TPP11協定大筋合意 米国を除いた11カ国での新協定に向け前進
Japan tax alert 2017年11月16日号
エグゼクティブサマリー
2017年11月9日に開催されたTPP(Trans-Pacific Partnership)閣僚会合を経て、TPP11協定の条文、凍結リスト等を含む合意パッケージについて大筋合意に至りました。トランプ米政権によるTPP離脱以降、日本政府は、TPPの合意内容を維持して、残りの11カ国で新協定(TPP11協定)を成立すべく取り組んでいましたが、新協定において実施を見送る「凍結項目」の調整が難航していました。
今後は、未だ合意に至っていない事項について協議を継続し、署名・批准に向けて進んでいくことになります。
PP11協定と凍結項目について
内閣官房によれば、TPP11協定の正式名称は「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)」とされ、米国を除く参加国で、全世界のGDPの12.9%、貿易額の14.9%ほどを占める協定になる見込みです。
米国離脱前のTPP協定(TPP12協定)では、関税の引下げに留まらず、非関税障壁の撤廃、投資・サービスの自由化、知的財産の保護など、多岐にわたる分野で貿易自由化・貿易促進措置が予定されていました。今回の大筋合意の結果、TPP11協定では20の項目について実施が凍結されることとなりました(次頁参照)。
また、国有企業の取扱いなど4項目については凍結対象とするか合意に至らず、継続協議となりました。
TPP11に係る物品貿易上の恩典と今後の企業の対応
これらの凍結対象項目や継続協議項目には、関税の引下げスケジュールなど物品貿易を直接の対象とする事項は含まれていません。物品貿易について、TPP12協定と同様の措置が維持されることを前提とすれば、日本にとって、カナダ・ニュージーランドとは初めての自由貿易協定締結となることは注目されます。また、優遇税率の適用に際しては、輸出加盟国での原産性が認められることが前提となりますが、TPP12では輸出国のみならず、他の加盟国産品も原産品としてカウントすることを可能とする「累積」のルールが規定されているため、すでに日本との間にFTAが存在していた加盟国との貿易においても、優遇税率適用の機会が広がる可能性があります。また、自社製品に適用される既存のFTAの優遇税率に比して、TPP11で適用される優遇税率がより有利なものかは確認すべきと考えられます。
米国が離脱したとはいえ、上述のようなTPP11の利点を考えれば、貿易取引を行う企業としては、新協定の成立に向けた動きに注視しつつ、TPP11を利用したより効率的なサプライチェーンの構築に向けて、早期に対策を始めることが望ましいと考えられます。
凍結となる項目(部分凍結含む)
(2017年11月11日付内閣官房TP等政府対策本部「TPP11協定の合意内容について」)
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