ベトナム、税制改正案を発表

ベトナム、税制改正案を発表

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EY 税理士法人

2017年9月21日

Japan tax alert 2017年9月21日号

エグゼクティブサマリー

2017年8月8日、ベトナム財務省は、法人所得税、個人所得税、付加価値税、特別消費税、天然資源税に関する現行の法律を改正し、補完する法案を発表しました。

 法案の主な目的は、次の通りです。

  1. 州の予算の調整 
  2. 国際慣行に合わせた税制の合理化 
  3. 不明確な税務上の問題を明確にし、ベトナムで事業を行う企業の税務コンプライアンス負担を軽減

この法案は、2017年9月に政府に提出され、国会により法制化された場合、2019年1月1日付けで施行される予定です。

詳細解説

法人所得税(CIT)

  • 非居住者によるベトナム企業の持分の譲渡は、現在の純利益に対する20%の課税に代わり、売却額に1%の法人税を課すことが提案されています。特に明記されていませんが、これは株式の間接的な譲渡にも適用されると考えられます。
  • 取引及び販売のみなし輸出入(on the spot import and export)は、現在の1%の法人税から0.5%の法人税に減少します。
  • 過少資本制度が導入され、製造業には5対1、銀行業は12対1、その他のすべての業種で4対1の負債比率が定められ、支払利子の損金算入額が制限されます。最低資本金要件が適用される業界は、過少資本法案の影響を受けません。
  • 税制優遇措置は、ハイテク産業、裾野産業、及び付加価値の高い製造業への事業や投資など、奨励された分野でのみ利用可能であるという目的に足並みを揃えることが提案されています。
  • 極小規模、小規模、及び中規模企業の法人税率は、以下のように改正することが提案されています。
    ・年間収益が30億ベトナムドン(13万米ドル)未満の極小規模企業向は15%
    ・社会保険制度に加入している従業員数が200人以下で、年間収益が30億~50億ベトナムドン(13万米ドル~220万米ドル)の中小企業の場合は17%

親会社が子会社の株式の25%以上を保有している親子会社ストラクチャーに対しては、これら2つの軽減税率の適用範囲を限定します。

付加価値税(VAT)

  • 付加価値税率は、2019年1月1日付で10%(標準税率)から12%、5%から6%に引き上げられるよう提案されています。
  • 現在5%の付加価値税率で課税されている商品やサービスのうち、特定のものには新しい12%の標準VAT税率が適用されます。
  • 法人税の計算上の損金算入と仕入VATの控除の両方の対象となる銀行の支払いの基準額は、50%減の1千万ベトナムドン(440米ドル)となります。
  • 6%の付加価値税率で商品とサービスを提供する企業は、12カ月間又は4四半期連続して仕入VATが控除してきれない場合、VATの還付を受けられるように提案されています。

特別消費税(SST)

  • ソフトドリンクは、2019年中に10%のSSTが課税される予定です。
  • たばこのSST税率は、2019年には70%から75%に引き上げられ、2020年からは最高で20本入りの箱には1,000ベトナムドン、はまき1本につき1500ベトナムドンが課税されます。
  • 9人乗り以下の国内生産車のSST計算用の課税標準は、国内で生産された部品の金額額を除いたメーカーの販売価格となります。

所得税(personal income tax)

  • 改正案では、一定の個人の給与所得について50%の減免を規定しています。これは、IT産業、農業及び農業生産物加工プロジェクト(ハイテクを活用したプロジェクト又は開発が優先・奨励されるハイテク製品の生産プロジェクトを含む)に従事するハイテク技術者と見なされる個人に適用されます。
  • 改正後の所得税の速算表は以下の通りです。
水準 課税所得/月 税率 (%)
1 10百万ベトナムドン未満 5
2 10百万ベトナムドン以上
30百万ベトナムドン未満
10
3 30百万ベトナムドン以上
50百万ベトナムドン未満
20
4 50百万ベトナムドン以上
80百万ベトナムドン未満
28
5 80百万ベトナムドン以上 35

 

  • 資本移転に伴う所得: 現在、所得税は、売却益に基づいて計算されますが、改正後は、居住者、非居住者とも売却額に対し1%の定率で計算を行います。
  • 賞金に対する課税: 現在は定率課税が行われていますが、改正後は累進税率が適用されます。詳細は以下の通りです。
水準 課税所得/月 税率 (%)
1 50億ベトナムドン未満 10
2 50億ベトナムドン以上
100億ベトナムドン未満
20
3 100億ベトナムドン以上 30

 

  • 従業員でない者に対する非定例的な支払いについては、現在は200万ベトナムドンを超える場合に課税されますが、改正後は、500万ベトナムドンを超える支払いに対し10%の税率で課税が行われます。
  • 所得税の確定申告: 財務省は政府に対し以下の2つの提案を行っています。
    ・オプション1: 年次確定申告を廃止し、個人が累進税率に従い月次で所得税を納付します。納税者は、年末に12カ月の平均所得を再計算し、正確な所得税納付額及び未払い税額又は還付税額を確定させます。ただし、納税申告書を税務当局に直接提出した個人の確定申告の要否については言及されていません。
    ・オプション2: 年次の確定申告を維持しますが、未払い税額又は還付税額が30万ベトナムドン未満の場合は、追加納税や税額還付は必要ありません。

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