD移転価格ガイドライン第1章のセクションDの改訂)、ロケーションセービング、従業員集団、及び多国籍企業のグループの相乗効果を含む移転価格における比較可能性の要素(第1章の追加事項)、コモディティ取引の移転価格(第2章の追加事項)、並びに低付加価値グループ内役務提供(第7章の改訂)に取り入れられています。さらに、無形資産に関する第6章、及び費用分担契約に関する第8章の新しい章も取り入れられています。

行動13の最終レポートは文書化に関するOECD移転価格ガイドラインの新しい第5章を導入しています。

合意された改訂はOECD/G20BEPSプロジェクトに参加しているすべての国のコンセンサスを示しています。参加国は、OECD加盟国、アルゼンチン、ブラジル、中国、コロンビア、インド、インドネシア、ラトビア、ロシア、サウジアラビア及び南アフリカを含みます。

OECD理事会の移転価格勧告はBEPS行動8-10及び13の最終レポートを正式に採択し、OECD移転価格ガイドラインに改訂事項を取り入れました。

OECDは、事業再編に係る移転価格の側面に関する第9章を含め、OECD移転価格ガイドラインの他の章の整合性を取る改訂が正式に終了したら、OECD移転価格ガイドラインの改訂版を公表する予定です。これらの改訂は各章間の整合性を図るためのもので、内容に関する修正ではなく編集的なものになると思われます。

おわりに

OECD/G20BEPSプロジェクトに参加している国々は、既にBEPS行動8-10及び13の最終レポートに合意していますが、OECD理事会の移転価格に関する推奨は2016年5月23日付で正式にOECD移転価格ガイドラインの改訂を採択しています。前述したように、これらの変更はOECD加盟国及び非加盟国の両方に影響を与えます。

OECD移転価格ガイドラインを国内の税制に取り入れるかどうか、取り入れるとしたらどのように取り入れるかについては国によってアプローチが異なるでしょう。例えば、国内の規則に承認されたOECD移転価格ガイドラインを明文化して参照する国もあるでしょう。

他の国では明確な参照を控えるかもしれません。加えて、新しいOECD移転価格ガイドラインを国内法に取り入れるためには何らかの行政又は他の措置が必要な国もあるかもしれません。OECD移転価格ガイドラインの改定は既存の移転価格原則を単に明確化したもので、実務においては、遡及的効果があり得るとする国もあるかもしれません。

多国籍企業(MNE)は事業を行う各国でこの規則改正の意味を理解し、分析する必要があります。例えば、MNEは世界中の事業、並びに現在の移転価格ポリシー及びアプローチについてOECD移転価格ガイドラインの改定事項をレビューすることが必要です。OECD加盟国及び非加盟国の税務当局は、国外関連者取引に対して、改訂の概念を適用してますます監視を強化すると思われます。

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