オーストラリア、迂回利益税及び罰則規定に関する法案を可決

オーストラリア、迂回利益税及び罰則規定に関する法案を可決

Japan tax alert 2017年4月14日号

エグゼクティブサマリー

2017年3月27日、オーストラリア議会は、大規模多国籍企業に影響を及ぼす迂回利益税(Diverted Profits Tax、以下「DPT」という)等の措置の導入に関する法案を可決しました。同法は、2017年2月に提出された法案と基本的には同じ内容となっています。同法案の概要については、EYグローバルアラート、「 Australia's Diverted Profits Tax Bill includes updated transfer pricing guidelines and increased penalties」をご覧ください。

同法案で提案された措置は、以下の3つです。

  • DPTの導入: オーストラリア税務当局(Australian Taxation Office、以下「ATO」という)は、2017年7月1日以降に開始する課税年度より、迂回利益に対し40%の課税を行えるようになります。同税制は、オーストラリア及び外資の主要グローバル企業(事業活動拠点がオーストラリア国内のみ又は複数国に分散しているかは問わず、全世界売上高が10億豪ドル以上のグループに属する企業)に対し適用されます
  • 改正OECD移転価格ガイドラインのオーストラリア税法への導入: 同税制は、移転価格の結果をグローバル・サプライチェーンにおける価値創造に合致させることを目的としており、2016年7月1日から遡及適用されます
  • 主要グローバル企業に対する罰則の強化: 税務書類の提出要件に違反した場合の罰金が2017年7月1日より引き上げられます。必要書類を提出しない場合は、10万5千豪ドル~52万5千豪ドルの罰金が課される可能性があります

本アラートでは、同法の成立を受けて、多国籍グローバル企業(及びオーストラリアの大手企業)が取るべき行動を解説します。

詳細
多国籍企業に対するDPTの適用及び移転価格税制改正

2017年7月1日以降に開始する課税年度より、主要グローバル企業に対しDPTが適用され、移転価格税制改正は遡及的に適用されます。

事業年度末が6月の多国籍企業、並びにグローバル企業グループのオーストラリア子会社と海外親会社は、DPTが適用され得る既存のもしくは提案中の取決めを特定するため、迅速に行動を起こす必要があります。こうしたプロジェクトは、国別報告書、移転価格及びその他のリスク・コンプライアンスの手続きにも関わってきます。同法の注釈では、以下の推定がなされています。

  • 1600のグループが影響を受ける可能性があるため、少なくとも同法を確認し、DPTの対象となる取決めがあるか判断する必要があります
  • そのうち130グループは、より重要な内部及び外部の資源を投入し、徹底的な確認を行う必要があります。バリューチェーンを再構築する必要がある場合もあります

DPTは、オーストラリアと海外関連会社間との間に取引及びバリューチェーンが存在する多国籍企業に関わってきます。海外関連会社がオーストラリアで適用される税率の80%(実効税率24%に相当)よりも低い税率の国で課税される場合がDPTの対象となります。影響を受ける企業は、グローバル・サプライチェーン及びバリューチェーンへの影響を検討し、リスクの特定及びATOからの問合せへの対応の準備を行う必要があります。

DPT及び移転価格税制改正の影響を評価するためには、以下を見直す必要があります。

  • グローバル・バリューチェーンを裏付ける証拠
  • 知的財産に関連する利益の帰属が改正後のOECD移転価格ガイドラインに合致しているか否か
  • ATOからDPTの対象になる可能性に関して問合せが来た場合の対応方法。例えば、関連するスキームの税務上のメリット及び主要目的の分析の文書化、並びに国外法人の経済的実体の文書化等
  • 事前確認合意の取得等のリスク低減戦略の検討(ATOは同アプローチをとる多国籍企業があることを想定)
  • 社内のコーポレート・ガバナンス・コミュニケーション及びリスク管理プロセス

多国籍企業は、こうした環境の変化に備える必要があります。

主要グローバル企業に対する罰則の強化

2017年7月1日より、改正罰則規定が適用されます。罰則強化の目的は、主要グローバル企業に対し、一般目的財務諸表や国別報告書の提出等の新たな要件の遵守を徹底することにあります。一方、ATOが認めた形式による提出がなされない場合は、その原因を問わず、改正罰則規定が適用されます。罰金の支払いに関して公正かつ妥当な判断が下されるか否かは、ATOの裁量に委ねられています。

罰則規定の改正を踏まえ、大企業は以下の税務に係るプロセスとシステムを見直す必要があります。

  • ATOへの文書提出(提出を怠った場合の罰金を回避するため)
  • 期限内の文書提出が不可能な場合の期限延長申請
  • ATOとの交渉管理(提出情報が不十分な場合の罰金を回避するため)

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