
平成29年度税制改正大綱
Japan tax alert 2016年12月9日号
平成28年12月8日に、平成29年度与党税制改正大綱が公表されました。以下、大綱で明らかにされた主要な改正・見直し項目の概要を説明します。なお、今後の国会における法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意下さい。
法人課税
1) 研究開発税制の見直し
試験研究費の増額が大きいほど減税額も増える制度に見直されます(総額型)。大法人は増減割合に応じて、試験研究費の6%から14%が税額控除額となります(上限14%は2年間の時限措置、現行は8%から10%)。中小法人の場合は、2年間の時限措置で試験研究費の12%から17%が税額控除額となります(現行は12%)。また、税制の対象に、「第4次産業革命型」のサービス開発の費用が追加されます。
2) 役員給与の見直し
経営陣に中長期のインセンティブを付与することができるように、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とする見直しが行われます。
3) 組織再編税制の見直し
特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする税制が整備されます。また、株式交換・連結納税における資産の時価評価制度の見直しが行われます。他にも、多くの項目で見直しがなされます。
4) 法人税申告期限の見直し
一定の要件のもと、4カ月を越えない範囲内において、確定申告書の提出期限の延長が認められることになります。
5) 租税特別措置における中小法人(資本金1億円以下)向け優遇措置の不適用
法人税関係の各租税特別措置(研究開発税制、所得拡大促進税制、軽減税率等)における中小法人向け優遇措置について、平均所得金額(前3事業年度の平均)が年15億円を超える事業年度において適用が停止されます。この改正は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
6)その他
中小・中堅企業向けに、設備投資を促進する各種関連税制が創設・拡充されます。また、中小企業に向けた所得拡大促進税制による支援も強化されます。
国際課税
外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の抜本的な見直しが行われます。
1) 合算対象とされる外国法人の判定方法等
- いわゆる「トリガー税率(低税率判定基準)」が廃止されます。
- 外国関係会社を判定する際の持分割合の計算方法が見直されます。
- 資本関係はないものの実質的に支配している会社も対象となります。
2) 会社単位の合算課税制度
- 従前の「適用除外基準」について見直しを行った上で、制度の発動基準(経済活動基準)に改め、経済活動基準(事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準)のうちのいずれかを満たさない外国関係会社について、会社単位の合算課税の対象とします。
- 航空機リースを主たる事業とする外国関係会社は、一定の要件を満たすものについて、事業基準を満たすものとされます。
- 製造業を主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国において製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与していると認められているものについては、所在地国基準を満たすものとされます。
- 適用対象金額から除外される受取配当に係る保有割合要件(25%以上)について、主たる事業が原油、石油ガス、可燃性天然ガス又は石炭(化石燃料)を採取する事業である外国法人で、我が国が締結した租税条約の相手国に化石燃料を採取する場所を有するものから受ける配当にあっては、10%以上とされます。
- 当該外国関係会社の租税負担割合が20%以上である場合は、会社単位の合算課税の適用が免除されます(適用免除基準)。
3) 受動的所得の部分合算制度
- 経済活動基準を全て満たす場合には、一定の受動的所得についてのみ合算課税の対象となります。
- 部分合算課税の対象となる主な所得は、以下のとおりです。
- 利子(預金利子、一定のグループファイナンスにかかる貸付金利子は除外)
- 配当(保有割合25%以上の株式等からの配当は除外)
- 有価証券の譲渡損益(保有割合25%以上等の要件を満たす法人の株式にかかる譲渡損益については除外)
- デリバティブ取引損益(ヘッジ目的で行われるもの等は除外)
- 外国為替損益(事業にかかる業務の通常の過程で生じるものは除外)
- 無形資産の使用料(自己開発した無形資産等一定のものに係る使用料は除外)
- 無形資産の譲渡損益(自己開発した無形資産等一定のものに係る譲渡損益は除外)
- 外国子会社に発生する根拠のない異常な利益(資産、減価償却費、人件費などの裏付けのない所得)
- 利子(預金利子、一定のグループファイナンスにかかる貸付金利子は除外)
- 当該外国関係会社の租税負担割合が20%以上である場合は、部分合算課税の適用が免除されます(適用免除基準)。
- 少額免除基準のうち、金額基準が2,000万円以下(現行:1,000万円以下)に引き上げられます。
4) 特定の外国関係会社に係る会社単位の合算課税制度
- 一定の要件に該当する「ペーパー・カンパニー」については会社単位の合算がなされます。
- 一定の要件に該当する「事実上のキャッシュ・ボックス」については会社単位の合算がなされます。
- ブラックリスト国(財務大臣が指定)所在の外国関係会社についても会社単位の合算がなされます。
- 上記の外国関係会社の租税負担割合が30%以上である場合は、会社単位の合算課税の適用が免除されます(適用免除基準)。
5) 適用時期
上記の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
個人所得課税・資産課税
1) 個人所得課税(配偶者控除)の見直し
2) 相続税の見直し
3) その他
納税環境整備・その他
1) 申告要件の見直し
2) 酒税の見直し
3) 車体課税
4) その他
※本アラートの全文は、下記PDFからご覧ください。
→ 平成29年度税制改正大綱の詳細ニュースレターへ(2016.12.20発行)